かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:館野泉が弾くシベリウス

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、シベリウスのピアノ作品集を取り上げます。

シベリウスと言えば、交響曲だったり、管弦楽作品などが有名ですが、ピアノ曲もけっこう書いています。以下はピティナですが、全部が載っているわけではありませんが、載っているだけでも結構作品が残されていることが分かります。ちなみに、今回は数が多すぎますので、解説はピティナに譲ります。収録曲はほとんど載っていますので。

enc.piano.or.jp

標題がついている曲は、聴いていますと私たちのイメージとはちょっと違う部分もあります。おそらくですが、単にそのテーマということだけではなく、例えば「「樹」の組曲」は木そのものではなく、その風景や印象を表現していると考えるほうが適切だと思います。その意味では、和声的には古典的なものが多いですが、ドビュッシー印象主義の影響もあるように思います。もともと、法学を学んでいた人であるせいか、楽派に囚われない部分があるように思います。民族主義的な印象があるシベリウスですが、彼自身はとても繊細な人で、ゆえに人生のなかでは酒におぼれた時期もあります。その人生を救ったのは、明らかに音楽であったことでしょう。

そのシベリウスを演奏するのは、館野泉。実は、演奏が館野泉だったからこそ借りてきたという側面があります。そしてロケーションが、荒川区民会館。実は、MAXフィルハーモニー管弦楽団が新たにホームグラウンドにしたホールです。昨年と一昨年と、私自身荒川区民会館ベートーヴェンの第九を聴いています。このホール、多目的ホールの割には残響がよく、クラシック音楽向きだと思っています。実際、この録音でも、しっかりとした残響が、作品を彩っています。

館野泉の演奏は、奇をてらうことなく、しかし情熱的な部分も兼ね備えたものです。ロマンティシズムにあふれつつも、その作品が持つ精神に迫っていくかの様。シベリウスの繊細さを大事に演奏しているように感じるのです。どうしても私たちはシベリウスというと「フィンランディア」のイメージで、壮大かつ雄大なものを考えてしまいがちなんですが、そもそもはシベリウスは繊細な人であり、ゆえに作品もかなり繊細なものが多いです。交響曲にしてもそうなのですが、そこにフォーカスしない演奏も結構あるので・・・政治的なスタンスよりもまず大切なのは、一人の人間であるということであるはずで、演奏であればなおさら大事にされねばなりません。

館野泉の演奏は、シベリウスという作曲家を人間として捉え、そのうえで作品と向き合った結果が反映されていると言っていいでしょう。ピアニストとなるとつい海外の演奏家を想起して、讃美してしまいがちなのですが、日本人にも素晴らしい芸術家がいることを忘れてはならないと思います。こういうと、では海外の芸術家は排斥するんですかと言われるんですが、そんなことを私はしませんししたくもありません。むしろ、海外の芸術家をあがめている人の方がよほど日本人芸術家を排斥していませんか?と問いたいところです。私は海外であろうが日本であろうが、いいものはいいと言っているにすぎませんし、それが芸術を鑑賞するうえで大切な点なのでは?と思います。私がそういうスタンスだから余計に、館野泉の演奏に共感するのかもしれません。その点でも、館野泉は優れた芸術家だと私は評価しています。そんな時代が続くことを願っています。

 


聴いている音源
ジャン・シベリウス作曲

ロマンス 変ニ長調作品24-9(ピアノのための10の作品集」より)
「樹」の組曲~5つのピアノ小品集より
 ピヒラヤの花咲く時 作品75-1
 孤独なモミの木 作品75-2
 ポプラ 作品75-3
 白樺 作品75-4
 樅の木 作品75-5
ワルツ 作品34-1(「10のパガテル」より)
踊りの歌 作品34-2(「10のパガテル」より)
マズルカ 作品34-3(「10のパガテル」より)
ロンドレット 作品40-7~「抒情的瞑想」(「10のピアノ小品集」より)
即興曲第5番作品5-5(「6つの即興曲」より)
カプリース(奇想曲)作品24-3(「ピアノのための10の作品集」より)
ソナチネ第1番嬰ヘ短調作品67-1(「3つのソナチネ」より)
ソナチネ第2番ホ長調作品67-2(3つのソナチネ」より)
2つのロンディーノ 作品68
 ロンディーノ第1番嬰ト短調作品68-1
 ロンディーノ第2番嬰ハ短調作品68-2
あやめ 作品85-3~「花」の組曲(「5つのピアノ曲集」より)
北方のリンネ草 作品76-11(「13のピアノ小曲集」より)
金魚草 作品85-4~「花」の組曲(「5つのピアノ曲集」より)
つりがね草 作品85-5~「花」の組曲(「5つのピアノ曲集」より)
村の教会 作品103-1(「5つの性格的小曲集」より)
ロマンティックな情景 作品101-5(「5つのロマンティックな小品」より)
館野泉(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。