かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:チェンバロで聴く平均律クラヴィーア曲集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、チェンバロ演奏の「平均律」をご紹介していますが、今回はその第2回目です。

4集に分かれている第2集となりますが、第1巻の後半が収録されているという事になります。平均律クラヴィーア曲集を俯瞰するにはこの編集の方がいいとは思いますが、かといってグールドのピアノが悪いってわけではないんです。むしろ、近代的な美という意味では、グールドのほうが優れているとさせ思います。

とは言え、ではこのチェンバロ演奏はつまらないのかと言えばそうでなくて、遅めのテンポで荘重であるのに、何故か軽さ(軽快さ)も持っている演奏になっているのが素晴らしいのです。

それは、チェンバロという楽器の特性にあると言っていいでしょう。前回、同じ鍵盤楽器であるが、チェンバロは弦楽器であり、ピアノは打楽器であると形容したと思いますが、その差が表れている結果が、この「軽快さ」であると言っていいでしょう。

そもそも、チェンバロを選択するという歴史は、原点回帰の古楽演奏から始まりましたが、今ではそれがポピュラーになったことで、それぞれの素晴らしさを味わうという時代に入ったように思うのです。この演奏はまさしく、そのチェンバロだからこその素晴らしさを味わう演奏であると言えるでしょう。

グールドが果たした役割は、このチェンバロを「選択する」という歴史が始まったことで、従来のピアノ演奏のどこに問題があったのかを、私達に明らかにしたという点にあります。伝統からこう弾く・・・・・のではなく、その奏法には理由があって、だがそれは必ずしもピアノという楽器の特性を生かした演奏ではないということを明らかにしたという点にあるのです。

ヴァルハのこの演奏、じつは1960年なんです。グールドよりも古いんですね。この演奏がグールドにどんな衝撃を与えたのか・・・・・映画ではそれほど触れられていなかったと思いますが、バッハ・オーソリティの一人として位置付けることができるであろうグールドに、与えた影響は少なからぬ点があると思います。ヴァルハというか、当時勃興し始めた「古楽演奏」というものが、です。

当時当たり前であったピアノのテンポと大差ないこの演奏が、ピアノとは似ても似つかないものになっており、しかもオリジナリティがある・・・・・それにグールドが気づいたとすれば、グールドの落ち着いたなかにも快速さがある演奏は、納得できる点が多々あるのです。それはこういったチェンバロの演奏を聴きませんとたどり着けないように思います。

だからこそ、このヴァルハの演奏は意味があるのです。私はどちらも好きですし、どちらもいつまでもきいていないなあと思いますが、どちらかと言えばグールドかな、と思います。それは私が20世紀生まれであるせいですし、決して不思議なことではありません。その一方で、このヴァルハの演奏を切って捨てることもできません。それは私が、古楽演奏を聴き慣れてきている結果でもあります。

ヴァルハの落ち着いた演奏は、チェンバロだからこそ躍動感も感じられるものとなっています。そこがチェンバロの魅力だと思いますし、その魅力が出る楽器なのだということを、あらためて教えてくれるものでもあります。そして、わたしがバッハやモーツァルトの鍵盤作品を批評するときの、一つの指標となっている演奏でもあるのです。グールドと共に。




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
平均律クラヴィーア曲集第1巻
前奏曲とフーガ第13番嬰ヘ長調BWV858 前奏曲
前奏曲とフーガ第13番嬰ヘ長調BWV858 フーガ
前奏曲とフーガ第14番嬰ヘ短調BWV859 前奏曲
前奏曲とフーガ第14番嬰ヘ短調BWV859 フーガ
前奏曲とフーガ第15番ト長調BWV860 前奏曲
前奏曲とフーガ第15番ト長調BWV860 フーガ
前奏曲とフーガ第16番ト短調BWV861 前奏曲
前奏曲とフーガ第16番ト短調BWV861 フーガ
前奏曲とフーガ第17番変イ長調BWV862 前奏曲
前奏曲とフーガ第17番変イ長調BWV862 フーガ
前奏曲とフーガ第18番嬰ト短調BWV863 前奏曲
前奏曲とフーガ第18番嬰ト短調BWV863 フーガ
前奏曲とフーガ第19番イ長調BWV864 前奏曲
前奏曲とフーガ第19番イ長調BWV864 フーガ
前奏曲とフーガ第20番イ短調BWV865 前奏曲
前奏曲とフーガ第20番イ短調BWV865 フーガ
前奏曲とフーガ第21番変ロ長調BWV866 前奏曲
前奏曲とフーガ第21番変ロ長調BWV866 フーガ
前奏曲とフーガ第22番変ロ短調BWV867 前奏曲
前奏曲とフーガ第22番変ロ短調BWV867 フーガ
前奏曲とフーガ第23番ロ長調BWV868 前奏曲
前奏曲とフーガ第23番ロ長調BWV868 フーガ
前奏曲とフーガ第24番ロ短調BWV869 前奏曲
前奏曲とフーガ第24番ロ短調BWV869 フーガ
ヘルムート・ヴァルハ(チェンバロ

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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