今月のお買いもの、令和7(2025)年6月に購入したものをご紹介します。Qobuzネットストアで購入しました、ブラームスのドイツ・レクイエム。鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏で、flac96kHz/24bitのハイレゾです。
バッハ・コレギウム・ジャパンのアルバムは実は基本的にハイレゾなんですが、SACDでの販売が主です。ただ、世界的に音楽ファイルでの販売が主流になってきている昨今、SACDというのは基本的に日本向けなのではないかと言う気もしています。実際、レーベルはBISですがそのウェブサイトを見に行ってみると英語であるのは勿論、CD販売のページがなくて音楽配信サービスの紹介のみです。
以下にHMVのページを示しますが、その値段は3850円。会員価格で2966円ですが、実は私は2400円で購入しています。ただしブックレットはなし。その意味ではブックレットがない分安いとは言えますが、仮にブックレットありの場合、恐らくHMVの会員価格とさほどかわらないのではないでしょうか。そう考えると、恐らく3850円という値段は、わざわざ日本というCDがまだまだ幅を利かせている国向けにローカライズされた分コストアップされていると考えていいでしょう。これを若い人に負担させるのはあまりにもかわいそうで、そりゃあ中高年を攻撃するわけだと思います。こういう点を、まず中高年から手放しませんか?だからこそ私はずっと、ブックレットもデータでつけてくださいねとブログでは各社にお願いしてきました。BISさんも是非ともご考慮いただけると嬉しいです。特に今年2025年4月25日でキングインターナショナルが解散して、日本語版のCDが販売されないかもしれないという状況ですし・・・
さて、このアルバムはいろいろ新しいことが模索されているアルバムと言えます。まず、録音場所ですが、バッハ・コレギウム・ジャパンと言えば神戸松蔭女子学院大学(今年2025年より共学化により神戸松蔭大学と改称)チャペルと今までは決まっていましたが、このアルバムでは東京の東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアルを使っています。バッハ・コレギウム・ジャパンの東京での会場ですが、意外とこの会場を使ったアルバムというのは少ないのです。そして、実はこのアルバムはいかに示す私が聴きに行ったコンサートの音源も使った、セッションとライヴのふたつから採用されたものとなっています。
それもあって、いつかこの演奏もアルバムになるのではないかと思っていましたところ、ちょうどFacebookで今年発売されるとタイムラインで流れてきたため、購入に至りました。今考えますと、バッハ・コレギウム・ジャパンが国内レーベルではなくBISを選択したのは正しかったと思います。Qobuzでも国内レーベルは扱っていますが2023年以前のものばかりで最新のものを取り扱っていません。実はバッハ・コレギウム・ジャパンだとQobuzに移行した後取り扱いのないアルバムが存在していましたが、最近過去のバッハのカンタータのアルバムもラインナップに加わり、さらにこの最新のアルバムも加わりました。おそらく日本のレーベルとの権利義務の関係ではないかと思われます。正直もうそんな縄張り争いなどは辞めていただきたいというのが本音です。この動き、間違いなくキングインターナショナルの解散と軌を一にしています。ならば、音楽ファイル販売に日本の各社も舵を切ってほしいところです。例えば、EXTONから出ている飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団のハイドン・マラソンも第23集以降CDのみとなっており音楽ファイルでの販売は途絶えており、それはなにも外資のQobuzのみならず日本生まれのソニーのmoraでも同じです。いい加減この辺りは解消してほしいですね。
さて、演奏は昨年2024年1月19日のライヴ音源も含まれていることで、生き生きとした演奏になっているのも特徴。特に第2曲「肉はみな、草のごとく」のDie Erloseten des Herrn werden wiederkommen(主に救われしもの再びきたりて)以降と、第6曲「われらここには、とこしえの地なくして」のDenn es wird die Posaune schallen(すなわちラッパ鳴り)以降は、ライブからなのか、魂からの激しさを感じる演奏でまさに聴き手の魂を揺さぶります。今までだと、コンサートの前にセッション録音をしてアルバムを作成、そのプロモーションもかねてコンサートという流れでしたが、このアルバムではそのライヴも使ってということになったおかげで、コンサートに行けなかった人はそのライヴ感も味わえ、またコンサートに行けた人はその記憶がよみがえってくる効果を持っています。私も上記エントリでこう書いています。
「コンサートで特に圧巻だったのは、第2楽章と第6楽章。激しいパッセージがありながらも、喜びと悲しみの感情が交錯する様子が、見事です。第4楽章のソプラノ・ソロも絶品!生命力がありそしてまさに人間の内面の表現がぴか一。バリトン・ソロも力強く、それでいて余計な力も抜かれており、合唱とのアンサンブルも、会衆と先導者のような関係です。聖書がテクストになっているわけですが、そこに人間の嘆き、そして悼み、哀しみ、癒しなどすべてが詰まっているのに、後期ロマン派の和声がしっかり聞こえるのに、テンポが速めで生き生きとしている・・・後期ロマン派という時代の演奏は、果たして今までと同じでいいのか?と問いかけるかのような演奏でした。それでいて、聴衆を圧倒する説得力と表現。メンバーの鈴木氏に対する想いと重なったこともあるのでしょうが、まさに死に対する人間の内面を、優しくかつ力強く表現したもので、第7章が終り鈴木氏が腕を下ろしているのに、拍手はそれからすこし遅れて始まりました。みな、演奏に酔い、自分だけではない、大切な人を思っていたのかもしれません。遅れても万雷の拍手が沸き起こりました。」
このアルバムでは拍手は収録されていませんが、演奏を聴いているうちにあの夜のことがよみがえってきます。ちょうど親族を失くして義姉の涙を見た後に足を運んだこのコンサートでしたが、それもあって、さらに私の母ががんで苦しんで死んでいったこともまたよみがえってきます。特に第7曲は個人的には涙無くして私は聴けません・・・
Selig sind die Toten,
die in dem Herrn sterben,
von nun an.
