神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第28集を取り上げます。収録されているのは、ベートーヴェンの第九、2台ピアノ用です。
リストはベートーヴェンの交響曲を9つ全て独奏ピアノ用へと編曲(トランスクリプション)していますが、第九だけは2台ピアノ用にもトランスクリプションしているのです。
それだけ、第九という作品は編成が大きいという事を示していますし、それはまた、リストの「第九愛」を示すものでもあります。
そもそも、ベートーヴェンを楽聖として神格化したのはリストが曠野だとも言われているくらい、リストのベートーヴェンへの尊敬、傾倒は激しく、ゆえにカンタータも作曲しているのです。
マイ・コレクション:リストのベートーヴェン・カンタータ
http://yaplog.jp/yk6974/archive/906
ピアノ独奏と異なり、2台ではパートは倍の4つに増えます。それだけ、作品を再現することが可能になります。それでもどうしても、原曲を何度も歌っている私としては、あ、ここは音が抜けているなという部分もあり、それはそれで楽しいものです。
2台のピアノでということは、弦楽四重奏による演奏に近いわけで、かつて取り上げた弦楽五重奏に近いものがあります。
友人提供音源:ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」弦楽五重奏版
http://yaplog.jp/yk6974/archive/258
それだけに残念なのが、ピアノ2台の作品として、この演奏がなされている点です。それでも、アコーギグは少なく、演奏者の心の赴くままというわけではないんですが、演奏者二人は、この演奏を聴く限りでは、そこに合唱団がいるように演奏しているのです。でも、合唱団はいない・・・・・
そうなんです、これも合唱団なしなんです。とーっても残念です。是非とも、リスト版で合唱が入ってほしいなあと思います。特に、男声合唱のナポレオンマーチの部分ではテノールパートも演奏しているだけに、もったいないです。
いかに、BCJと小川典子の音源が素晴らしいのかなのです。あれはワーグナー版でしたが。
マイ・コレクション:BCJと小川典子のコラボレーションによる「第九」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/690
それでも、この演奏ではやらかしてくれています。合唱団がいない分、ピアノ作品として思いっきり、第4楽章vor Gott!の部分を、vor一拍に対し、Gott!は4拍しか伸ばさず、後は残響に任せています。
変態演奏認定ですm(_ _)m
でも、です。一度歌った経験のある私などは、これでも聴いているともう、第4楽章の部分は熱いものが湧き上ってきて、下手すれば落涙すらあり得るのですから、本当に第九という作品はエネルギーがあるなあと思います。それはとりもなおさず、リストもそのエネルギーに共感したからでしょう。
ベートーヴェンという、作曲家の自立を確立した作曲家がいたからこそ、リストは自らの表現を思いっきりしたわけですし、革新的な管弦楽作品である交響詩や、ピアノ協奏曲における循環形式、そして超絶技巧を宗教的に扱う、後年の「伝説」などの作品や様式が生まれたのでしょうから。
演奏しているマッコウリーとヴァスの2人からは、そんなリストのみならず、ベートーヴェンへのリスペクトすら感じられ、霊や魂に響いてきます。
全国のアマチュア合唱団の皆さん!リスト版で、定期演奏会をしてみようという団体は、いらっしゃいますか?いらっしゃれば、できうる限り、足を運んでみたいと思います。リストが多くの人に第九という作品が持つ気高い精神と、人間の関係性における霊的な感動を届けたいと思ったように、合唱団もオケにかかる予算よりも少なく実現できるという、より多くの人たちへ伝えるチャンスですよ!
出来れば、録音しちゃいましょう!リストは超絶技巧だから外面的だという人たちを、リストの真の姿を見せて、驚かせてあげましょうよ。
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
フランツ・リスト編曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」 S657/R376
レオン・マッコウリー(ピアノ)
アシュレイ・ヴァス(ピアノ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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