かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:小川典子のドビュッシー3

新年、あけまして、おめでとうございます。

今年もこのブログを、よろしくお願いします。

と言い続けて、早8年が過ぎまして、9年目に突入しました。途中中断もあったものの、なんとか9年目まで続けて来れました。これはひとえに、読者の方の応援が有ったればこそだと思っています。

なかなか、各年の年頭で宣言したことが100%できておらず、無精者の点もありますが、プロの方も読んでくださっているこのブログを、絶やすことだけはしまいという一念で続けてきました。

今年も、かつてアマチュア合唱団員として舞台に立った経験から、様々な作品を聴き、その結果をこのブログにエントリとして反映させていきたいと思います。

さて、昨年から続いている、神奈川県立図書館所蔵CDのドビュッシー作品特集ですが、今回が最終回となります。小川典子のアルバムです。彼女は全集を出しており、本来はその第4集になるものです。私が3つしか借りてこなかったので、3と銘打ったまでです。

殆どがすでに借りて聴いている作品なので、これも聴き比べの側面が強いのですが、一方で初録音などもあり、興味深いことを私たちに教えてくれます。

初出は2曲だけで、新発見の練習曲(「アルペジオのために」の初稿)(1915)と間奏曲(「ピアノ三重奏曲」からの編曲)(1880/1882)です。そして興味深いことを教えてくれているのは、その新発見の練習曲、なのです。

アルペジオのためにはドビュッシーらしい象徴主義的作品ですが、この初稿となる作品を聴きますと、ところどころリスト?と思うような旋律や和声が出てきます。それはドビュッシーがリストの影響も受けている証拠であると考えていいでしょう。

リストは晩年の作品は旋律がしっかりしているうえで、非現実を表現することを指向した人でした。ピアノ曲「伝説」はまさにそうですし、また管弦楽作品では交響詩を確立するなど、新しい時代を作って行った人でした。ドビュッシーが影響を受けていたとしても不思議はないんですが、ただこの練習曲の作曲は1915年です。晩年になっても、ドビュッシーの作品には様々な先達たちの芸術が影響を与えていることが分かります。

その上で、ドビュッシーはさらに自分らしい作品に仕上げたのが、完成形である「アルペジオのために」だと言えるでしょう。こういった点を見事に淡々と表現するのもすばらしく、全集を聴く魅力です。

一方で、私は全集を借りたわけではないですから、他の作品、12の練習曲と6つの古代碑銘は、他のピアニストと比較できると言うことになります。12の練習曲はまず、子供がまるで練習しているように始まりますが、すぐアップテンポとなり、大人が弾いている様子に変るのがとても印象的です。ドビュッシーがこの作品に込めた、新しい時代の音楽とはいかなるものか?という問いを前面に押し出す演奏だと言えるでしょう。

6つの古代碑銘は、他者の編曲が有名なんですが、このアルバムで作曲者の編曲で演奏されています。というのは、本来この作品はピアノ連弾のための作品ですが、ピアニストが全集に入れる場合、独奏曲に編曲されたものを使う必要があるからです。作曲時期からして、ドビュッシーの作品に様々な影が落ちる時期ですが、寂しさや静けさが支配しているにもかかわらず、気品を失わない作品たちです。小川女史はテンポをゆっくりと弾くことで、作品が持つエネルギーとしての静けさが表現されているのが味わい深い点です。このあたりは小川女史も印象派というくくりだけではなく、象徴主義という側面も判ったうえで、あえて印象派的に弾いているということが分かります。

そのおかげで、ドビュッシーという作曲家には様々な色や顔があり、豊かであることが分かったのは本当にいいことでした。きっかけは瀬川玄氏ですが、今回ご紹介してきたピアニストたちによって、ドビュッシーの作品と芸術性について、理解が深まったのは嬉しい事でした。日本人ピアニストも表現力豊かですが、まだまだその能力が発揮されていないのではないかという印象も受けました。やはりフランスのピアニストが弾きますと、色彩感があるんですよね〜。しかもくっきりと。象徴主義的かつ印象派みたいな感じの演奏となり、受け手の私たちもたくさんの想像をしたり、考えたりすることで、イメージが豊かになっていくのが嬉しかったです。

ドビュッシーという作曲家については、またこの後管弦楽作品も借りてきており、今度はパートが多いということがドビュッシーの作品の中でいかなる意味を持つのかを知ることになりますが、それはまた別の機会に触れることといたしましょう。

あえて全集を置かない神奈川県立図書館。ドビュッシーの作品に興味があるのであれば、県民であれば、一度足を運ぶ価値は十分にあると思います。行かずに閉館にするのは、もったいないと言えるかと思います。




聴いている音源
クロード・ドビュッシー作曲
12の練習曲(1915)
新発見の練習曲(「アルペジオのために」の初稿)(1915)
間奏曲(「ピアノ三重奏曲」からの編曲)(1880/1882)
6つの古代碑銘(1914/15)【作曲者編曲によるピアノ独奏版】
燃える炭火に照らされた夕べ(1917)
小川典子(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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