かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ハイドン バリトン三重奏曲集3

今月のお買いもの、今回はハイドンバリトン三重奏曲集の第3回目です。

今回取り上げる第3集は、第96番から第98番、第100番から第103番までの7曲が収録されています。

前回までに、バリトンとはチェロ属の楽器であり、いまでいうコントラバスのような楽器であり、基本調性はニ長調で、弓で「ひく」だけでなく弦をつま弾くこともしたのだということをご紹介しました。そしてハイドンはその特徴を生かしつつ、エステルハージ侯爵の指示により、ニ長調以外の曲も作曲したのだということを述べました。

今回の第3集はその特徴がすべて入っているようなCDとなっています。なぜいきなり40番台から90番台へと飛んでいるのかが、この一枚に集約されています。第97番で弦を弾いて演奏しているのです。弾くというよりもそれは弦を胴体にたたくというほうが適切なような、そんな演奏です。実際、バリトンはそうやって演奏できるように設計されています。

バリトン
http://www.haydn2009.jp/home.html

このサイトのバリトンの写真を見ていただければお分かりのように、指で弾くことができるようになっています。この第3集の演奏はこのバリトンの性能を余すところなく引き出しているようなもので、だからこそこの100番前後の番号が選ばれたと思います。

それと、この第100番をはさんだ曲にはいくつかフーガが使われていることも特徴です。弦楽四重奏曲ではそれほど多くはなかったフーガですが、ここではこの第100番を前後する作品で多く使われているのも特徴です。弦楽四重奏曲では苦手であまり使わなかったのではという意見もあるとご紹介しましたが、確かにバリトン三重奏曲では大規模なものではありません。エステルハージ侯爵の指示により長い曲がかけなかったからです。しかしその内容はと言えば、実に充実しています。短いながらも苦労してしっかりとしたフーガを入れています。

第97番ではさらに3楽章制ではなく7楽章を取っています。これがなぜかは解説ではまったく触れてくれていないので何とも申し上げられれませんが、ほとんどが3楽章であることを考えますと、何か特別な用途で作曲されたと考えるのが適切かと思います。まるでバロック組曲のような雰囲気を持っていることが私がそう考える理由なのですが、果たして・・・・・

そもそもこういった室内楽曲は、当時エステルハージ宮のサロンで演奏されるために書かれることが多いわけでして、バリトン三重奏曲ももちろんそういったものの一つです。そもそもバリトンパートはエステルハージ侯爵が演奏することを念頭において作曲されているわけで、第97番はあきらかに何か特別な用途があると判断するほうが適切でしょう。できればそんな解説があるともっとこの曲集は面白いかもしれません。もしかするとそれは全集のほうであるのかもしれませんが・・・・・

実は、この曲集とは別に同じブリリアント・クラシックスで全集が出ています。21枚組なのでさすがにブリリアントでも8000円以上する代物ですが、もっとしりたいという方はそちらを購入されるほうがいいかもしれません。あくまでもこの4枚組は、バリトンという楽器の演奏を紹介するといったことに主眼が置かれた編集になっているからなのです。その典型例は明日別にご紹介します。

さて演奏なのですが、当時のサロンの演奏を目指すことを明らかに意識したネーミングと思われるエステルハージ・アンサンブルは、本当に高いレヴェルのアンサンブルをじっくりと聴かせてくれます。バリトンだけでなくチェロやヴィオラの豊潤な音色を大切にするテンポと弦使いは、聴いている空間を一気にエステルハージ宮へと変えてしまいます。気品を持ち優雅なその演奏は、まったくもって上質な芸術であり、たった3つの楽器でも優れた芸術に私たちが振れることができるということを証明してみせています。

本当にここまで全く安心して聴いていられるその演奏は、明らかに元々のレヴェルの高さを物語るものです。チェロやヴィオラは今でもある楽器ですから古楽器特有の問題さえマスターしさえすればプロであればそれほど苦労はしないでしょう。しかし、問題は20世紀になって再びひのめを見たバリトンです。19世紀にはほとんど演奏者がいなかったこの楽器(もちろん録音もない)を使いこなすまでには、様々な苦労があったことでしょう。実際この楽器がすたれていったのはその演奏のむずかしさにあったわけなのですが、それをこの演奏はみじんも感じさせないのです。

この次の第4集がさらに楽器が多くなるのですが、さていったいどんな演奏になりますことやら・・・・・楽しみなところです。



聴いているCD
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
バリトン三重奏曲第96番ロ短調
バリトン三重奏曲第97番ニ長調
バリトン三重奏曲第98番ニ長調
バリトン三重奏曲第100番ヘ長調
バリトン三重奏曲第101番ハ長調
バリトン三重奏曲第102番ト長調
バリトン三重奏曲第103番イ長調
エステルハージ・アンサンブル
(Brilliant Classics 94022/3)



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