今月のお買いもの、平成29年1月に購入したものを御紹介しています。シリーズでご紹介している飯守泰次郎指揮東京シティフィルのベートーヴェン交響曲全集も、最後の第5集となりました。いよいよ、第九です。
まず、この全集全体に言える事ですが、とにかくアグレッシヴ!良いテンポで第3楽章まで来て、勿論、第4楽章も速めのテンポを十分生命力として生かした演奏が繰り広げられます。ティンパニも固めで、いいですねえ。
第4楽章は合唱が入ってからが真骨頂!オケと合唱がともに作品を高め合っていて、第九という作品の構造をしっかりと理解している素晴らしい演奏だと思います。
第九と言えば、合唱が入っているので合唱主体だと思われがちです。でも、あくまでも交響曲なんです。オケと合唱が主体、なんです。
これは特に残念なことに、私たち聴衆の側が理解していないことが多いです。第九なんて歌なんだから、オケだけの作品より下だよって風潮は、長くこの国を支配しているように思います。第九を聴くなんてクラシックファンではないよとすら、わたし自身言われたことがあります。
しかし、ではなぜ、ヨーロッパでは第九はなかなか演奏されない、難しい作品であり、聴けることが幸せとされているんでしょう?何故なら、本来宗教曲でなければ組み合わされることのない組合わせである上に、編成が基本的に交響曲であるから難しいのです。
これは演奏してみるとよく分かります。合唱団がいかにオケと合わせるのが難しいのか。そしてオケがいかに合唱団と合わせるのが難しいか。それは作曲したベートーヴェンが一番よく分かっていました。だからこそ、例えば合唱が出る前はオケのパートが先行して旋律を奏でるなど、宗教曲の手法をたくさん取り入れているんです。宗教曲を聞き慣れていない日本人からすれば、確かに第九という作品は異質だと言えるでしょう。
その点を、飯守泰次郎と東京シティフィル、そして合唱団明響はしっかりと理解し、演奏しています。速めのテンポであっても、アインザッツやタイミングをしっかりと周りを聞きながら演奏しているのが、完璧な演奏からしっかりと聴こえてきますし、双方が熱くなりながらも冷静さを保つことによって、「情熱と冷静の間」は絶妙です!
その上で、いつも私が問題にするvor Gott!の部分は、何と変態演奏!vor一拍に対して、Gott!は4拍。後の2拍は何と、残響なんです!
・・・・・ロケーション、東京文化会館です。それほどは響かないホールです。そこで2拍分をなんと残響にしてしまうなんて、何と思い切った解釈でしょう!でもそれは、いいホールが沢山あるヨーロッパであれば、何回かに一回はある解釈であるわけです。東京文化会館の残響を計算に入れつつも、それを無視もして演奏する・・・・・この思い切った演奏が、さらに私たち聴衆を熱くしていきます。ブラヴォウ!
日本のオケでこんな素晴らしい、熱く血潮がたぎるような第九が聴けるなんて、何と幸せなことでしょう!新譜であればぜーったいおすすめの全集です。合唱団も美しさを追求しつつ力強さもあり、運命ではうまくいかなかった「力強さと美しさの融合」が、この第九ではしっかりと完成されています。
聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
松田昌恵(ソプラノ)
西明美(メゾソプラノ)
成田勝美(テノール)
木村俊充(バリトン)
混声合唱明響(合唱指揮:相良文明)
飯守泰次郎指揮
東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団
(fontec FOCD9442)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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