かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:バルトーク ピアノ作品集

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、バルトークのピアノ作品を収録したアルバムをご紹介します。

バルトーク・ベラはハンガリーの作曲家で、民俗音楽の採集とその旋律を使った作品で有名です。

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ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」を発表したことに対して、バルトークがドイツ音楽をまねるなんてドイツと戦っているのにおかしいという批判をしたことでも有名ですが、一方でバルトークはドイツ音楽の強い影響下にあり、特に尊敬する作曲家はベートーヴェンであることも実はよく知られています。この批判は、あくまでもナチスが嫌いだったバルトークの琴線に触れての発言であり、ちょっと特殊な環境におけるナーバスな心情を吐露したものと解釈すべきだと思います。

そもそも、民俗的な音楽を想像したのはドイツだったことは忘れてはなりません。その歴史をバルトークが知らなかったとは思えません。ドイツが嫌いなのではなくナチスが嫌いなのだという側面で捉えるべきです。当時、ナチス・ドイツ国威発揚のためにベートーヴェン交響曲を盛んに使っていましたから・・・

さて、このバルトークが作曲したピアノ曲は、結構民俗的な色が濃いのですが、とはいえ、ドイツ音楽の影響下にもあります。揺れるリズムとかいわれますがピアノ作品に関してはあまり聴かれませんし、少なくともこのアルバムに収録された作品のほとんどはリズムが揺れることは少なく、むしろピアノを打楽器的に使って一定のリズムの中で民族色を付けているという印象があります。

enc.piano.or.jp

特にそれが色濃いのが、ピアノ・ソナタです。明らかにピアノの鍵盤をぶっ叩いているかのような音は、まさにリズムが最大限強調されている一方で、それほど不協和音に支配されているわけでもありません。適度な不協和音と強烈なリズムで生命の躍動を表現しているように聴こえます。ピアニストの演奏がさらに強調しているようにすら感じます。

同じ時期にドイツでも、カール・オルフが実現させており、それが「カルミナ・ブラーナ」だったりします。そう考えると実はバルトーク自身もかなりドイツ音楽の影響が強いわけです。ただ、バルトークはそのうえであくまでも民俗的な素材を大事に作曲をした人だと言えますし、このアルバムはその色がとても濃いものです。バルトークの芸術とは?と考えるうえで一つの判断材料になり得るアルバムでしょう。そのうえで、収録されている作品のどれもが、生命を感じます。

それは、演奏しているのがコチシュということもあるでしょう。ハンガリーのピアニストで演奏を聴いたことがあるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

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下記に曲目を挙げておきますが、ピアニストの名称はCDに準拠しているので、姓名が逆になっていることをあらかじめお断りしておきます。このアルバムが収録されたのは1975年。なのでまだ西欧風に名前が前で苗字が後になっています。現在では現地が日本と同じように苗字が先で名前があとなので、コチシュ・ゾルターンと表記されるのが一般的です。いずれにしても、東欧系の作曲家の演奏では名演も多いピアニストでもあります。そして、この録音はロケーションが先週取り上げたシベリウスを演奏した館野泉氏と同じ荒川区民会館なのです。

ykanchan.hatenablog.com

この荒川区民会館は本当に意外なほど音響がいいホールなんです。つくりは多目的ホールなのですが、クラシック音楽には比較的フィットしたホールだと私は思っています。特にTuneBrowserで192kHz/32bitにリサンプリングして聴きますと、実に残響がよくかつライヴ感満載なのです。マイクが近いということもあるのかもしれませんが、いずれにしても日本の多目的ホールの割にはとても音響がいいので、満足できるアルバムだと思います。実際わたしもMAXフィルハーモニー管弦楽団の演奏で2度経験していますが、本当にいいホールなんです。細かいところではやはり多目的ホールだよねと感じる点もありますが、とはいえ、それほど問題はないかなと思います。これは録音なので。ライヴだとちょっと物足りないかもしれませんが・・・

それでも、そもそも躍動する生命を感じるような作品と演奏ですので、リズムに乗ってしまえば結構問題ないというのが私の印象です。よくリズムなんて芸術には関係ない!とか言われるのですが、音楽の三要素とは、旋律とリズムと和声です。どれもクラシック音楽が音楽である以上、欠くべからざるものであり、仮に欠いていた場合、それには明確な意味があるはずです。そこにメッセージが込められているかもしれません。それはむしろ音楽にはそもそもリズムが要素の一つとして欠くべからざるものだからです。つまり、あえてリズムを感じさせない、というわけです。そこを理解し味わうのが、本来クラシック音楽が芸術である証なのではないでしょうか?

バルトークの音楽はその意味では、芸術とは何か?を私たちに問いかけるものであり、私たちがどう芸術を捉え、向き合うのかを問題として提起していると言えるでしょう。そして、コチシュの演奏は、そのコチシュもまた問いかけていると言えるのではないでしょうか。

 


聴いている音源
バルトーク・ベラ作曲
アレグロ・バルバロSz.49
民謡による3つのロンドSz.84

3つのハンガリー民謡Sz.66
組曲 作品14Sz.62
ピアノ・ソナタSz.80
ルーマニア民俗舞踊Sz.56
古い踊りの歌~15のハンガリー農民の歌Sz.71より
ゾルターン・コチシュ(ピアノ)

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