かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:リスト ダンテ交響曲とダンテ・ソナタ

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、フランツ・リストのダンテ交響曲とダンテ・ソナタを収録したアルバムをご紹介します。

以前、リストのファウスト交響曲を収録したアルバムをご紹介しました。

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その時から月日は流れ、実はその間ずっとダンテ響曲も探していました。ようやく目にしたのが、小金井市立図書館でということになったのでした。しかもこのアルバム、ダンテ・ソナタカップリング。このカップリングはなかなか珍しいと思います。ダンテ交響曲管弦楽作品ですが、ダンテ・ソナタピアノ曲ですので。ピアノ曲とオーケストラ曲って、好きな人たちが意外と分かれるんですよね。

ですが、私はファウスト交響曲を聴いてから探していたというのもあり、またピアノ曲も好んで聴いていることから、棚に見つけた時「これは!」と手に取って借りたのでした。重複するけれど、意味あってこのカップリングのはずだと直感したからです。実は、ダンテ・ソナタもエントリを上げています。なぜならこの曲、「巡礼の年」の第2年、第7曲だからです。

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検索してみれば、ビンゴ。この2曲には相関関係があるんです。そもそもリストは若い頃からダンテを読んでおり、ダンテ・ソナタを作曲したことで管弦楽作品へも着想が膨らんでいったものだったからです。

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3つの部分からなっていますが、楽章としては2つ。これは興味深いです。第1楽章が「地獄」、第2楽章は「煉獄」となっているのですが、実はリストが最初に構想したように「地獄」「煉獄」「天国」の3つから成り立っているんです。そもそも、正式名称が「ダンテの『神曲』による交響曲」ですから、ダンテの新曲の3つの部分に準拠しているのですが、なぜか「煉獄篇」と「天国篇」が一緒になっているのです。

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煉獄とは、贖罪の意味があって、その贖罪が済んで天上界へと昇れるのですが、「ダンテ交響曲」では煉獄篇と天国篇が一緒になっており、天国はワーグナーから音楽では表現できないと指摘を受けて、キリスト教の音楽に使用されるマニフィカートが採用されています。ですが興味深いことに、決して激しい音楽だけで地獄と煉獄が表現されているわけではなく、時折優しい音楽が挿入されています。それは原作のストーリーをまるで映像化し、そのサウンドトラックにしているかの如く、象徴的でもあります。そこまで聴き込んで初めて「あ、だから煉獄と天国はつながっているのだ」と理解できます。

地獄に落ちても、煉獄で苦しみながら贖罪すれば救われる・・・・・だから、一つになっていると考えれば、なぜリストが煉獄と天国を一つにしたのかが理解できると思います。こういう音楽は私にとって非常に象徴的なタイミングで訪れるのですが・・・・・ちょうど現在、贖罪をしなければならない芸能事務所が存在しますが、まさに煉獄を通り抜けられるかがカギとなることでしょう。

その視点では、クラシック音楽というのは、私たちが生まれる前から、この世のあらゆることを表現し、芸術として後世に遺すことで、私たちにメッセージを運んでくれていると感じます。あるいは、リストのこのような交響曲交響詩が、後期ロマン派を経て、フランス音楽へ影響を与え、象徴主義印象派へとつながっていったと考えます。世界は分断されようとしていますが、どんなに引きこもっても、たとえ少しだけでも外の世界とは関係性を持っていることが重要であると認識させられます。

それは、指揮とピアノがバレンボイムであるということも、強くメッセージされていることにつながっているのではと感じます。西洋と東洋をつなげる活動をしているバレンボイムですが、この録音はその活動をする前の1989年~1993年に収録されています。しかも、ピアニストでもあることから、ダンテ交響曲だけではなく関連するダンテ・ソナタも収録するという姿勢は、まさにダンテの「神曲」という作品がいかに西洋の精神世界において重要性を持つのかを認識させられます。どちらも複雑で構成と和声を持ちますが、しかし作品が持つ背景を表現するに十分なだけの迫力を持ちます。リストが作曲した当時の状況なども、バレンボイムやオーケストラの団員一人一人にとって、決して他人ごとではなく、自身の問題としてひきつけて考えた結果のパフォーマンスのように感じるのは私だけなのでしょうか・・・・・

今、某芸能事務所が起こした問題を考えるに、適切な作品、演奏だと思います。JPOPだけが音楽ではありません。クラシックも聴きませんか?

 


聴いている音源
フランツ・リスト作曲
ダンテ交響曲S.109
ダンテ・ソナタ
 巡礼の年第2年「イタリア」S161
 ~第7曲:ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」
ベルリン放送合唱団(女声合唱)
ダニエル・バレンボイム指揮、ピアノ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。