東京の図書館から、今回から3回に渡りまして、府中市立図書館のライブラリである、ヨセフ・スークとスメタナ弦楽四重奏団によるモーツァルトの弦楽五重奏曲全集を取り上げます。
モーツァルトも数々の室内楽作品を残していますが、弦楽五重奏曲は全部で6曲が残されています。この全集はその6曲を2つずつに分けて3枚組としています。今回はその1枚目、第1集を取り上げます。収録曲は第1版と第5番です。
まずは演奏者を簡単にご紹介。ヨセフ・スークはチェコを代表するヴァイオリニストで、おじいさんも演奏だけでなく作曲家としても活躍した、いわば音楽一家に生まれた人です。
上記ウィキペディアで最後の方で触れられているのが、今回取り上げる演奏ということになります。その相方とも言うべきスメタナ弦楽四重奏団は、このブログでもベートーヴェンの弦楽四重奏曲を取り上げた時にも登場した団体です。チェコを代表する弦楽四重奏団で国際的にも高い評価を受けています。
ここで登場する人たちのほとんどはすでに鬼籍に入られ、スメタナ弦楽四重奏団も解散していますが、録音は未だ色褪せず聴く人も多いです。スークもスークトリオで活躍したヴァイオリニストでソロ活動も精力的に行った人です。
そのヴァイオリニストであるスークは、ここではヴィオラを担当して第1ヴィオラとして演奏しています。この辺りがにくいですね~。ヴァイオリンが弾ける人が必ずしもヴィオラが弾けるわけではありませんが、ヴィオラも弾けるという人は結構いらっしゃいます。スークもその一人だと言えるでしょう。作曲家の中ではベートーヴェンが弾き分けることができたとも言われており、それが結実したのが交響曲第9番とも言われます。
さて、ここで不思議に思った方もいるかもしれません。下手に音楽の知識がある人だと「あれ?弦楽五重奏曲ってチェロが2つでは?」という意見が出ると思います。実はモーツァルトの弦楽五重奏曲は、チェロではなくヴィオラが2つ、なのです。これは6曲全てに共通しています。
①弦楽五重奏曲第1番
モーツァルトの弦楽五重奏曲第1番は、1773年に作曲された作品です。ちょうど「ピアノの神童」という演奏家から作曲へと軸足を移していくタイミングで、ハイドンを参考に初めは習作のつもりだったようです。
またこのウィキペディアのページでは、なぜモーツァルトの弦楽五重奏曲がヴィオラ2つなのかの理由も述べられています。モーツァルトが厚い低弦を嫌ったこと、そして当時の流行が協奏曲的な表現を好んだこと(おそらくこの協奏曲的というのは合奏協奏曲、コンチェルト・グロッソを指すものと思われます)がヴィオラ2つの理由として挙げられています。ある意味、古風な編成とも言えるでしょう。
そのせいなのか、この第1番は明るさが強調されている部分もあって、実に爽快です。スメタナ弦楽四重奏団と言えばベートーヴェンでは多少浪花節的な演奏を聴かせてくれますが、この演奏でも確かに速いテンポで突っ走る演奏ではないですが、それでも爽快さは感じます。それは明らかにヴィオラが2つということもあると思います。
その上で、スークもまたアンサンブルの一員として溶け込んでいるため、余計爽やかさが際立ちます。それはそもそもこの五人が、ソリストとしても活動できるだけの実力をそなえていることを意味します。
②弦楽五重奏曲第5番
弦楽五重奏曲第5番は、1790年に作曲した作品で、死の前年の成立です。第1番よりは枯れたと言うか、落ち着いた作品です。
より深みがあるとも言えます。それが結局、この時期のモーツァルトを孤立させたとも言えるかもしれません。ですが今聴けばその深みがなんとも味わい深い作品です。モーツァルトとしては経済的に困窮していたのでそれは歓迎ではなかったでしょうが・・・
ここでもスークは完全にアンサンブルに溶け込んでおり、作品の味わい深さを他のメンバーとともに際立たせています。またヴィオラが2つであることが深みと共に軽快さもあるため複雑でまた味わい深くもあります。ですので特にスークが目立たなくても自然と作品が際立って聴こえるという相乗効果。それはやはりスークとスメタナ弦楽四重奏団のメンバーのスコアリーディングの力に気が付かされます。それでいてしっかり歌ってもいますし・・・そりゃあ、何時までも聴かれる演奏になるはずです。
最初と最後から2つ前の作品が並んでいますが、これはあえてと考えてよさそうです。勿論番号順にして楽曲の変遷を楽しむのも一つの聴き方ですが、このようにシャッフルすることで、演奏者の技量と表現力の豊かさを味わうこともできます。この全集は明らかに後者を志向していることが演奏でも明かです。これもまた全集の楽しみ方ですね。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
弦楽五重奏曲第1番変ロ長調KV174
弦楽五重奏曲第5番ニ長調KV593
ヨセフ・スーク(第1ヴィオラ)
スメタナ四重奏団
イルジー・ノヴァーク(第1ヴァイオリン)
ルボミール・コステツキー(第2ヴァイオリン)
ミラン・シュカンパ(ヴィオラ)
アントニーン・コホウト(チェロ)
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