かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オーケストラ・ダスビダーニャ第19回定期演奏会を聴いて

皆様、ご無沙汰しております。心身共に体調を崩しまして、ほぼ1週間お休みをいただくこととしました。そのため、エントリは本日から再開します。

そして、本来であれば火曜日なので「マイ・コレクション」のコーナーなのですが、予定を変更しまして、仕事の合間に聴きに行きました、アマチュアオーケストラのオーケストラ・ダズビダーニャの第19回定期演奏会を聴いての雑感をお送りします。

まず、オーケストラ・ダスビダーニャについて説明しましょう。え、どこのオケって?そりゃあ、日本は、東京です。ショスタコーヴィチの作品を専門に演奏するオケとして、世界的に有名なオーケストラです。

オーケストラ・ダスビダーニャ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B9%E3%83%93%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A3

公式HP
http://www.dasubi.org/

プロオケではなく、アマチュアオーケストラです。それでも、国内に熱狂的なファンを持つ、世界で二つしか存在しないショスタコーヴィチ作品演奏専門のオーケストラの一つです。活動は年1回の定期演奏会のみですが、そのレヴェルは、私の想像をはるかに超えていました・・・・・

今回のプログラムは以下の通りです。

1.伊福部昭 日本組曲
2.ドミトリー・ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード

まず、「日本組曲」です。伊福部昭と言えばなんといってもSF映画ゴジラ」のBGM作曲家として有名なのですが、以前ナクソス音源を取り上げた時にも言及しましたが、実は師がチェレプニンであることから日本の旋律を使った作品を圧倒的に残しているのです。この組曲もそういった作品の一つで、実は以前取り上げた「日本狂詩曲」がその大元となっています。

マイ・コレクション:日本管弦楽名曲集

ykanchan.hatenablog.com



日本人ですからリズムはなれたものですが、オケの表現力がしなやかでかつ力強く、アンサンブルが秀逸であることから、このどこがアマチュアなのだと思う演奏です。なれたものとはいえ、実は日本のリズムが管弦楽として演奏するときにはとても難しいものでして(これは合唱でも一緒なので器楽経験がない私でもはっきりといえます)、そこからアンサンブルが崩壊することが多いのですが、それが一切ありません。

特にこの日本組曲では、まったく危なげない、完璧とも言える演奏を聴かせてくれました。伊福部昭とはこれほど魅力的な音楽を紡ぎだす作曲家だったのかと、目を覚まさせてくれたように思います。

次に、メインのショスタコ7番「レニングラード」です。この曲はその題名から想像される通り、第二次世界大戦独ソ戦における、レニングラード攻防戦のさ中祖国を想う気持ちからショスタコーヴィチが書いた交響曲です。

交響曲第7番 (ショスタコーヴィチ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC7%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81)

この曲を、震災からぴたり1年後に持ってくるとはと思ったからこそ、今回足を運んだわけでもありました。今回の震災をきっかけに、我が国では「第三の敗戦」という言葉もよくきかれますが、そういったものを想起させるこの曲を、なんと震災そして原発事故1年の祈念すべき日に持ってくるか、と。

レニングラード」は当初のショスタコーヴィチの発言から政治的に使われることが多かった曲です。そのために評価が低い時期もありました。しかし、ショスタコーヴィチが当時置かれた立場というものを考えた時、私は果たしてソビエト共産党プロパガンダ曲という評価でいいのかと考えるようになりました。

実は私も大学生の時にはそんなように考えていた時期がありました。しかし、最近では実はもっとショスタコーヴィチの語法は複雑で、レトリックを使った反体制を歌った音楽なのではないかと考えるようになりました。

この演奏会が開かれることを知った当初、実は私は神奈川県立図書館でショスタコーヴィチ交響曲全集を借り終えたあたりでした。当然聴きながらウィキの記述などを読んでいますが、ショスタコーヴィチほど表面的な音楽で判断してはいけないという評論が多いのも事実です。わが国でそういった評論が多いことは、私はとても幸せなことであると思います(また、それができるということこそ「独立国」ならではだと思います)。

それを念頭に置いてなのかはわかりませんが、オケの演奏は端整かつ大胆で、ダイナミックレンジがとても広いものです。それでいてアンサンブルが崩壊することは終始なく、アマチュアらしさは弦に少しやせた音が鳴っていたくらいで、それがなければどこの在京オケだろうと思ったことでしょう。第1楽章の小太鼓を硬く叩かせることで緊張感を生み出し、そしてそれがクレシェンドしていくのは聴いている方に何か恐ろしいものがやってくることを暗示させると同時に、金管アインザッツのいい演奏がショスタコーヴィチらしい諧謔性も強調されていて、この曲が一筋縄ではないことをよく表現できていたと思います。

現在の、しかも自由主義陣営の一員である日本に生きる私たちでさえ、昨年の3月11日に何が起こったのかを翻って見るに、レニングラードでかつて起きた惨状が、いまだに三陸では残っていることに気が付くでしょう。ちょうど前日は東京大空襲の祈念日でもありました。焼け野原となった東京下町と、被災地三陸沿岸を比較した時、皆様はどんな思いが去来するでしょうか。それをまざまざと思い起こさせてくれた素晴らしい演奏でした。私たちはこの震災を決して忘れてはいけない・・・・・原発事故によってまだ苦しんでいる人もいれば、放射線など関係なく未だ生活のめどがついていない人が、被災地に大勢いることを・・・・・そしてその大地は、まるで空襲を受けたように壊滅している中で、人々は生活再建をしようとしていることを。

アンコールのショスタコ弦楽四重奏曲のオケ編曲もアンサンブルが完ぺきでしたが、最後の外山雄三の「弦楽のためのラプソディ」はどこまで素晴らしいのでしょう!レニングラードは最後希望で終わるのですがそれ以上の希望を私たちに授けてくれました。1000%完璧なアンサンブルと、力強い演奏が、ノリノリのリズムとともに生きる勇気をもらったように思います。

このオケをご紹介いただいた、mixiにおける親しい方々に感謝してもし尽くせません。ともすれば心が折れそうなこの時期に、もっと苦しい思いから曲を紡ぎだしたショスタコーヴィチの作品に目を向けさせていただいた御恩は、決して忘れないでしょう。そして、そのショスタコーヴィチの作品を堂々たる演奏で私を驚かせ、そして感動の渦に巻き込み、生きる勇気を与えてくださった、オーケストラ・ダスビダーニャの全団員の方に、感謝いたします。

中大オケもぜひ演奏してほしいと思った曲ばかりでした。是非来年も足を運びたいと思います!



聴きに行った演奏会
オーケストラ・ダスビダーニャ 第19回定期演奏会
伊福部昭作曲
管弦楽のための「日本組曲
ドミトリー・ショスタコーヴィチ作曲
交響曲第7番ハ長調作品60「レニングラード
弦楽四重奏曲第1番より第4楽章(白川悟志編曲管弦楽版)
外山雄三作曲
管弦楽のためのラプソディ
長田雅人指揮
オーケストラ・ダスビダーニャ

平成24(2012)年3月11日、東京、隅田区錦糸町すみだトリフォニーホール大ホール



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地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。