神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は上原彩子が弾くチャイコフスキーのくるみ割り人形を中心に収録したアルバムをご紹介します。
上原彩子と言えば、今や実力派のピアニスト。そんな彼女が、チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」を弾いているなんて、面白いなと思ったのです。なぜなら、くるみ割り人形ってピアノ編曲を聞いたことがないから、です。
そもそも誰の編曲なんだよって話です。そこに興味があって、手に取ってみたら・・・・・なんと、彼女自身の編曲だっていうじゃありませんか！
実際には、彼女だけではなく、同じくピアニストであるミハイル・プレトニョフも編曲に関わっているのですが、いずれにしてもこの編曲は、演奏者がかかわっているという点で注目したのです。
例えばです、リストは私たちは作曲家として知っていますが、そもそもはピアニストです。ショパンも、シューマンも、ブラームスも、そしてベートーヴェンも、モーツァルトも、です。バッハですら、そもそものキャリアの出発は教会オルガニストであり、それは後期ロマン派においてブルックナーも、です。
そんな中に、上原彩子もいるのかも・・・・・なんて思うと、ワクワクしませんか？でも、検索してみると彼女の作曲家としてのキャリアは全く書かれていません。
3児の母である現在の上原彩子女史。チャイコフスキーのバレエでも、本当にファンの多いくるみ割り人形。私も好きな作品です。クリスマスにファンタジーが訪れる・・・・・どこかで聞いたシチュエーションだと思いません？結構ハリウッドでクリスマスの時期になると封切られる映画であるあるのシチュエーションです。けれども私はクラシックが好きなので、クリスマスと言えばメサイアかこのくるみ割り人形、そして新年近くになれば第九、です。
私だってファンタジー大好きです。特にこのくるみ割り人形は、夢がある作品ですし。高校生だった時、もう子供と大人の間のような感じで、クリスマスプレゼントなんてもらえることなんてなくなっていましたから。「日本人は仏教徒なんだからお年玉でいいでしょ！」で終わり。なのでこの作品にはとてもあこがれたのでした。親からはなくたって、例えば彼女とか・・・・・いや、男子校だったのでンなわけなかったんですけどね。なので大学は絶対共学と思って行ったのですが・・・・・結局、この曲が好きだとしてもできませんでした0rzまあ、バカだっただけですけどね。
そんなわけで、とても親しみがあるこの作品を、さて上原女史はどのような編曲で提示してくれるんだろうと、ワクワクしていました。それが、本当にわくわくする、素晴らしい編曲！
もちろん、オケの作品をピアノにするわけですから、リスト同様、端折る部分もあるわけですが、大部分はその端折っていることが気付かないよう編曲されており、ピアノ一台で世界を表現するという意味がよくわかる編曲となっています。ところどころ、どうしてもオケと同じようにいかない部分だけ、ピアノならではの編曲を行っています。これもリストみたいです。もちろん、リスト自身ではないわけなので、そこから手法を拝借する、ということですが・・・・・
そんな編曲を、慈しむように弾くそのピアニズムにうっとり。平均律の音をうまくピアノの各部を使って歌い上げる演奏は、上原女史はまるでご本人がクララになっているかのよう。いや、聴いている私もクララになっているみたいですけれど（あの、てめえ男性だろという突っ込みはやめてくださいねw）。実は結構長いくるみ割り人形が、あっという間に過ぎていきます。中大オケの定期で独自の抜粋で聴いたことがありますが、その時多少冗長に感じたことを思い出しますが、この上原女史の演奏はそんなことがなく、本当にあっという間に過ぎ去っていきます。そのうえで強い印象！さすがプロだと思います。
上原女史とプレトニョフが半々で編曲したこの作品ですが、特に彼女が編曲した「花のワルツ」は絶品！リズムをわざとオケとはずらしている点が、あれっと思いますが聴いているうちにこれが必然だね！って思えるようになるのも素晴らしい！アレンジャーというよりはもう、作曲家としてのキャリアも加えていいのでは？と思います。
カップリングのチャイコフスキーの作品も、上原女史の「歌」が存分に表現されている演奏で、彼女の芸術を存分に楽しむことができるアルバムです。ロケーションは稲城市にあるiプラザホール。その響きも全く欧州とそん色がないのも、好印象です。
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
上原彩子、ミハイル・プレトニョフ編曲
バレエ音楽「くるみ割り人形」作品71より
①序曲
②行進曲
③クララとくるみ割り人形
戦闘（ねずみと兵隊の戦い）
間奏曲
④スペインの踊り（チョコレート）
⑤中国の踊り
⑥トレパック（ロシアの踊り）
⑦葦笛の踊り
⑧花のワルツ
⑨こんぺい糖の踊り
⑩タランテラ
⑪アンダンテ・マエストーソ
⑫終曲のワルツとアポテオーズ
18の小品作品72より
⑬子守歌（第2曲）
⑭田舎のこだま（第13曲）
⑮きらめくワルツ（第11曲）
⑯悲歌（第14曲）
上原彩子（ピアノ）
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。
