神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はリストのファウスト交響曲を取り上げます。
リストは交響詩の祖と言われていますが、交響曲と名のつくものも幾つか書いていて、このファウスト交響曲はその代表作と言っていいものです。
ファウスト交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%88%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2
ベルリオーズの「ファウストの劫罰」に触発された部分は大いにあったのではないかと想像されますが、リストは同じテクストでも構成を変えています。3人の人物の描写に焦点を当てているのです。
それはそれで面白いものです。なぜなら、それは単純に物語の筋を追っているわけではないですが、その3人の視点から物語を見ることになるからです。その視点が素晴らしい!
実演は確かに少ないのですが、リストの交響曲の代表作でもあるだけに、録音の多いのですが、この音源はそのうちの一つでもあります。
ファウストと言えば、ファウスト博士とメフィストフェレスですが、その関係性ではなくここではそれぞれの人物に焦点が当たっていることから、その対比を見ることになります。中間に愛らしいグレートヒェンが入りますが、私はこの3点セットこそ、リストがこの作品に込めたメッセージだと受け取っています。
ファウストとメフィストフェレスが対比であり、グレートヒェンがその中間だとすれば、この作品は善悪に揺れ動く人間の姿を、ファウストの登場人物を借りて表現しているとも取れます。最後が美しい大円団で終わっていることから、リストは理想主義者として正しいものが勝つという思想を持っていることも見て取れます。
リストは他者の作品を変えて作曲することでも才能豊かだった人ですが、それを文学を題材にして音楽で行ったといえるこの作品は、現代に生きる私たちにも通じる普遍性を持つ作品だと思います。その視点で聴きますと、この作品は飽きることがありません。
演奏も指揮がショルティですし、オケはシカゴ響。合唱は第九でもおなじみのシカゴ交響合唱団。ソリストはジークフリート・イェルザレム。実力派ぞろいです。それぞれの描写がしっかりとした演奏で描かれており、一見すると分かりずらいこの作品を見事にわかりやすくしているのがさすがです。
この作品はその意味では、いいオケ、いい指揮者で聴かないと分かりづらいのかもしれません。其れゆえに実演は逆に少ないのかもしれません。でも、チャレンジはしてほしいなあと思います。聴き手に人物を想像させながら、それは視点を変えれば私たちの心の中でもあるのだと想像させ、認知させる。そのことによって私たちが気づくことはたくさんあります。
この作品は感動する点もありますが、感動させながら、考えさせるという点もあります。この演奏はその「考えさせる」という点で見事だと言えましょう。
聴いている音源
フランツ・リスト作曲
ファウスト交響曲
ジークフリート・イェルザレム(テノール)
シカゴ交響合唱団(合唱指揮:マーガレット・ヒリス)
サー・ゲオルグ・ショルティ指揮
シカゴ交響楽団
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