かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:2014年第九コンサートを聴いて

コンサート雑感、今回は4月20日に、すみだトリフォニーホールで行われた、2014年第九コンサートを取り上げます。砂川稔指揮、サノン・フィルハーモニー管弦楽団、2014春特別合唱団他の演奏です。

実はこの合唱団の主体は、コア・アプラウスなのです。ですから、まあ、合唱が悪かろうはずはないんです。

本来、私はこの演奏会に参加の方向で考えていました。しかしながら、職場の異動が絡んでいたこともあり、それはあきらめざるを得ませんでした。そこで、聴衆としてホールへ行くことを選択しました。

そもそも、指揮する砂川先生は、コア・アプラウスでもそうですが、まず第九を取り上げることはありません。宗教音楽以外の合唱曲(あるいは、合唱付きの作品)を取り上げることをしてこなかったという経緯があります。

コア・アプラウスは、宗教曲を歌うというコンセプトがあるので、取り上げないのは当然と言えますが、コア・アプラウスが中心となって、他の団体の参加を仰ぎつつというものの、してこなかったわけなので、今回の演奏会はいわばコア。アプラウスとしてはエポックメイキングな、歴史的な「事件」でもあったわけなのです。

さて、曲目は以下の通りです。

�@モーツァルト ジングシュピール魔笛」序曲
�Aニコライ 歌劇「ウィンザー城の陽気な女房たち」より、「月の出の合唱」
�Bワーグナー 楽劇「ローエングリン」より、「婚礼の合唱」
�Cワーグナー 歌劇「タンホイザー」より、ヴァルトブルクの歌合戦大行進曲「歌の殿堂を称えよう」
�Dベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」より、第3楽章、第4楽章

※「タンホイザー」は、プログラムでは「大行進曲」とだけの記載ですが、詳細を示したほうが分かりやすいため、私のほうでこのブログでは書き加えています。さらに、�@〜�Cまでは「オペラ」という記載になっていましたが、私の方でこれも替えています。

前半はオペラ(あるいはその歴史に沿うもの)の合唱作品であり、後半が第九というプログラムになっていました。

まず、突っ込むとすれば、第九が第3楽章からって点でしょうかね・・・・・

これは、後で団員から事情を聞いてはいますが、盛りだくさん過ぎでしょ!ってところですねえ。私なら、前半は「歌の殿堂を称えよう」だけにして、後半は第九全曲にするなあと思いました。

といいつつ、これはこれで素晴らしいプログラムであったことも確かです。�A〜�Cまでの各曲は、合唱団の実力が如実に表れている、素晴らしい演奏だったからです。

勿論、合唱団に「トラ」(つまり、エキストラのこと)が入っていたことも確かなのですが、トラとのバランスが秀逸なのはいつもの通りで、特に美しかったのがpやppの部分。やわらかく繊細で、かつ発声は軽く、それは力強い部分であっても変わらなかったのが素晴らしかったなあと思います。

今回の演奏会は、いままでコア・アプラウスで必ずしも歌っていない団体の団員も含まれていたのですが、それが全くアンサンブルを壊しておらず、むしろ溶け込んでいたのも素晴らしい点です。全体が一つとしてまとまっていて、表現力も豊かで、特にタンホイザーでは、私は被災地活動が思い出されて、ついもらい泣きをしてしまいました。

タンホイザーの「ヴァルトブルクの歌合戦」は、民衆が自主的に参加するという側面を持っています。それが、私の被災地活動の主眼だった「被災者の自立を促す」というものによってもたらされた、被災者が自らの心の傷をいやして立ち上がっていく姿を思い出して、涙をこらえることができなかったのです。

タンホイザー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%BC

もちろん、それだけではないんですが、それについては機会があれば、別途エントリを立てたいと思います、とてつもなくながーいものになりそうなので・・・・・

むしろ、恐らく読者の皆さんには、「ウィンザーの陽気な女房たち」って?というほうがあるかと思います。実はこの作品、このブログでは一度序曲を取り上げているんです。

マイ・コレクション:剣の舞 管弦楽名曲集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/395

この作品、団員からCDがないと相談されて、私のそのエントリを紹介したことがありましたが、本当にないんです、CD。もしかするとあるかもしれませんが、私は店頭で見かけた記憶がありません。DVDではなおさらです。もしかすると、今はつぶれてしまった、関内の輸入CD店で見かけたかもしれませんが・・・・・

ウィンザーの陽気な女房たち (オペラ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%99%BD%E6%B0%97%E3%81%AA%E5%A5%B3%E6%88%BF%E3%81%9F%E3%81%A1_(%E3%82%AA%E3%83%9A%E3%83%A9)

内容としては、同じウィキでも、原作のほうを呈示したほうがいいでしょう。

ウィンザーの陽気な女房たち
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%99%BD%E6%B0%97%E3%81%AA%E5%A5%B3%E6%88%BF%E3%81%9F%E3%81%A1

今回のプログラムで使われている部分の音楽は、とても美しい旋律ですが、高音域のppで始まるので、美しく分かりやすい旋律の割にはとても難しい作品です。それを、いとも簡単に演奏してしまうんですね、これが。

第九のソリストでもある、稲見先生が指導されている合唱団が一同に会しているという側面が、それを可能にしているのだろうなあと思います。いわば、栗友会のようなものです。「先生なら、ここはこう指導するだろうな」という、暗黙知というか、そういう点が十二分に発揮された部分だと思います。

さて、第九なのですが、第1楽章と第2楽章がないので、あの部分をズバリ言ってしまいましょう!そう、いつも私が取り上げる、vor Gott!の部分です。さて、砂川先生は何拍で振っていらっしゃるのだろうか?と数えていたら・・・・・

1、2、3、4・・・・・・えー!

