かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オーケストラ・ダスビダーニャ第30回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年2月12日に聴きに行きました、オーケストラ・ダスビダーニャ第30回定期演奏会のレビューです。

今回で30回を数える、オーケストラ・ダスビダーニャの定期演奏会。私は2012年の第19回から足を運んでいますが、今年のメインはその第19回と同じ、ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」。

オーケストラ・ダスビダーニャは、ショスタコーヴィチを中心に演奏するオーケストラです。今年もブックレットの冒頭に「ショスタコーヴィチ専門ではない」という文言が書かれていましたので、相当戸惑っているのだと思います。私自身もそのあたりは慎重にしたいと思います。確かに、私が足を運び始めた第19回では、伊福部昭外山雄三が取り上げられましたし・・・

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このエントリで、私も「専門」と書いてしまっていますが、それが間違いなんです。あくまでも「中心に」なんです。とはいえ、私の記憶が確かなら、第20回以降はショスタコーヴィチのみを演奏しているはずです。まあ、ショスタコーヴィチの音楽を愛してやまない人たちなので・・・

今年の第30回が「レニングラード」なのは、偶然なのかそれとも社会状況を鑑みてなのか・・・節目ということはあるのかもしれません。オーケストラ・ダスビダーニャは何年か先のプログラムをまとめて選曲するそうですが、そのタイミングがちょうど一昨年あたりだったのかもしれません。ちなみに、オーケストラ・ダスビダーニャはショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」を演奏するために設立された、一回限りのはずだった団体です。しかし、第2回を始めてしまったことから、今までがあるそうです。おそらく、第16回あたりからmixiのマイミクさんが感想を日記にしてアップしており、私はその方の影響で足を運び始め、それが前回第7番を演奏した第19回でした。

今年は、その第7番を始め、以下の曲が演奏されました。

オール・ショスタコーヴィチ・プログラム
①祝典序曲作品96
②喜歌劇「モスクワ・チョリョームシキ」による組曲
交響曲第7番「レニングラード

1曲目の祝典序曲は、ショスタコーヴィチが1954年11月の革命記念日のためにボリショイ劇場から急遽依頼された作品で、わずか数日で書き上げた作品とされていますが、それ以前から温めていたのではという記述が、ブックレットにはありました。もしかするとというところがショスタコーヴィチにあったのかもしれません。祝典序曲というだけあり、壮麗な金管のファンファーレや、金管の別動隊(バンダ)がいたりと、確かにゴージャスです。今回の演奏会でもホール左手舞台袖上の客席に別動隊が途中から陣取り、素晴らしいファンファーレを聴かせてくれました。そもそもダスビはうまいんですが、今年は特に金管が素晴らしい!トレーナーから「歌うように。失敗してもいい。単なる強い音はいらない」と指導されたそうで、確かにその成果は出ていたと思います。いきなり聞かせてくれます。

2曲目はいわゆるオペレッタの音楽を組曲として再構成したもの。「モスクワ・チョリョームシキ」は架空のモスクワ郊外のニュータウン。そこで巻き起こる新居を巡る珍騒動を描いたもの。そんなものにショスタコーヴィチが作曲するのか?したんです!本人はあまり乗り気ではなかったようですが、実際には映画音楽に長けたショスタコーヴィチらしい、軽妙かつシリアスな音楽が存在します。組曲にまとめたのは別人ですが、最初の「モスクワを突っ走れ!」以外はダンス音楽。とはいえ、ショスタコーヴィチの作曲なので踊るというよりは諧謔的。ただ、ダンスというのは一つの表現ですから、喜劇を装飾するのに都合がよかったのでしょう。ある意味ショスタコーヴィチらしい作曲だと思います。これをです、やはりショスタコーヴィチを愛してやまない団員たちが全身全霊、楽しんで演奏するんですよね~。ダンスはもうこれで踊れるの?という音楽なので笑い飛ばすというか悩みまくるような演奏。それをしっかりとしたアンサンブルとアインザッツで表現するんですから、もうメジャーレーベルデビューしていいと思います。

休憩をはさんで、いよいよ「レニングラード」。私は第19回のCDを持っており、それをflacリッピングしてスマホに入れておりますので、それを聴きながら会場に向かいました。第19回の時は前年が東日本大震災だったせいか、若干不安定な部分もあったのですが(それでも素晴らしいですが!)、今回はそんな部分がみじんも感じさせません!まるでショスタコーヴィチが生き返りよみがえったかのように、美しく歌い、かつ吠える金管に、激しい弦楽器。第1楽章の主題が提示されて盛り上がっていく部分も神がかり的です。ホールが残響で震えるんです。これは先日東京ユヴェントスフィルハーモニーでもミューザ川崎シンフォニーホールで経験しましたが、今回もまた同じように床や席がビリビリと震えるのを感じます。ちなみにホールは毎度おなじみの東京芸術劇場コンサートホール。

実は私自身、東京芸術劇場ではベートーヴェンの第九を歌ったことがあり、このホールもまた自分の声は返ってきません。残響の長いいわゆる「いいホール」というのは軒並みそのようなものです。その中で、見事に美しく強い金管は本当にほれぼれします。ショスタコーヴィチはこの第7番を書いたとき「皆で歌ってほしい」と言ったそうですが、まさにオーケストラが全体として歌っており、そして叫んでいるのです。まさにオーケストラが人間そのもの。オーケストラは人間が演奏するのだから当然ではないかと思われるかもしれませんが、しかし人間そのものではない楽器に歌わせるのは意外と難しいです。私自身、レベルとしては低いですが中学校でリコーダーアンサンブルをしたとき、アンサンブルを合わせるだけで大変でした。そのうえで歌わせるんですよ?どれだけ大変なのか、私も経験者なのでよくわかります。まだ歌うほうが数段ましですし、だからこそ私はずっと合唱団だったのですから。

第19回に比べれば今回のほうが数段素晴らしい演奏で、なぜにCD収録をやめてしまったんだ!と思います。この演奏は記録に残しておくべきだったと思います。プロオケで見事な演奏はいくらでもありますが、正直今回のオーケストラ・ダスビダーニャの演奏に勝るものは数年出てこないでしょう。しっかりとした技術と気持ちが合わさった、見事な合体が、名演と呼べる演奏となったと言っていいでしょう。私もチャンネル作りましたので、オーケストラ・ダスビダーニャもYouTubeチャンネル作りません?この演奏はもっと広く知られるべきだと思います。是非ともご検討を!

朗々とした金管が最後まで続き、最後を盛り上げましたので、終演後の万雷の拍手は当然だったでしょう。他の楽器も本当に気持ちがこもっており、私自身も魂が震える演奏でした。また来年も素晴らしい演奏が聴けますことを!

 


聴いて来たコンサート
オーケストラ・ダスビダーニャ第30回定期演奏会
ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ作曲
祝典序曲作品96
喜歌劇「モスクワ・チェリョームシキ」による組曲(A.コーナル編曲)
交響曲第7番「レニングラード」作品60
長田雅人指揮
オーケストラ・ダスビダーニャ

令和6(2024)年2月12日、東京豊島、東京芸術劇場コンサートホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。