Ja, der Geist spricht,
das sie ruhen von ihrer Arbeit;
denn ihre Werke folgen ihnen nach.
幸いなるかな、死人のうち、
主にありて死ぬるもの、
今よりのちに。
「然り」と霊も言いたもう、
「かれらはその労苦から[解かれて]休まん。
かれらの行い、のちより従うなれば」
※歌詞と訳は
より
特にバッハ・コレギウム・ジャパンの場合、ドイツ語の歌詞が比較的聴き取りやすいのです。オペラシティという東京では超絶音響のいいホールで録音されているにも関わらず、です。ゆえにこの歌詞が魂を貫き、心に染みて来るのです。うん、母はがんと闘うという労苦から解放されて幸せに逝ったのだと、思わず思い出せさせてしまう演奏なのです。
それは単に録音がいいだけではなく、私自身がハイレゾをさらにリサンプリング再生しているということもあるかもしれません。音楽ファイルですからPCで聴いているわけで、そのファイルをいつも通りTune Browserで192kHz/32bitでリサンプリング再生し、USB接続によりソニーのSRS-HG10で出力させているわけで、元は96kHz/24bitなのをさらに音質を良くしているという側面もあると思います。元々DSDなのをflacにしているせいなのか、バッハ・コレギウム・ジャパンのアルバムで192kHzというスペックに出会ったことはあまりないです。そのため私の中ではTune Browserでリサンプリング再生をするのはデフォルトになっています。父はあまり好まないですが・・・確かに音をいじくる行為ではありますから。ただ、原理をわかってしまえば、デジタルならあまりそれを言っても意味ないんじゃない?と言うのが私のスタンスです。まあこの辺りは私と父と世代が違いますのでしょうがないです。父はアナログの時代にテープレコーダーで音質を追及して来た人で、ツートラ三八をライヴに持ち込んで録音していた人ですし。一方私は生まれた時はアナログですが成長するにつれデジタル音源を好んで聴いて来た世代です。感覚が違って当然なんですよね。
ただ、このリサンプリング再生をするということが、私自身が足を運んだライヴの感覚がよみがえってくるということにもつながっているのも確かです。この辺りの技術の進歩を、バッハ・コレギウム・ジャパンは巧みに使っているような気がします。バッハ・コレギウム・ジャパンがBISを選択したのはいろんなしがらみが国内ではあるからでしょうが、一方でそれゆえに海外レーベルが選択出来たことで、時代に合わせることができたとも言えるでしょう。まさに人生いつも塞翁が馬。おそらくですが、海外では私のように聴いている人も多そうです。ゆえに96kHz/24bitでも問題なしとしている可能性もあります。確かにデジタルであればそれでもあまり問題ないわけですから。本当に自然な音を楽しみたいのであればSACDあるいはDSDそのものを再生できる装置を持てばいいという考え方なんだと思います。技術を理解できれば、そのあたりは個人的には割り切れるところです。ゆえに希望するのは192kHzでということではなく、ブックレットも別途ファイルでつけてくださいって点です。その分500円程度上がったところで私は文句は言いません。文句を言う人がいるのであればある無しを選択できるようにすればいいだけだと思っています。この辺りはQobuzさんは改良の余地アリだと思います。例えばストリーミングサービスだと基本ブックレットなどつけようがないわけですが、ダウンロードするときにありなしを択べるようにすることは可能かと思います。バッハ・コレギウム・ジャパンはやはり鈴木雅明や鈴木優人氏の解説というものも魅力なので、是非とも善処していただけると嬉しいところです。また。BISもできるのであればドイツ・グラモフォンのようにダウンロードできるウェブサイトがあるとそっちを選択できるのになあと思うところです。この辺りはまだまだ改善の余地があると思います。この素晴らしい録音と演奏をさらに生かすのはそういったレーベルや配信サイトの不断の努力だと思います。
買ってきたハイレゾ
ヨハネス・ブラームス作曲
ドイツ・レクイエム作品45
安川みく(ソプラノ)
ヨッヘン・クプファー(バリトン)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(BIS 2751 flac96kHz/24bit)
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