・・・・・変態演奏と断定させていただきます。

しかし、アタッカでアラ・マルシアへ入っていくわけではなく、残響を2拍分使っているんですね。さすが、宗教曲を取り上げたがる砂川先生だなあと思いました。

ただ、第九ではいろいろ不具合が散見されまして、まず第3楽章では、途中でオケが出れないという事態が発生。これは砂川先生の指揮のせいかと思われます。まあ、オケが分かっていれば済む話ではあるんですが・・・・・

今回は、オケの団員に若い人が多かったせいなのか、おそらく砂川先生の指揮に慣れていない人が多かったのだろうと想像します。団員からはソリストばかりのでという説明を受けましたが、となれば、おそらくオーケストラでの演奏経験が不足しているということなのだろうなあと思いました。

いや、砂川先生の指揮も問題にすべきではあるんですが、残念なことに、たいてい指揮者が変ってくれることはまずないんで(T0T)演奏する側が、「この人はこういう指揮をするんだな」と即座に判断し、それを水平展開していく必要があるわけなんですが、そこに問題が発生していたと想像できます。

コンミスはきちんとコントロールしていたそうなので、今後に期待です。

それ以外は、オケは本当によく演奏していたと思います。第九という作品は、とてもエネルギーがあるので、引っ張られることがあります。それはわたしも合唱団員として何度も経験した出来事でした。例えば、練習番号Mのユニゾンの部分とか。

オケが何度も先走ったり、そうなりそうになったりをくり返しながらも、何とか建て直していくのは久しぶりに聴いたような気がします。プロでも、こういうことがあるんだなあ、と。でも、全体的には全く問題ないレヴェルでした。まあ、唯一がその第3楽章だったといえるでしょう。

第4楽章では、冒頭のティンパニ連打が弱いかな、とも思ったのですが、存在感はしっかりとあるんですね。固めのばちを使っているのか、音はとても硬いもので、オケの中に埋没するのではなく存在感がしっかりとありました。オケの団員が少なめだったので、バランスは欠いていないので、十分だったといえるでしょう。

バランスを欠いたといえば、残念ながらソリストなんですねえ。あのう、もしお読みになっていらっしゃるのであれば、お分かりだとは思うのですが、稲見先生・・・・・・頑張りすぎです。アルトが聞き取れません(T0T)

もう少し、肩の力を抜いてもよかったかなあと思います。勿論、第九のソプラノは特に存在感があるので、プレッシャーはかかるかと思うんですが、大丈夫です、稲見先生であれば十分歌える曲なので、心配はいりません。それはブラームスの「ドイツ・レクイエム」ですでに証明済みです。

他のソリストは、特にテノールは太い声で素晴らしかったです。

合唱団は言うに及ばずです。特に、男声合唱が素晴らしく、「抱きあえ、幾百万の人々よ!この口付を全世界へ!」の部分は感動しました。その直前のユニゾンも、力強くしなやかで、美しく、女声と男声のバランスが本当にいいなあと思いました。

また、最後の合唱も、決して力任せではなく、しかし聴いている方はとても力強いと感じる、最終部分にふさわしい演奏で、当然ですが「ブラヴィ―!」をかけました。

これでオケも万全なら、やはり全楽章を聴いてみたいというが人情なんですがねえ。

次は、コア・アプラウス単体で12月にシューベルトのミサ曲第5番ということで、楽しみです。また、第九もモツレクカップリング(というか、メインはどう考えてもモツレクなんですが)で来年の9月に演奏するというので、私は是非ともそちらに参加できればと思っています。

たまには、コンサート評を書くほうではなく、書かれる方に回ってみたいものです。この合唱団なら、その「仲間」でいられるように思います。




聴きに行ったコンサート
2014年春第九コンサート
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
歌劇「魔笛」序曲
オットー・ニコライ作曲
歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」より、月の出の合唱
リヒャルト・ワーグナー作曲
楽劇「ローエングリン」より、婚礼の合唱
歌劇「タンホイザー」より、ヴァルトブルクの歌合戦大行進曲「歌の殿堂を称えよう」
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」より、第3楽章、第4楽章
稲見理恵(ソプラノ、第九)
牧野真由美(アルト、第九)
征木和敬(テノール
斉木健詞(バス)
2014年春特別合唱団
砂川稔指揮
サノン・フィルハーモニック管弦楽団
平成26(2014)年4月20日、東京墨田区錦糸町すみだトリフォニーホール大ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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