コンサート雑感、今回は令和7(2025)年8月16日に聴きに行きました、合奏団ZEROさんの第34回定期演奏会のレビューです。
合奏団ZEROさんは東京のアマチュアオーケストラです。松岡究さんを音楽監督とし、合奏団と言っても立派なオーケストラで管楽器や打楽器も編成にあります。私もブログで3度取り上げており最近は前回第33回定期演奏会のレビューです。
合奏団とありますが、それはアンサンブルが生み出す「綾」を追及したいという想いが込められていると、これまで足を運んだ演奏会を聴いて理解しています。そのことが広く認知されつつあるのか、当日も会場は9割入っていました。
プログラムは以下の通りです。
アンコールはありませんでした。
①シューマン 交響曲第1番「春」
シューマンの交響曲第1番は「春」という表題がついている作品で、1841年に作曲、初演されました。シューマンの交響曲は出版順なので成立順の番号ではありませんがこれは出版においても作曲においても第1番の作品となっています。一応この前に「ツヴィカウ交響曲」もありますが未完に終わっているため番号に含まれていません。その点では「完成された交響曲では」といういい方もできるかもしれません。
当日のパンフレットにも記載がありましたが、シューマンの交響曲への批判として、同じ音を複数の楽器が担当することが多いため、和声の厚塗りとも言われますが、それは一方で様々な楽器の音で一つの音を表現してほしいということを意味します。まるで合唱の斉唱であり、まさしくトゥッティなわけです。この視点は真に重要であり、合奏団ZEROさんが取り上げるべき作品だと言えましょう。こういうプログラムを組むのがアマチュアのいいところです。確かにシューマンの交響曲第1番と言えばある意味ベタなプログラムではありますが、ですがシューマンの交響曲の本質がなんであるかにフォーカスをした演奏会というのはまさしくアマチュアらしいプログラムです。
演奏ではテンポはややゆったりとして入り、それは第4楽章までそれほど変わるわけではありませんでした。やせた弦の音など聴こえてこない合奏団ZEROさんの実力であればもっと速いテンポを採用して生命力のある演奏をしてもいいはずなのですが、松岡氏はそれを選択せずゆったりとしたテンポを採用したということは、同じ音を複数の楽器が織りなす「綾」の美しさを聴いてほしいという意味合いがあると受け取りました。実際私としてはそこまで厚塗りか?と思うくらい美しくかつ素朴さが感じられます。むしろ春に花咲く多くの花々が織りなす朦朧とした美しさが浮かび上がります。まさに合奏団ZEROさんはシューマンが春の風景をそこに切り取り、それでもって春の到来を喜んでいるという内面性があると言わんばかりです。こういう説得力ある演奏はいいですね~。テンポとしては必ずしも好きなテンポではなかったにも関わらず、美しさに感動している自分が居ました。聴衆も残響が終るまで拍手が始まらないという、非常に素晴らしい演奏でした。
②ブラームス 交響曲第4番
ブラームスの交響曲第4番は、1884~1885年に作曲され、1885年に初演された作品です。第4楽章でシャコンヌを採用していることから新古典主義音楽の最初の作品とも言われます。
テンポとしてはオーソドックスなゆったり目のテンポで入りました。その意味では松岡氏の解釈はシューマンでもブラームスでも「巨匠の時代」を踏襲していると言えます。一方でそれはこのブラームスにおいては、第4楽章にシャコンヌがあるにも関わらずそのテンポだということを意味し、ブラームスが単純に昔に帰ったわけではないことも意味するわけです。後期ロマン派という時代は新しさというよりはいかにして自らの表現を追及していくかという時代であったことを、明確に表明しているとも言えましょう。
それでいて、どこか生命力を感じる演奏であったのも事実で、和声を存分に味わいつつもそこには人間の魂が宿っていることを意味します。音楽の三要素を十分理解し表現に生かしているなあと感じますし、それゆえに魂が揺さぶられます。勿論もっと速いテンポの演奏のすばらしさも知っている私なのでゆったりとしたテンポが全てではないですが、ゆったりとしたテンポというものが持つ「意味」を、指揮者と団員が共有し、表現していると感じます。この点はさすが合奏団ZEROさんです。合奏団ZEROさんだと本当に迷いがないというか、毎回演奏に裏切られることがないのが素晴らしく、また足を運びたくなります。終演時残響を楽しめずブラヴォウをかけた方がいらっしゃったのが残念ですが、まあ、感動でつい出てしまったと思っておきましょう。
次回は来年2月11日にチャイコフスキーの交響曲第2番とリムスキー=コルサコフの「シェエラザード」という、ロシア特集。この二つの組み合わせもまたアマチュアらしいところです。ですが・・・
なんと!当日のチラシで大発見!私が入っていた宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」のピアニストも務められていた佐藤季里さんがピアニストを務められている武蔵野市民合唱団さんの第49回定期演奏会にも出演されるそうです(9月23日)!これは足を運ばないと!すでにFacebookでは足を運ぶことを表明しています。武蔵野市民合唱団さんの定期演奏会でもどのような演奏をされるのか、今から楽しみです!
聴いて来たコンサート
合奏団ZERO第34回定期演奏会
ロベルト・シューマン作曲
交響曲第1番変ロ長調作品38「春」
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第4番ホ短調作品98
松岡究指揮
合奏団ZERO
令和7(2025)年8月16日、東京、杉並、杉並公会堂大ホール
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。