神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、メンデルスゾーンの合唱曲を取り上げています。今回はその第5集を取り上げます。収録曲は、マニフィカートとグローリア。
宗教曲ってわかりずらいよ、っておっしゃるむきもあるかもしれません。この二つの曲はどちらもモーツァルトも作曲しているといえば、少しは親しみやすくなるでしょうか。
実は、モーツァルトは単独で作曲はしていません。マニフィカートはヴェスペレの中で、グローリアはミサ曲の中で作曲しています。
この二つが単独というのは実は少し古い様式にもとづいているわけですが、それがバロック期ということになります。マニフィカートはバッハも作曲していますし、グローリアはなんといってもヴィヴァルディのものが有名です。
マニフィカト (バッハ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%AB%E3%83%88_(%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F)
グローリア (ヴィヴァルディ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%A2_(%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3)
メンデルスゾーンが宗教合唱曲で目指したもの、それは明らかにバロック様式を前期ロマン派の音楽で彩ることであるのが、こういった点からもはっきりしてくるのです。それこそ、メンデルスゾーンが音楽史において果たした重要な役割です。
その証拠に、メンデルスゾーンは二つの曲を以下のように章分けして作曲しています。
マニフィカート
�@マニフィカート
�Aクゥイア・レスペシット
�Bエト・ミゼリコルディア
�Cフェシト・ポテンティアム
�Dデスポスイト・ポテンテス
�Eグローリア・パルティ
�Fシクト・エラト
グローリア
�@グローリア
�Aラウダムス・テ
�Bグラチアス・アジムス・ティビ
�Cドミネ・デウス
�Dクゥイ・トーリス・ペッカータ・ムンディ
�Eクゥオニアム・トゥ・ソールス・サンクトゥス
モーツァルトも、初期のミサ曲では同じような章立てをしており、明らかに古風なものを目指しつつ、ロマン派の音楽を載せようとしています。そして、それはある一定の成果を出しているといっていいでしょう。
グローリアの「ラウダムス・テ」で、ソリストのアカペラからオケと共にユニゾンで歌い始めるのはとても印象的ですが、この二つの作品は歌う難易度がそれぞれ異なります。そこに、私はメンデルスゾーンが作曲するときに考慮したものが異なるように思います。
マニフィカートは、オケの前奏があり、そのテンポと旋律がそのまま合唱団へと引き継がれて音楽がはじまりますが、一方のグローリアは、前奏なしにいきなり合唱団、オケともに演奏が始まります。それはとても印象的で素晴らしい効果を持っていますが、歌うほうはとても難しいという側面を持ちます。
恐らくですが、マニフィカートはアマチュアが歌ってもいいように、しかしグローリアは聖歌隊などを念頭に置いているものと思われます。つまり、演奏する側のレヴェルが異なることを想定している、ということです。
この二つの曲はそれぞれヴェスペレ、ミサ曲に含まれる曲ですが、単独でも演奏される曲でもあります。構成的には、単独あるいは全体の一部として、どちらでもいいように作曲されていますが、少なくとも単独で歌う場合は、明らかに合唱団のレヴェルの違いが考慮されていると思います。
メンデルスゾーンが意外にもアマチュア向けの合唱曲を書いていることは、合唱団に入っている人にとっては当たり前に知っていることであっても、オケ曲など器楽の方面だとあまり知られていないのが聴衆サイドでは実情です(特に日本では)。私達聴衆サイドは、「ひばり」などメンデルスゾーンは多くのアマチュア向けの合唱曲も作曲した作曲家なのだということを、はっきりと認識するほうが良いように思います。それは間違いなく、鑑賞において曲への理解が深まるきっかけになるでしょう。
それを意識しているのか、このCDではソリストは合唱団から選抜されています。これ、実は聖歌隊と同じであって、明らかにこの二つの作品は聖歌隊やアマチュア合唱団を念頭に置いているという認識がうかがえます。勿論、ソロの専門家(所謂ソリスト)を持ってきてもいいわけなんですが、元々合唱曲とはこう歌っていたのだということを、私達に改めて認識させてくれる演奏となっています。
それでいても、軽くしかし力強く、美しいアンサンブルがそこに存在しています。オケに全く引けを取らず、存在感あふれるその演奏は、実に印象的です。透明感すらあり、まるで青空に雲がただよい、はるかかなたまで見渡せるような爽快感が、演奏から聴き取ることが出来ます。
神を讃える作品に、風景が存在する・・・・・それもまた、驚きですが、それを実現できる合唱団とオケは、素晴らしい実力を持っていると思います。なかなかそれは、宗教曲というカテゴリーでは難しいのです・・・・・
なんら特別なことをする必要はないのです。そこにすでに、それはあるがままに存在しているのですから、その魅力を淡々と引きだしていけばいい。そんなことを、この演奏は教えてくれているように思います。
聴いているCD
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
マニフィカート(混声合唱とソリスト、オルガンのための)
グローリア(混声合唱とソリスト、オルガンのための)
アマデウス合唱団
ソリスト:ナターリ・カール(ソプラノ)
バーバラ・ヴェルナー(アルト)
ロベルト・モルヴァイ(テノール)
マンフレート・ビットナー(バス)
アリス・ドゥスコヴァ(オルガン)
ニコル・マット指揮
ロイトリンゲン・ヴリュッテンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
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