神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、コレッリの作品全集を取り上げていますが、今回は第6集を取り上げます。
本来なら、作品6と行きたいところですが・・・・・実は、作品5は大規模でして、二つにまたがっています。それだけ、充実した作品であると言う事でもあります。
作品5は、コレッリの作品の中でも人気がある作品でして、コレッリ没後、楽譜の再販が、他のものは2回を超えないものが多いのに対して、この作品5は何と20回を超えているんです。それだけの人気があったと言うこと示します。
それは後世の作曲家へも多大な影響を与えたと言えます。この作品自体が、まるで次の時代を用意しているかのような側面もありますし。
考えてみれば、ヴィヴァルディの「四季」はバロックでありながらすでに古典派やロマン派を用意している側面がある作品です。かっちりとした3楽章形式の協奏曲は、バッハを通して古典派へと受け継がれていくのです。
コレッリのこの作品も、その後バッハにより組曲という形を取りつつ、所謂「ソナタ」へと発展していきます。つまり、デュエットとしての「ソナタ」です。どんなに時代が移り変わろうとも、音楽の傾向が変ろうとも、旋律線が消え、人間の内面を表現するために、不協和音の単なる連続性のみとなろうとも。「ソナタ」というジャンルは生き続けています。それだけの生命力を、コレッリはこの作品5でその種をまいたと言うことになります。
実際、この作品5の第9番以降は、どこかで聞いたことのあるような旋律が出てきます。以前御紹介した、ロイヤル・チェンバー・オーケストラが、第九を演奏したCDにカップリングとして収録されているのです。
マイ・コレクション:日本の室内オケの第九
http://yaplog.jp/yk6974/archive/641
この時に演奏していた作品名は、実は全集にはありません。そのはずで、後にビネッリによって編曲されたものだからです。そもそも、コレッリが作曲した管弦楽作品は合奏協奏曲のみです。ソナタなどの中から選び出し、弦楽合奏としたのが収録されているものです。でもそういったバージョンがあると言うことは、コレッリの作品の影響の大きさを物語ります。
作品5の次には、作品番号がない作品がずらっと並びます。ここまではソナタだけを取り上げているのでソナタということになりますが、作品番号がなくともそのクオリティは高いものです。幾つか、作品9の2曲目にそっくりな旋律が出てきます。それはこれらの作品が使いまわしの可能性を示唆するものです。そして、コレッリの作品と言われているものにも、モーツァルトやバッハのように偽作も存在するのです。この音源では真作に限りなく近いものを集録したそうで、そうなればそっくりな旋律があってもおかしくはないと言うことになります(まれに、だからこそ偽作ということもありますがー)。
ソナタでも、オケに負けない作品を創造することができる・・・・・この純然たる事実が、恐らく後世の作曲家、例えば、ベートーヴェンを勇気づけたのでしょう。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは音楽史を変えるエポックメイキングな作品となりました。そしてその後の「ソナタ」というジャンルの様式を決定づけたのでした。そこにコレッリのこれらのソナタはつながっていきます。
演奏するアカデミア・ビザンチナは軽妙で気品のある演奏を展開していますが、それがすべて生命力があり、生き生きとしているのです。付点音符は跳ねており、それはモーツァルトを想像させます。それはアカデミア・ビザンチナのソリストたちが、音楽史をしっかりと認識しながら演奏していることを示します。一見すれば普通に気品ある演奏かも知れませんが、よくよく耳を傾けてみれば、実にプロらしい味わい深い演奏なのです。それをさらりとやってのけてしまうなんざあ、粋ですねえ。
そう、まさに「粋」という言葉がぴったりな演奏が、この第6集では全編に展開されています。だからこそ、聴いていて心地よいのだろうなあと思います。
聴いている音源
アルカンジェロ・コレッリ作曲
ヴァイオリン、チェロまたはチェンバロのためのソナタ集、作品5(第9番〜第12番)
ソナタイ長調Anh.33
ソナタニ長調Anh.34
ソナタイ短調Anh.35
ソナタニ長調Anh.36
ソナタニ長調Anh.37
アカデミア・ビザンチナ
カルロ・キアラッパ(ヴァイオリン)
マウロ・ヴァッリ(チェロ)
パオロ・チェリーチ(テオルボ)
オッタヴィオ・ダントーネ(ハープシコード)
パオロ・パオリーニ(スパニッシュ・ギター)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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