かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:アルブレヒトが振る「伝説」と「フス教徒」

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、ドヴォルザークの「伝説」と「フス教徒」を収録したアルバムをご紹介します。指揮はゲルト・アルブレヒト管弦楽チェコ・フィルハーモニー管弦楽団です。

チェコ・フィルだとスプラフォンということが多いのですが、これはキャニオンのはずです。ただ、もともとはスプラフォンかもしれませんね。ただ、そのルートだと普通はデンオンのことが多いですけれど・・・

ゲルト・アルブレヒトと言えば、我が国では読売日本交響楽団を指揮したことでも有名ですが、チェコの人と思いきや、実はドイツ人。故に、日本のオーケストラとは気が合ったのかもしれません。いいにつけ悪しきにつけ、日本のオーケストラはドイツの流れを汲んでますから。

ja.wikipedia.org

アルブレヒトの指揮する演奏は、結構堅実で私は好きです。ただ、ベイスターズファンなので最近はあまり読売日本交響楽団の演奏を聴かなくなりましたので・・・(なぜって?読売ジャイアンツの親会社である読売新聞の資本だからです。かつては伝統の一戦と言えば阪神対巨人ではなく大洋(現横浜DeNAベイスターズ)対巨人を指しました)

とはいえ、アルブレヒトの堅実かつ情熱的な解釈は好きですし、さらにこのアルバムではオーケストラは私の好きなチェコ・フィルハーモニー管弦楽団チェコ・フィルはスラヴ色が強いオーケストラですが、一方でドイツ的な部分もあります。ただ、チェコという国がドイツに近いがゆえに、いろんな歴史を刻んできたとも言えます。

このアルバムでは、チェコ的な二つの作品が収録されています。一つが「伝説」、そしてもう一つが序曲「フス教徒」。伝説はチェコの旋律をふんだんに使った、美しくかつ肩の凝らない曲です。そもそもはピアノ連弾曲として作曲されましたが、後に管弦楽へと編曲されています。そのため、ブルクハウザー番号は二つ付されており、ピアノ連弾版がB.117、管弦楽版がB.122です。もともとがピアノ曲なので珍しくピティナにも掲載されていますが、珍しくピティナはブルクハウザー番号で間違いを犯しています。B.122で記載されていますが正しくはB.117です。ブルクハウザー番号はドヴォルザークの作品を年代順に整理したものなので、早く成立したピアノ連弾版を取り上げるのなら当然B.117なのです。

ja.wikipedia.org

enc.piano.or.jp

ja.wikipedia.org

このアルバムに収録されている管弦楽版こそが、B.122です。CDの記載にはブルクハウザー番号は記載されておらず作品番号だけですが、ブルクハウザー番号まで記載するなら正確さを期す方がいいと思います。分からないならあいまいな作品番号だけでいいと思います。

さて、アルブレヒトはドイツ人ですが、オーケストラはチェコ・フィルです。そのくみあわせのせいなのか、ドイツ的な堅実さの中に、情熱的な演奏が混じっているのがこのアルバムの特徴です。特に二つの曲はドヴォルザークですから、チェコの香りたっぷり。しかも、2曲目の「フス教徒」はドヴォルザークの愛国的精神が反映された作品です。アルブレヒトのタクトについ情熱的過ぎて熱い想いすら感じられる演奏になっています。スメタナの「わが祖国」にも使われているコラールが使われていることにそれが現れています。そして、そもそもフス教徒とは、14~15世紀にチェコで勃興したカトリックに対する宗教改革運動を扇動した人々で、チェコカトリック司祭ヤン・フスを始祖とします。

www.yung.jp

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

この運動はチェコのみならずポーランドへと広がり、自治まで獲得しますが、後にハプスブルク家の勢力下になり、弾圧されてしまいます。オーストリアハンガリー、そしてチェコは歴史的にも色々争いなどがある地域です。その歴史を描いた曲を、ドイツ人のアルブレヒトが振りチェコ・フィルが演奏するということに、その場ではいろんな感情や想いが交錯したのでは?と思います。ドイツもナチス・ドイツの時代にチェコに侵攻していますし。ただ、その罪滅ぼしか、このアルバムではチェコ色のみになっています。むしろアルブレヒトの堅実なタクトだからこそ、のびのびとチェコ・フィルは演奏したのかもしれませんし、アルブレヒトもひたすら堅実な解釈に努めたのだと想像します。

ただ、その関係に至るまで、歴史の流れという時間を要しました。その時間軸の間に様々な悲劇が起こり、犠牲になった人も大勢います。それがないことが一番ですが、時間が解決してくれたと考えていいのではと思います。時間が経ったからこそ、境界線が引けるようになったと言えましょう。その境界線が引けたことで実現した、素晴らしい演奏だと思います。

 


聴いている音源
アントニン・ドヴォルザーク作曲
伝説作品59
 第1番ニ短調
 第2番ト長調
 第3番ト短調
 第4番ハ長調
 第5番変イ長調
 第6番嬰ハ短調
 第7番イ長調
 第8番ヘ長調
 第9番ニ長調
 第10番変ロ長調
序曲「フス教徒」作品67
ゲルト・アルブレヒト指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。