かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:新しい学校のリーダーズが世界でバズるのは、バッハだからである

音楽雑記帳、今回は先日取り上げました「オトナブルー」を歌う、新しい学校のリーダーズを考察したいと思います。

新しい学校のリーダーズについては、2月11日のエントリで触れましたが、もう一度公式サイトを上げておきましょう。ついでに、ウィキペディアの頁もあげておきます。

leaders.asobisystem.com

ja.wikipedia.org

「オトナブルー」に限らず、彼女たちの歌には必ずダンスが付きますが、そのダンスも歌を遮るようなものではないのも特徴です。特に「オトナブルー」は、踊りながらも息を切らさず歌えるダンスになっているのも特徴で(例えば、AKB48はダンスを見せる代わりに口パクだったりしますよね。それが新しい学校のリーダーズにはありません)、キレッキレのダンスをしていても、自分たちは歌手でありアーティストであるという点を重要視していることは明白です。この点が私をして嵌らせた理由です。

それは、実はある作曲家と共通します。バロック音楽の大家であり集大成である、ヨハン・セバスティアン・バッハです。古典派以降の大作曲家たちで鍵盤楽器をあやつる作曲家たちはつねに敬意を表し続けた、ヨハン・セバスティアン・バッハ。それは、単に鍵盤楽器というだけではなく、その芸術にあると私は思います。その典型が、バッハの作品の舞踊性です。

例えば、バッハの「組曲」は舞曲が中心であると言う点が当たるでしょう。バロックダンスを器楽曲や声楽曲に落とし込み、人間の喜怒哀楽を表現する。とくに、喜びを表現する部分においては必ずと言っていいほど舞曲をバッハは採用しています。

同じ手法が、新しい学校のリーダーズでも取り入れられているように見えます。代表曲「オトナブルー」を例にとれば、昭和な雰囲気がふんだんに散りばめられていますが、音楽そのものは実はダンスチューンが基礎です。実は、「オトナブルー」を作曲したyonkeyは自身のグループ「Klang Ruler」ではヴォーカル兼キーボードですし、それ以前の楽曲を作曲したH ZETT Mもキーボードで、つまり鍵盤楽器なのです。そういった人たちが、バッハの存在が頭にないと言うのは、ちょっと不自然だと思います。しかも、H ZETT Mはそもそもピアニストでもあります。

ja.wikipedia.org

ja.wikipedia.org

そんな両人が作曲家として名を連ねる新しい学校のリーダーズに、バッハ以来の伝統である舞踊性という側面がないと言うほうが不自然でしょう。いつの時代も、人間は躍り続けてきました。流行るジャンルがいかに移り変わろうとも、ダンスという躍ること、そしてその要素を持った舞踊性のある音楽は好まれ続けてきました。19世紀の後期ロマン派においても、民俗舞踊がふんだんに音楽に使用され、特に国民楽派においてはパトリオティズムの中で民俗舞踊は楽曲を特徴づけるものとして採用されました。その延長線上に、新しい学校のリーダーズは確かにいるわけです。その音楽が現代的なダンスチューンであるだけです。そして、どの曲もメッセージ性を持ってもいます。これがバッハや、あるいは後期ロマン派からの伝統の上にないとどうして言えるでしょうか。

なるほど、「オトナブルー」において、SUZUKAが「私を見つけてー」と歌う部分がBマイナーなのは、これで腑に落ちます。鍵盤楽器をあやつる人間だからこそ、その歌詞においてロ短調ミサを念頭に置いて、Bマイナーを選択したとすれば、自然なわけです。日本語の歌詞に現代的なダンスチューンがあり、しかもそこにはクラシック音楽の基礎がある。そりゃあ、言語や国境、民族を超えて支持され、バズるのは当然だと言えましょう。

クラシック界隈で、若い人が聴きに来ないと嘆く向きが多いのですが、クラシック音楽の魅力を若い人にいかにして伝えるかという視点で考えたことはあるのでしょうか?それがないと、若い人はどこに共感できるのかがわかりません。いや、こんなに他のジャンルとも近いんだ、むしろ私たちが聴いている音楽に全ての基礎があるんだと言えば、若い人でもクラシック音楽は聴くと思います。実際、学生オケなどでは若い人をたくさん見かけます。聴いていないわけではないのです。私たちの伝え方に問題があると考えるほうが、私は建設的で広がりがあるように思います。その問題提起すら、新しい学校のリーダーズは行っているように私には見えるのです。彼女たちのコンセプトである「模範的なヤツばかりが評価されるこの時代、くだらない不寛容社会から、個性と自由ではみ出していく」は、私たちクラシックファンこそ、噛みしめる必要があると思います。

 


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