かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:テルデックレーベルの古楽演奏によるバッハのカンタータ全集30

東京の図書館から、78回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、テルデックレーベルから出版された、古楽演奏によるバッハのカンタータ全集、今回は第30集を取り上げます。なおCDでは第16集の1となっていますがここでは図書館の通番に従っています。

この全集は指揮者2名体制で、ニコラウス・アーノンクールグスタフ・レオンハルトの2人です。今回はニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、テルツ少年合唱団となっています。ソプラノソロは2名で、そのうち1名はウィーン少年合唱団員です。

収録曲は第61番と第62番の2つです。バッハのカンタータがお好きな方ならお分かりだとは思いますが、この2曲は共に「いざ来ませ、異邦人の救い主」です。おそらく最初からこの2つを並べる方針だったと思われます。この全集は番号順ではありますが、分かれて収録という可能性もあるからです。それをこの2曲を一つのCDにまとめることで。おのおのの曲の価値を聴き手に考えてもらおうと言う意図があるものと私は考えています。

カンタータ第61番「いざ来ませ、異邦人の救い主」BWV61
カンタータ第61番は、1714年12月2日に初演された、待降節第1日目用のカンタータです。

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バッハのカンタータの中でも第147番に並び有名なのがこの第61番です。待降節という季節を踏まえ、不安と期待が入り混じる内容になっていますし、第4曲のレチタティーヴォではシシリアーノの中で歌うバスが静謐さと期待を抱かせるものになっているのも魅力的。

それを受けたソプラノソロですが、この第61番ではテルツ少年合唱団のボーイソプラノ、ゼッピ・クローンヴィッターが担当しています。かわいらしい歌唱は確かにいいんですが、ただどこか違和感も同時に感じるのです。清潔さという意味ではいいんですが・・・この辺りは、ボーイソプラノの功罪かなあと思います。合唱も、第1曲では違和感を感じますが最終合唱では違和感を感じないんです。その意味では、表現力が問われる作品だとも言えます。テルツ少年合唱団は決して下手な合唱団ではないですし表現力もあるのですが、それでも違和感を感じるという所に、第61番という作品が持つ複雑さや深さを感じざるを得ません。一方でバッハも若かったのかもしれません・・・

カンタータ第62番「いざ来ませ、異邦人の救い主」BWV62
カンタータ第62番は、1724年12月3日に初演された、待降節第1日目用のカンタータです。つまり、第61番と全く同じだと言うことになります。これはそもそも第61番を前年に演奏したことで評判になり、新作をということになったのだろうと思われています。その意味でも、この全集では同じCDにまとめてみたということになろうかと思いますし、そもそもBWV番号も並んでいると考えられます。

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冒頭合唱は、同じテルツ少年合唱団なのに、第61番で感じたような違和感がないんです。となると、合唱団の実力というよりは、作品の難易度ということになるのかもと思います。第61番が合唱の歌唱で救い主が生まれる前の暗い様子を表現しなければならないのに比べ、第62番では器楽がそれを補佐し合唱が表現する割合は低下しています。それだけ歌いやすいということになるかと思います。それはバッハの円熟味ということもあるかと思います。実際、東京書籍「バッハ事典」ではこの第62番も高く評価しています。人気では第61番ですが、その安易な飛びつきというものに対し専門の視点から異議を唱えたと言ってもいいでしょう。

どの曲も素晴らしいのですが、この演奏ではさらに注目すべきは、第4曲のバスアリア、第5曲のバスとソプラノの二重唱レチタティーヴォです。第4曲はバスがコロラトゥーラで歌う、救い主を戦士として扱う曲です。コロラトゥーラと言えば、その後モーツァルトの「魔笛」で夜の女王のアリアが有名ですが、このバスアリアもまた歌いにくい曲だなあと思いますが見事に騒ぎのモティーフを歌い切り、救い主の雄々しさを賛美するものになっています。第5曲では、ソプラノはウィーン少年合唱団のペーター・イェロージッツが務めています。相手のバスは第4曲で素晴らしい歌唱を見せたリュート・ヴァン・デル・メール。この二人のアンサンブルがまた豊潤でいい!え、ソプラノってまだ少年だよね・・・プロのバスと共に歌ってもそん色ないんです。さすが後にテノールソリストとして活躍するだけあります。やはり、この全集の中では、ボーイソプラノとしてはペーター・イェロージッツのほうが安定しており私は好きですね。

少年合唱団の合唱はかつては私は避けていた時もあるのですが、この全集を聴いていて、食わず嫌いはいけないよねえとひしひしと感じております。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第61番「いざ来ませ、異邦人の救い主」BWV61
カンタータ第62番「いざ来ませ、異邦人の救い主」BWV62
ペーター・イェーロジッツ(ソプラノ、ウィーン少年合唱団員、BWV62)
ゼッピ・クローンヴィッター(ソプラノ、テルツ少年合唱団員、BWV61)
ポール・エスウッド(アルト)
クルト・エクヴィールツ(テノール
リュート・ヴァン・デル・メール(バス)
テルツ少年合唱団(合唱指揮:ゲールハルト・シュミットガーデン)
ニコラウス・アーノンクール指揮、通奏低音チェロ
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。