かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集15

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、元音源ナクソスの、リストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回は第15集を取り上げます。

この第15集から第21集までは、実はまた一つの全集となっているようなものになっています。何故なら、この第15集からは、ベートーヴェンの9つの交響曲が取り上げられるからです。

ベートーヴェンの9つの交響曲が、リストによって編曲されているということはよく知られていることだと思いますが、実際に全てを聴く機会というのはまずないと思います。こうやって9つすべてが網羅されているのは、私のような合唱出身者にとっては素晴らしいことなのです。

何故なら、第九のヴォーカルスコアが成立するためには、リストの編曲がなかったらありえないからです。私たち合唱団が第九を練習するときは常にピアノ伴奏であり、オケは一番最後です。そのピアノ伴奏はなるべくオケの演奏に近いものになっていなければ、実際にオケ合わせをする時に歌えなくなってしまいます。

ですから、第九が広まる一つの功績は、間違いなくリストの編曲にある訳ですが、リストは同じく編曲をし、このブログでも取り上げたことのあるワーグナーと異なり、9つすべてをピアノ作品として編曲したのです。

それはピアノという楽器の発達も背景にあります。そういった様々な材料が、この作品たちには詰まっています。

まず第15集では、第2番と第5番が収録されています。で、よーく聴いてみますと、原曲とは異なったサウンドになっていることに気が付きます。あれ、オケならこの音が入っているはずなんだけど、聴こえないなあ・・・・・・

それは当然です。今までも、リストの「トランスクリプション」作品でさんざん言及していますが、ピアノ独奏であれば、パートは2つしか設定できないんです。そこが、ピアノへ編曲するときの限界なのです。その限界を設定したうえでオケのようにするのですから、どのように音を再構築してピアノ作品とするかが重要になるわけです。

ですから、当然ですが、ベートーヴェンの9つの交響曲は、サール番号464で統一されており、それはカテゴライズではトランスクリプションであり、純然たる編曲にはなりません。編曲・再構築というのが正しいでしょう。二つとも、リストがいかにピアノ作品としてどのように再構築しているかを聴くのが、愉しみの一つになります。

勿論、この第15集では第5番、つまり「運命」が収録されているわけですから、第3楽章から第4楽章にかけての、いわゆる「勝利の音楽」がどのようにピアノ作品として劇的な効果を上げるようになっているかも注目点です。それはまさに超絶技巧奏者としてのリストの面目躍如となっています。特にこの第5番は、初稿が1837年と、まだまだリストが演奏者として絶頂期にある時期です。

3. ヴィルトゥオーソ・ピアニスト時代(1839-47年)
http://www.piano.or.jp/enc/composers/83

それを練り直し、今の形にしたのが1864年頃。リストが作曲家として活躍し始める時期です。その時期は所謂「交響詩」が成立する時期にも相当しています。そんな時期にリストは、こういったベートーヴェン交響曲をピアノ作品として移し替えていた、というわけです。

特にこの第5番を聴きますと、リストの劇的な交響詩の世界すら影としているような感覚もあります。

演奏はコンスタンティン・シチェルバコフ。以前も登場したピアニストですが、実はこのナクソスの全集では主にこのベートーヴェン交響曲を担当しています。特に第5番では、フェルマータは6拍を意識したうえで存分に伸ばしており、テンポにも気を使っているのが素晴らしい!その上で、リストがピアノ作品として仕上げたところも丁寧に演奏しており、全体像がくっきり浮かび上がってくるのが聴いていて心地よいです。

第2番ではかなり冷静な演奏が、第5番は一転、知的である上でかなり情熱的です。情熱と冷静の間が抜群で、思わず感情移入してしまいそうです。

ベートーヴェンの讃美者であるリストの気持ちが、まるで乗り移ったかのような演奏。一度、聴いてみる価値はアリ!です。




聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
フランツ・リスト編曲
交響曲第2番ニ長調作品36(S464/R128)
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」(S464/R128)
コンスタンティン・シチェルバコフ(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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