かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:コレッリ 作品全集8

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、コレッリの作品全集を取り上げていますが、今回はその第8集を取り上げます。合奏協奏曲の後半、第7番〜第12番までです。

普通の合奏協奏曲の演奏よりは、アカデミア・ビザンチナの演奏はすっきりとした音になっているのが特徴だと思います。それもそのはず、実はこの合奏協奏曲自体、このように副題が付いているのです。

オブリガート・コンチェルティーノの2つのヴァイオリンとチェロ、および加えても加えなくてもよい、また声部を重複させることもできるコンチェルト・グロッソのもう2つのヴァイオリン、ヴィオラ、バスのための合奏協奏曲」

長くてわからん!と思うかもしれませんが、要するに、基本は当時の管弦楽編成で演奏してほしいけれど、独奏楽器やオケの楽器の内、幾つか省略できる楽器があるよ、と言う意味なのです。

オブリガートとは、バロックでは、簡単に言えば楽譜に書きこまれている独奏楽器の事を意味します。え?どういうこと?って思いますよね?

これは、バロック時代の協奏曲が、どのようないちづけで、どのように演奏されていたかが分かっていないと、ちょっと理解しにくいんですね。

オブリガート (クラシック音楽)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%AC%E3%83%BC%E3%83%88_(%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E9%9F%B3%E6%A5%BD)

通奏低音ソリストって、じつは楽譜通りに演奏していないと言うか、楽譜に書かれていないことが多いんです。例えば、オルガンの場合、楽譜に書かれているのは記号だけ、って場合が多いです。それが、楽譜に書きこまれており、通奏低音を補助するのが、オブリガート、と言うわけです。

つまり、オブリガートは、通奏低音が旋律を奏でる時に参考になるものとも言えるでしょう。通常は自由度が高いのですが、楽譜通りに演奏しなければならないのがオブリガートです。

でも、通奏低音の場合、番号通りに演奏すれば楽譜に近い旋律を作り出すことが可能なので、省略してもいいですよ、ってことなのです。オケの場合も一緒です。

ではなんで、こんな一文が付くのかって言えば、この場合、楽譜についているってことがミソ、です。つまり、イタリア以外の地域で演奏する場合、経済的な理由で十分な編成が確保できない可能性がある、そのため、最低限はこれだけあれば、作品の演奏として成立しますので、よろしくねって言うのが、この一文が示すことなのです。

以前、モーツァルトのピアノ協奏曲がオケの代わりに弦楽四重奏で代えられた、モーツァルト自身の編曲を取り上げたことがあります。また、もっと近くでは、リストのピアノ作品を取り上げた時に於いて、リストがベートーヴェン交響曲をピアノ編曲したり、或はその他の作曲家の作品をピアノへ編曲したものを取り上げたこともありました。これらのことは、リストのピアノ編曲にはリスト自身の研究・勉学という側面もありますが、オケ付きの作品を広く演奏してもらうことが主眼です。ワーグナーが第九をピアノ編曲した理由がまさにそれだったわけですが、つまり、ワーグナーはあれだけ前衛的な作品を書きながら、実はバロック音楽の伝統を踏まえていた、と言うことになるんですね。

私たちが今生きている時代は本当に恵まれているんです。音楽が一つの頂点を極めた時代に、その果実を受け取って楽しんでいます。それは経済的に肥大化してきた世界と言うものがありました。ですから、コレッリのこのような配慮は恐らく想像できないんです。それは当然のことと言えるんですね。仕方ないとも言えます。

然しながら、私は理解することができます。貧乏合唱団で定期演奏会を行うために、編成をどうするのか、かんかんがくがくの議論をし、そして指揮者に一任し、演奏会で一緒したアンサンブルの編成が室内楽かそれ以下の小ささだったり。そんな経験をしているので、特段驚かないんです。ああ、あの時指揮者はこのような音楽史的な観点にたって、配慮してくれていたんだなあと、感謝しかありません。まあ、編成以外では様々ありましたけれど・・・・・

アカデミア・ビザンチナの演奏は、このような理由ですっきりしているのに、ソリスト一人一人の実力の高さゆえ、むしろ充実した、「情熱と冷静の間」のバランスが取れた、半ば魂の演奏となっています。この作品の編成を、魅力を伝えるために、自分たちの実力を勘案して、どのようにするのかが考え抜かれた演奏だと言えるでしょう。ですから、演奏から聴こえてくる音の一つ一つがクリアなのに、技術がひけらかされているような嫌味が一切なく、どこまでも楽しいんですね〜。生き生きとしていて、生命力を感じます。まるで大仏開眼のごとく、楽譜に魂を入れ、私たち聴衆に提示しているのは、感動すら覚えます。いいなあ〜。

こういう演奏こそ、まさしくプロの仕事です。




聴いている音源
合奏協奏曲 作品6(第7番〜第12番)
協奏曲第7番ニ長調
協奏曲第8番ト短調
協奏曲第9番ヘ長調
協奏曲第10番ハ長調
協奏曲第11番変ロ長調
協奏曲第12番ヘ長調
アカデミア・ビザンチナ
 コンチェルティー
  カルロ・キアラッパ(ヴァイオリン)
  フランコ・アンドリーニ(ヴァイオリン)
  マウロ・ヴァッリ(チェロ)
  オッタヴィオダントーネ(ハープシコード
  パオロ・チェリーチ(テオルボ)
 
 コンチェルト・グロッソ
  エンリコ・カサッザ、ファビオ・カファーロ、パオロ・ツィンツァーニ、ドミニク・ズリィード(第1ヴァイオリン)
  フランチェスコ・ドオラジオ、アンナ・モデスティ、ジュゼッペ・グイーダ、クラウディオ・ブルチアフェッリ(第2ヴァイオリン)
  アレッサンドロ・タンピエーリ、アンジェロ・ニカストロ、マルコ・ジェマーニ(ヴィオラ
  パオロ・バッランティ(チェロ)
  ジョヴァンニ・アッボンダンティ(ダブル・ベース)
  ロマノ・ヴァレンティニ(オルガン、ハープシコード

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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