かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オーケストラ・ダスビダーニャ第22回定期演奏会を聴いて

今年初めてのコンサート雑感になります。今回は2月8日に聴きに行きました、オーケストラ・ダスビダーニャの第22回定期演奏会を取り上げます。

略称、ダスビとさせていただきますが、ダスビをエントリで上げるのは本当に久しぶりです。昨年の第21回は予定が入って行けず、その前の第20回は、私が休養となってしまったため、すでに記憶があやふやだったためエントリにしなかったという事で、第19回のCDを取り上げて以来という事になりました。

いま一度、ダスビの説明をしたいと思います。オーケストラ・ダスビダーニャは、元々はショスタコーヴィチの第7番「レニングラード」を演奏するために結成された一度きりのオケでしたが、一度きりのはずがやはり続けたいという有志によって演奏会が続けられてきました、世界でも唯一のショスタコーヴィチの作品を専門に取り上げるアマチュアオーケストラです。

公式HP
http://www.dasubi.org/

オーケストラ・ダスビダーニャ(ウィキ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B9%E3%83%93%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%A3

このダスビの存在がなければ、おそらく私は神奈川県立図書館でショスタコーヴィチ交響曲全集を借りるという事をしなかったでしょう。借りたのはダスビの定期演奏会を聴きに行くよりも前ですが、mixiの日記で演奏会の様子をアップされる人がいたため、私はしだいに興味を抱いていったのでした。ですから、ダスビの存在がなければ、私はショスタコーヴィチの作品と、底に流れる魂というものに触れることはなかったのです。

さて、今回の演奏会の曲目は以下の通りです。

�@交響詩「十月」作品131
�A映画音楽「ニュー・バビロン」作品18より 戦争 パリ ヴェルサイユ
�B交響曲第8番作品65

勿論、オール・ショスタコーヴィチプログラムです。このプログラムを見るだけで、さすがダスビだなあと思います。恐らく、1プロで取り上げる作品など、海外のオケでもなかなか演奏会で取り上げることはないでしょう。作曲者の祖国ロシアのオケなら、かろうじて・・・・・ってところでしょうか。

まず、交響詩「十月」です。作品番号からして晩年の作品で、1967年に作曲されました。ロシア革命50周年を記念した作品です・・・・・・

しかしですよ、ショスタコーヴィチがいくら社会主義者だったからと言って、スターリン時代に抑圧を受け、それが幾分「緩和」した時代に、では素直に革命50周年の喜びを表現するかと言えば、そうは簡単ではありません。たとえそれば自由主義陣営だったとしてもです、私達の周りには様々な理不尽なことが転がっているはずです。それを考えてみましょう。皆さまでしたら、おいそれと喜びを表現できますか?傷ついたままで・・・・・

ですから、この作品はなかなか筆が進まなかった作品で、ようやく進んだのは、ショスタコーヴィチ自身の若き日の映画音楽作品である「ヴォロチャーエフ要塞の日々」から旋律を使おうと決めた時からでした。

さて、その映画音楽なのですが、実は非常に面白い旋律でして、私は聴いていて聴いたことがある旋律が出てきたと思っていたのがそれだったのです。その聴いたことがある旋律とは、やはり映画音楽である映画「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」あるいはテレビ版の「宇宙戦艦ヤマト2」で使われている、白色彗星帝国のテーマだったのです。

https://www.youtube.com/watch?v=kiRA1mub_Yk
(リンクが切れて居ましたら申し訳ありません。「youtube 宇宙戦艦ヤマト 白色彗星帝国 テーマ音楽」で検索してみてください。)

それに、「十月」で使われているその旋律の下となった「ヴォロチャーエフ要塞の日々」は、シベリア出兵における日本軍との戦いを描いた映画なのです。その中でパルチザンを表現したものでした。

実は重要なのは、その「パルチザン」という部分であると、私は考えています。まあ、日本という部分もまったくとは思いませんが・・・・・あまり関係ないでしょう。それを無理やり関係させようとするのは余りにも私達日本人の自意識過剰だと思います。とはいえ、おそらくヤマトのを作曲した宮川氏は、関係を付けているような気がしますが・・・・・・

それは別の機会に触れるとして、パルチザン第二次世界大戦で対独戦でも活躍しましたし、またロシア革命でもその萌芽とも言える人たちが蜂起したことを考えれば、ショスタコーヴィチパルチザンの旋律を使おうと考えたのも理解できます。おそらくそれしか、権力側と自らの立場に合うものはなかったものと思われます。

