かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:MAXフィルハーモニー管弦楽団第6回第九演奏会を聴いて

今年最後のエントリは、コンサート雑感をお届けします。12月29日に聴きに行ってきました、MAXフィルハーモニー管弦楽団の演奏会です。

このオーケストラ、プロアマ混成の団体ということと、毎年殆ど第九しか演奏しないという点でユニークだと思います。

私がこのオケを知ったのは、じつはチケットぴあのメールだったんです。ふと開いて見ると、第九の特集をしていたんですね。そこで知りました。

今年はアマービレで検索しても殆ど第九がヒットせず、ヒットしたとしても予定が被っていたり、仕事だったりして、半ば今年の年末もあきらめていたところだったんです。そしたら、プロアマ混成のオケが、ちょうど休みの日にコンサートを行うって言うじゃありませんか!

すぐチケットを買ったのは言うまでもありません、ただ、友人知人を誘うにしては、29日という日程は余りにも年の瀬すぎて、帰省する人もいることから、私一人でと決めて行きました。

仕事は軌道に乗ってきましたが、まだまだ様々あるので、コンサートは基本アマチュアに決めてます。プロはソロもしくはデュエットなどしか行きません。ですから、アマービレを見ていたのですが、待てど暮らせど第九はあまり上がってこない。ぴあでも、殆どプロですから、チケット代はかさみます。そんな中の救世主のような存在が、MAXフィルでした。何と、全席自由で2000円・・・・・

第九で、プロも参加していて、此の値段は破格です。

さて、MAXフィルの説明は大体終わったと思いますが、もう一つの特徴として、毎年ホールが芝公園のメルパルクだと言う事なのです。このホール、まだ所謂「響きのいいホール」ができる前、つまりサントリーホールができる前までは、けっこうクラシックのコンサートをやるホールだったのですが、サントリーホールができてからは、すっかりクラシックのコンサートでは使われなくなりました。そんな中で、メルパルクホールでやるというのも、珍しいなあと思います。

当日のプログラムは、以下の2曲でした。

�@ニコライ 歌劇「ウィンザーの陽気女房たち」序曲
�Aベートーヴェン 交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」

この組み合わせも、珍しいと思いますし、なにより、第九という作品のとらえ方がユニークというか、正統派だなあと思いました。「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲は以前このブログでもご紹介したことがあります。

マイ・コレクション:剣の舞 管弦楽名曲集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/395

ウィンザーの陽気な女房たち (オペラ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%99%BD%E6%B0%97%E3%81%AA%E5%A5%B3%E6%88%BF%E3%81%9F%E3%81%A1_(%E3%82%AA%E3%83%9A%E3%83%A9)

ウィンザーの陽気な女房たち
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%99%BD%E6%B0%97%E3%81%AA%E5%A5%B3%E6%88%BF%E3%81%9F%E3%81%A1

シェイクスピアの原作らしく、オペラは人間関係の面白さに焦点が当たっており、恐らく当時の社会を笑い飛ばそうという意図をもって執筆されたものでしょう。第九も実は人間関係が成立のもととなっている作品です。

第九はよく、精神性だとか、自由と民主主義というテクストでとらえられがちです。それは間違っていませんし、私もそう思いますが、一面を見ているにすぎないんです。第九という作品は人間の魂が震えた答礼として、シラーが作詞した「歓喜に寄す」が元になっており、その魂の部分に共感したベートーヴェンによって交響曲にされたものだからです。

第九作曲時のベートーヴェンは、甥カールとの関係において、かつて幼少期に父親から受けた指導のトラウマのため、きつく当たってしまいます。挙句の果てには、カールは自殺未遂までしてしまいます。そういった人生においての辛さを経験した結果、自分が青年時代に感動したシラーの詩を、遂に完成させようと決心して作られたのが、第九です。二つの交響曲をつなげてでも、自分の魂を表現することに執念を燃やしたのでした。その結果なのです。

そういった背景を知っていますと、実にこのカップリングは興味深いものなのです。一見するとなんでと思われるかもしれませんが、私はかなり深い意味を感じました。

それは演奏にもよく表れています。そもそも、年1度しか演奏会を開かないと言うことは、MAXフィルとして自分達がパフォーマンスすることを聴いてほしいということが極限に達していることを意味します。「ウィンザー」では、途中からテンポアップしてアインザッツも強くなっていったことから、団員たちが演奏する喜びに包まれていることが手に取るようにわかって、感動しました。編成的には、19世紀の対抗配置。ということは、団員間の意思疎通がしっかりとできていると言うことを示すのですが、それが「音楽を表現する喜び」で統一されているのが本当に素晴らしいと思います。

ウィンザーという作品は喜劇なので、楽しかった!という経験はすれども、感動した!ということはあまりない作品なのですが、演奏次第では感動する作品なんだなと実感しました。オペラが是非聴きたくなります。

