かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:シンフォニア・ズブロッカ第16回演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年2月24日に聴きに行きました、シンフォニアズブロッカの第16回演奏会のレビューです。

あのう、かんちゃんさん、前回のコンサート雑感で行ったコンサートの日付、同じですが間違っていませんか?という、ア・ナ・タ。間違っていません。またはしごやってます!しかも、実はこの日のはしごは意識してはしごするつもりで設定しました。

前回のコンサート雑感で取り上げた、Orchestra HALさんではなく、実はそもそもは2月24日には東京オペラティコンサートホールで開催されたメンデルスゾーンの「エリア」を予定していました。この演奏会が昼間であること、そして場所が初台であることから、はしごが可能であると判断し、そもそも二つをはしごする予定を立てていました。ところが、「エリア」のチケットを予約しようとしたタイミングでは、すでに高い値段の席しか残っていなかったため、あきらめたところ、ハルオケさんが同じ日に演奏会があることを発見、ハルオケさんの方を聴きに行くことが出来た、というわけなのです。なので、実はシンフォニアズブロッカさんは初めから狙っていたというわけでした。

シンフォニアズブロッカさんは、東京のアマチュアオーケストラです。2005年創立の比較的新しいオーケストラではありますが、その創設から学生や社会人が集う団体として発足したようです。これはクレセント・フィルハーモニー管弦楽団中央大学管弦楽団卒業生が創立。中央大学管弦楽団の学生も参加)や先日取り上げたオーケストラ・ルゼル(東京電機大学管弦楽団卒業生が創立。東京電機大学管弦楽団の学生も参加)と似ていると思います。今後少子化が進めばこのような学生も社会人も参加するというオーケストラがアマチュアオーケストラのスタンダードになることでしょう。市民オーケストラもその方向に行くと思います。ちなみに、ズブロッカとはポーランドウォッカのことだそうです。私は酒が飲めませんし飲んではいけないのですが、いい感じに酔える雰囲気を作ろうとすることは重要だと思います。

sinfoniazubrowka.g1.xrea.com

そんなシンフォニアズブロッカさんですが、実は演奏会に足を運ぶのは初めてです。名前だけはいろんなチラシで知ってはいましたが。ではなぜ足を運ぼうと思ったかと言えば、それは当日のメインがショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」だったから、です。シンフォニアズブロッカさんのコンサートのチケットを取るタイミングは、実はオーケストラ・ダスビダーニャのチケットを取るタイミングとほぼ同じだったんです。そして、奇しくもどちらもメインは「レニングラード」。そして、シンフォニアズブロッカさんが今回選択したホールは、オーケストラ・ダスビダーニャが第19回定期演奏会で「レニングラード」を演奏した、すみだトリフォニーだったことが決め手です。

ykanchan.hatenablog.com

当然、オーケストラ・ダスビダーニャ(以下、「ダスビ」と略称)との比較、ということになります。

ykanchan.hatenablog.com

ダスビは第19回の演奏をさらにブラッシュアップさせて、第30回では素晴らしい演奏を披露しましたが、果たして、シンフォニアズブロッカさんはその演奏を超えるか否や?

当日のプログラムは、以下の通り。

R.シュトラウス 交響詩ドン・ファン
ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード

いやあ、おなか一杯って感じのプログラムですね。ダスビだとさらにショスタコーヴィチの序曲とか持ってきますけれど、さすがにショスタコーヴィチ「狂い」というような人達ではないと思いますので、そこまではしなかったわけですが、それでも、「ドン・ファン」を持ってくるだけでも、気合は入っています。

まずは、1曲目の「ドン・ファン」。R.シュトラウス交響詩の中ではよく知られた、がっつり後期ロマン派の作品ですが・・・

ja.wikipedia.org

・・・私はプロオケを聴きに来ているのだろうか?と錯覚するような、やせた音が全くない弦楽器。そして不安定な音が全くない美しく豊潤な金管。まさに、「ドン・ファン」の物語を彩るにふさわしいサウンドが、ホールをのっけから満たすのです!これにはびっくりです。またまた、素晴らしいアマオケに当たってしまった・・・