それを十分に理解してか、ダスビはアインザッツが強い!しかも、アンサンブルは何時もながら秀逸。ダスビは寄せ集めではなく、年1回の演奏会に向けて練習する常設のオケです。それがなせる技なのでしょう。演奏者が感情移入しつつも、きちんと冷静さを失わないその姿勢は、客席にいてもビンビン伝わってきます。全てのパートが全ffであっても、それがごちゃごちゃせずに、きちんと塊となって迫ってくるのは、圧巻です。

次の「ニュー・バビロン」は音楽はうって変わって、和やかさや茶目っ気すらありますが、戦争を描いたものもありますのでシリアスな面もあります。が、それを完全に楽しませてくれました。

というのも、私達聴衆には手拍子させますし、オケの団員には寸劇を指せるなど、遊び感覚に溢れる演奏だったのです。それは、ニューバビロンという作品故でありましょう。

映画「ニュー・バビロン」の舞台は1871年パリ・コミューン下のパリです。いかにもソ連が採り上げそうな題材ですが、二人の監督トラウベルクとコージンツェフは人物の感情や表情に合わせた音楽を欲しました。つまり、人間ドラマという側面を強調したかったと言えます。その作曲家として、まだ音大出たてのショスタコーヴィチに白羽の矢を立てたのでした。

作曲は1929年。当時の映画は無声映画であり、音楽は即興で舞台でオケが演奏していた時代です。その音楽は必ずしも専用に作曲されたわけではなく、適当に持ってきて合すことが日常茶飯事でした。二人の監督は「エキセントリック実験工房」を主宰していただけあり、そういった映画とあっているか定かではない音楽では不満だったのです。そのため、まだ若いショスタコーヴィチが選ばれたのでした。

人間模様ですから、必ずしも悲惨な場面だけではなく、むしろ社会主義プロパガンダという側面を持っていたからこそ、ブルジョワジーを笑い飛ばす場面すらあります。そういった作品とそれに連動した音楽が持つ特徴を、寸劇で表現し、それに私達聴衆も巻き込んだと言う訳でした。

ダスビはショスタコの映画音楽を多くはないですが取り上げています。ダスビがそれほど多くないくらいですから、我が国ではショスタコーヴィチのライフワークの中で映画音楽が重要な位置を占めているにも関わらず、その政治性故演奏頻度が少ないのが現状です。ですから、寸劇でもってまるで映画を見ているかのような感覚を追求したと言えます。これは大変面白かったです。オケの団員が立ち上がり演奏するさまも良かったと思います。思わずニヤリって感じではありますが、まるでホールが映画館になったようでした。

そして、最後に交響曲第8番です。これは以前、神奈川県立図書館のコーナーで作品はご紹介していますから作品紹介は省きますが、作品が持つ悲愴さや、その彼方にある希望などが、存分に表現されていたのは本当に素晴らしかったと思います。

まず、第1楽章の低音弦楽器群の出だしは重くそして荘重で、悲劇がすでに起こっていることを聴衆に知らせ、悲劇の地平におろすには十分でした。とにかく毎度のことでアンサンブルは素晴らしく、私達を曲が持つ世界へとぐいぐい引き込んでいきます。

まるでショスタコーヴィチの慟哭とも言えるこの作品、とくに圧巻は第3楽章以降であり、第3楽章冒頭はとにかく凶暴で、おどろおどろしく、戦争という暴力が持つ不条理を、これでもかと表現されていました。ダスビは本当にその点素晴らしいと思います。

ffの部分はもう音が塊となって四方八方から飛んできます。それゆえに、作曲者の想いや演奏者達の感情が此方にも伝わってくるようで、最後静かに終わった時には感動でホールがつつまれ、なかなか拍手が始まらないくらいでした。しかし、万来の拍手!情熱が前面に押し出されているにも関わらず、冷静さを微塵も失わないそのバランス感覚は、毎度舌を巻きます。

こうなると是非ともショスタコーヴィチ交響曲は取りあえず全曲やっていただきたいなと思います。まだ第14番が演奏されていないので、それを希望します。

また今回はプレコンサートも行われましたが、残念ながら私は間に合うことが出来ませんでした。ショスタコーヴィチ室内楽も素晴らしいだけに、これは継続してほしいです。

さて、ダスビはコンサート会場で以前の演奏会のCDを販売しておりますが、「今月のお買いもの」コーナーで取り上げたいと思います。その時にまた、ショスタコをかたることにいたしましょう。また来年も行けますように!





聴きに行った演奏会
オーケストラ・ダスビダーニャ 第22回定期演奏会
ドミトリー・ショスタコーヴィチ作曲
交響詩「十月」作品131
映画音楽「ニュー・バビロン」作品18から
「戦争」
「パリ」
ヴェルサイユ
交響曲第8番作品65
長田雅人指揮
オーケストラ・ダスビダーニャ

平成27(2015)年2月8日、東京豊島、東京芸術劇場コンサートホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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