そもそも、MAXフィルとは、指揮者でマレーシア・フィルのコントラバス奏者でレジデンス・コンダクターの古澤直久氏を中心に結集した団体で、その団員の仲間意識が強いのだなと感じました。その点も興味を持った点でしたが、ウィンザーでこれは期待が持てるかもと感じました。

その期待を見事に裏切らない、素晴らしい演奏が休憩後の第九でした。第1楽章の緊張感と、ティンパニ連打!怒涛の音圧が、客席にも伝わってきます。かつて平塚第九で松岡先生がおっしゃったように、正に戦う第1楽章という視点で演奏されており、熱いものがこみ上げてきました。

兎に角、音は多生痩せている部分があるのですが、アンサンブルが殆ど崩れないんですよね。音がたまーに外れるくらいで、アマチュアが入っているなんて信じられないような素晴らしい演奏!第2楽章もいいリズムで、スケルツォらしい緊張感がみなぎります。第3楽章は金管楽器が聴かせどころ満載ですが、ホルンは見事にひっくり返らず、その後のファンファーレも見事!完璧な第3楽章と言っていいでしょう。

そして、第4楽章。合唱団員とソリストはここで入ってきました。第3楽章からでもいいなと思いましたが、もしかすると第3楽章からでは気合いが入りすぎた可能性も・・・・・それだけ、第3楽章はとても緊張感のある高いレヴェルの演奏だったのです。

第4楽章はティンパニが幾分弱め。しかし、歓喜の調べのあたりからはヒートアップ!合唱が入るとオケと合唱団の音圧がすごい!私はホールの2階真ん中に座っていましたが、コア・アプラウスをはるかに上回る音圧が飛んできたのです!これぞコンサートの醍醐味ですが、男声が女声よりも若干少ないにも関わらず、良く声が飛んでいるのも素晴らしかったです。

何時も問題にするvor Gott!の部分は、vor1拍に対して、Gott!が5拍と、変態演奏!でもそこに、指揮者とオケ、そして合唱団が表現したい「大切なkもの」が見え隠れしているように思えました。

アラ・マルシア男声合唱も完璧!それを受けてのオケのなんと熱いこと!にも拘わらず冷静さも失われておらず、ゆえに演奏にどんどん引き込まれていきます。練習番号Mの部分も力強く、美しい!生命力あふれ、喜びに満ちています。思わずここでは泣いてしまいました・・・・・

続く合唱も、男声が女声に負けておらずよく届きます。それだけでも、本当に泣けてきます。どれだけ合唱団は練習したのだろうか、と・・・・・難しんですよ、練習番号Mも含め、女声に人数が劣るケースで男声が美しく、かつ力強く、生命力あふれて歌うのは。恐らくほとんどがアマチュアだと思いますが、本当に素晴らしい!オケもそうですが、特に合唱団はほめるべきだと思います。二重フーガ、その後の「予定調和」、そして最後の部分。特に最後の部分はきちんとしゃべっていて、これも感動です!

しかも、最後は思いっきりテンポアップしてヒートアップ!聴衆を感動の渦に巻き込んでいきました。もう、ブラヴォウとかどうでもいいです。割れんばかりの拍手!響かないメルパルクで、まるで残響を惜しむように、フライングもなく拍手が起こったのは感動的でした。毎年来ているファンが居ると見ました・・・・・まるで、ダズビみたいです。いや、演奏を聴いていて、まるでダズビだと本当に思っていました。違うのは、ベートーヴェン「第九」しかやらないって言う点です。日本のオーケストラは明らかに異なるフェーズに入ったと思います。

プロオケではまだあまり目立った動きはないですが、アマチュアに眼を転じてみると、新しい動きは確かに始まっています。MAXフィルのような形態は、今後増えるのではないかと思っています。室内オケが力をつけ、大規模作品も室内オケの編成で演奏する時代が始まっています。このような寄せ集めでも、その実力を持ち寄れば素晴らしい演奏が大規模であっても可能であろうと言うことを、この演奏は如実に証明してみせたのです。

まさしく、第九の精神を体現する演奏を聴かせてもらった気がします。関係各位に感謝します!できれば、私も来年も聴きに行きます!

・・・・・いや、合唱団で歌ってしまおうかな。




さて、今年最後のエントリとなりました。今年も最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

来年が皆様にとって良い年になりますよう!今年最後のエントリで、素晴らしい演奏を御紹介することができて、誠に光栄です。

来年もこのブログを、よろしくお願いいたします!




聴いてきたコンサート
MAXフィルハーモニー管弦楽団 第6回第九演奏会
オットー・ニコライ作曲
歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125
林田さつき(ソプラノ)
長澤美希(アルト)
澤崎一了(テノール
照屋博史(バス)
MAX第九を歌う会
古澤直久指揮
MAXフィルハーモニー管弦楽団

平成28年12月29日、東京、港、メルパルクホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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