かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ペンデレツキ 交響曲と宗教曲集2 今月のお買いもの:ペンデレツキ 交響曲と宗教曲集2

今月のお買いもの、5枚目はペンデレツキの交響曲と宗教曲集の2枚目です。ペンデレツキ本人指揮、ポーランド国営放送交響楽団他の演奏です。2枚目は主に宗教曲でまとめられています。

さて、このブログでも後期ロマン派までの宗教曲を取り上げてきていますが、このペンデレツキは強烈です。現代の最先端の技法を駆使して作曲されていますが、その技法にばかり目を向けてしまうと、この音楽が語るものを見誤るかもしれません。

まず第1曲目は1974年に作曲されたラクリモーサ。モーツァルトのレクイエムにも存在する曲ですが、ペンデレツキに係りますとまるで人間の内面が抉り取られたかのような音楽へと変わります。

静かに静謐であるのに、人間の内面をズバッと描いているかのような作品です。不安定な和音が底なしの悲しみを表現しています。

それがさらに増幅されるのが、2曲目の「マニフィカート」です。本来、マニフィカートとは讃歌なのですが・・・・・

マニフィカト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%88

ペンデレツキは、ほとんど讃歌のようには作曲していません。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/61257880.html

神に人間が対峙するというのは素晴らしい表現だと思います。人間が自らを忘れて神を讃えるのではなく、人間は本当に神をたたえることが出来るほど優れた存在なのか?ということを考えさせる音楽です。

ただ、私はだからこそこの曲が表現するものはそれだけではないだろうと思っています。作曲年が1974年。ポーランドでは共産党政権で自由が奪われていた時代です。宗教曲すらまともに書いてはいけない時代に、彼はまるで宗教曲とは見えない曲を書いたのです。この点は、この曲を聴く上で非常に重要だと思います。

当時のポーランドの社会状況を考えますと、この曲は人々が圧政の中で神に救いを求める曲であり、その上で人間の所業を見つめる曲でもあるだろうと思います。前衛作曲家ペンデレツキらしいアプローチです。

合唱部分の、ポルタメントでまるで嘆くような音楽は、単に人が神に対峙するという表現だけでは足りません。端的にはそういえるでしょうが、その表現の中にはもっと人間の業と言ったものすら含まれるのだということを念頭に置かないといけないだろうと思います。そうでないと、不協和音のみとも言えるこの曲を最後まで聴くことは難しいでしょう。

第3部のまるで地獄へ落ちていくかの音楽もそういった人間の「業」を想起せずにはいられません。マニフィカートという音楽でなぜそんな音楽を現出させる必要があるのかと考えれば、やはり当時の社会情勢を想起せずにはいられないのです。単に主への畏れ、つまり畏怖の念を表現するだけで済むはずです。しかしペンデレツキはその「畏怖」に様々な人間の「業」を描いたのだとすれば、まるで最後の審判のような音楽を理解しやすいように思います。

最後に少し明るめな調性へ移るのは、ペンデレツキの希望なのかもしれません。

最後の第3曲目は「カノン」です。標題からしますとバロックの音楽なのかと思いますが、これぞペンデレツキという作品です。1962年の作曲で、ペンデレツキががちがちの前衛音楽作曲家であった時代の作品で、メロディなどありません。音が羅列され、それが塊となって私たちに迫ってきます。それがカノンで表現されたものなのでカノンと名づけられたものです。正式には「52の弦楽器とテープのための「カノン」」というように、大掛かりな実験的作品です。ただ、それが基礎となって前二つの作品が作曲され、その上で人間の内面が表現されているのです。

演奏面では、合唱団が素晴らしいです。こういった不協和音というのは発声時所謂「ぶらさがり」やすいのです。プロだからそれは当り前だと言えばそうかもしれません。しかし、メロディに成れている私たちが単に「音」を合わせるのはとても難しいのです。私たちは本能的に次に行く「音」を想定しながら歌うので、それが崩れると途端にアンサンブルは崩れるのです。それが一切ないということは、どれだけ作品を理解し、練習してきているかということを意味します。特に、「理解する」という点が重要です。練習すればうまくなるなんてレベルでできる代物ではありません。

不協和音を自然な形で提示するというのは並大抵なことではありません。私はコダーイですらかなり難しかったことを覚えています。ましてこのペンデレツキなどは恐らくアマチュアでは無理だと思います。勉強しなくてはならないことがあまりにも多すぎます。こういう作品こそ、プロのものを聴きたいものです。その期待には十分すぎるほど応えてくれています。

オケは楽器ですから練習次第でうまくなるのは当然ですが、合唱団は歌うために姿勢や体力、気力や精神力まで高めなくてはなりません。まさしくスポーツなのです。心技体が一つになってバランスよくならないと、不協和音であればあるほど難しくなります。古典派とはまた違った難しさです。ペンデレツキ直伝の熱い思いというのが伝わってきます。

こういった演奏を聴きますと、現代音楽も捨てたものではないと思います。それはもしかすると私が元合唱団員であるからかもしれませんが・・・・・



聴いているCD
クシシトフ・ペンデレツキ作曲
ラクリモーサ
マニフィカート
カノン
クラクフフィルハーモニー合唱団員(ソリスト、少年合唱)
クラクフポーランド放送合唱団
クシシトフ・ペンデレツキ指揮
ポーランド国営放送交響楽団
(EMI 50999 2 17669 2 3/2)



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