特に、ヴァイオリンはほぼ全員が体を動かし使って演奏しているのが印象的。ほぼ全員というのは本当になかなか見られない光景です。ヴァイオリンに限らず、弦楽器全体が体を使っての演奏をしており、それが表現の安定さや豊かさ、感情移入による聴衆が魂レベルでの共感につながっているかなという気がします。

こうなると、楽しみなのは「レニングラード」になるわけです。何しろ、比較対象はショスタコーヴィチの音楽が好きで好きでたまらない「ショスタコ狂い」集団、オーケストラ・ダスビダーニャ。さて、その実力のほどは・・・

いやあ、安定さという意味では、軽くダスビを超えて行きました。これもびっくりです。ただ、テンポが走らず安定していることはいいのですが、その分どこか客観的過ぎるかなと感じたのです。魂レベルでの共感が伝わりにくい点が、マイナスだったかなと。勿論、演奏レベルではもはやダスビを超えているのは事実です。ですが、感情移入が伝わりにくいという点が感じられたのです。

それは、朗々と鳴らす指揮者の解釈もあるのだと思います。実際、クレッシェンドしていく部分だとか、第1楽章において小太鼓が始まり戦争の影が近づき、それがクライマックスを迎え凶暴な音楽に変化していくさまは圧巻!決してダスビに引けを取らないどころか、もやはプロのレベルです。ppとffの差もダイナミックで素晴らしいですし、それゆえに感情が伝わってくる場面もいくつもありました。その意味では、ダスビの場合いかに指揮者長田氏の解釈も演奏に反映されているのかと感じました。相互に積み上げてきた時間の差だと思います。

今回、シンフォニアズブロッカさんを振ったのは、金井俊文氏。ハンガリーのオーケストラでレジデント・コンダクターを務めていたり副指揮者であったりする方です。特に素晴らしいと思ったのは、金管が朗々かつ豊潤に鳴らすこと。これって、ダスビの金管トレーナーであるトカレフ氏と同じアプローチなんです。そのアプローチを日本人指揮者がやってしまうんです。才能はどこに埋もれているか本当にわかりませんね。若い才能を知りたければ東京のアマチュアオーケストラの演奏会に足しげく通われることを切にお勧めします。

シンフォニアズブロッカさんはこの金井氏が常に振っているわけではなくコンサートごとに違った指揮者を迎えるオーケストラ。その点がダスビと結果が違った原因かなと思います。それでも、全体的に見れば本当に情熱的かつ冷静で、感動的な演奏でした。こういうオケを聴きますと、ますますプロオケからは足が遠ざかります・・・安い値段で魂が喜ぶのなら、アマチュアを選択してしまいます。勿論、日本のプロオケの実力はあがっているので、海外オケでなくても日本のプロオケで十分満足できるのですが、これだけ喜びを感じさせるアマチュアがいるとなると、むしろ数多くアマチュアの演奏を聴きに行きたいのが私なので、どうしても資金的にプロオケへ足を運べる余裕はありません。そのうえで、最近公共交通を取り上げるYouTubeも始め、その旅費が馬鹿になりませんので、余計プロオケへはいけません。まあ、地域公共交通とアマチュアオーケストラとは似た関係もありますので、その二つを取り上げることが私に与えられた使命なのだと考えています。

その視点からも考えても、今回のシンフォニアズブロッカさんの演奏はもうブラヴォウ!をかけていい演奏ですし、実際にかけました。その後続々と終演後ブラヴォウ!がかかったことが、この演奏のすばらしさを物語るものでした。また一つ、聴きに行きたいアマチュアオーケストラが増え、私はうれしい悲鳴を上げております・・・

 


聴きに行ったコンサート
シンフォニアズブロッカ第16回演奏会
リヒャルト・シュトラウス作曲
交響詩ドン・ファン」作品20
ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ作曲
交響曲第7番作品60「レニングラード
金井俊文指揮
シンフォニアズブロッカ

令和6(2024)年2月24日、東京、墨田、すみだトリフォニーホール 大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。