今回のマイ・コレは、2002年に3組買った第九の最後でして、佐渡裕指揮、新日フィルの演奏です。
これを買いました理由はすでに掲げてある通り、オール日本人による演奏であったからです。
佐渡裕といえば、大阪の「1万人の第九」二代目指揮者として有名ですが、当時私はNHKで知りまして、さらにナクソスから出ているラムルー管との演奏でとてもいい印象を持っていました。その佐渡さんがオール日本人キャストで第九を振るのですから、実は3組の中で小澤の次に手に取ったのを覚えています。
さらにもう一つの理由が録音場所にあります。横浜みなとみらいホールの大ホールにて収録されているからなのです。
http://www.yaf.or.jp/mmh/index.php
響きがとてもやわらかいホールだと言えましょう。実際このCDでも、かなり残響がききとれるのです。第九は実はあまり残響が残りにくい曲なのですが、このCDではホールの特性故か、丁度いい塩梅で残響が残ってくれています。
それが、地元にある・・・・・これほど、地元民として誇りを持つものはありません。そしてそれが、CDとなって出ている・・・・・郷土愛のある私が買わなくていったい誰が買うんだ!という勢いでした^^;
演奏ですがその残響ゆえに第1楽章では若干オケが戸惑っているのが分かります。そのころいわゆる「いいホール」はすでに4つほど開館していましたが、新日フィルはまだそういったホールでの演奏経験が不足していましたので、その部分が第1楽章でアンサンブルの乱れという点に出たのだと思います。だからといって縦の線などが崩壊しているわけではなく、端正な部分は崩れていません。
第2楽章からはすっかり立ち直り、第3楽章ではほぼ完璧です。
そして、第4楽章。ティンパニを「ぶっ叩いて」くれるのは素晴らしいですね。ここで音楽が変わるんだという宣誓の意味もあるので、やはりティンパニはぶっ叩いてほしいです^^;
疲れているはずのオケもここで気合いを入れなおしです。
そして、圧巻は合唱団が入ってきてから。とても力強い合唱は、プロかと思うくらいです。アマチュアなら聴けないなあなんて言ったら損しますよ。なんといっても合唱は栗友会ですから。
http://www4.ocn.ne.jp/~k-ritsu/
合唱が栗友会であるということも、このCDを購入する決め手でした。プロよりも熱い演奏をする日本が誇るスーパーアマチュア。TCFと双璧を為す、栗友会が合唱を担当しているため、合唱は力強く、そしてホールの残響の使い方も美味くてしなやかさすら持っています。それは、発声が力任せではないことを意味します。
往々にして、日本の第九の演奏は年末のN響のイメージが強いため、国内ではあまり評価されません。しかし、長い年月を重ねたアマチュアの演奏は、時としてプロをしのぎますし、栗友会やTCFといった合唱団になれば、団員の中には実は音大出などごろごろいるのです。だからこそ、プロをもしのぐ演奏ができるわけです。それは残念ながら、オーケストラ曲をよく聴かれる人たちにはあまり知られていないことが私はとても残念です。
このCDではまず、ソプラノが入ってくるJa, Wer auf nur eine Seeleの部分でバスがJaを思いっきり鋭く歌っているのがとても印象的で素晴らしい効果を出しています。その前に楽譜通りソプラノ抜きで歌ったうえで、なおかつバスが「そうだ!たった一人の魂の友と言われるものを得られた者も、この讃美に唱和せよ!」と鋭く歌うのはCDで聴いていてさえ、涙をこらえることが出来ません。
なのに、冷静にvor Gott!の部分では変態演奏をやってのけています。vorを一拍にしてGott!は五拍しか伸ばさず、残りの一拍は残響なのです。そして熱い演奏なのに、合唱団、オケともにアンサンブルが崩れずついて行っています。
この点はなかなかこの演奏で評価されていません。幾つかこの演奏のレビューを以前見たことがありますが、評価するしないにかかわらず、この点に着目していた人は皆無といっていいと思います。
その素晴らしいアンサンブルのまま最後まで突進し、二重フーガのあたりからは美しさも加わって、最後の神々の火花が華々しく奏でられて終るのです。
佐渡さんは3つ買ったCDの内、頻繁に聴いているのはやはり小澤とこの佐渡裕のものになるかと思います。それはやはり共通項として、あまり奇をてらっていないのに、熱いものを抑えることが出来ないという点にあります。それはとりもなおさず、どちらの演奏も「情熱と冷静の間」のバランスが絶妙であることを意味しているのです。
聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
リッツィ大岩千穂(ソプラノ)
坂本朱(アルト)
吉田浩之(テノール)
福島明也(バリトン)
栗友会および合唱有志(合唱指揮:栗山文昭)
佐渡裕指揮
新日本フィルハーモニー交響楽団
(ワーナー WPCS11420)
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