かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:「オトナブルー」を推理する。歌詞が先?音楽が先?

音楽雑記帳、久しぶりにクラシック音楽以外を取り上げます。「新しい学校のリーダーズ」の「オトナブルー」を取り上げます。

新しい学校のリーダーズ」は、昨年の紅白歌合戦にも出演し、紅組トップバッターの栄誉を得るほど、今人気の女性4人グループです。今や、その人気は世界中!

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「自称青春代表」と宣誓し、「模範的なヤツばかりが評価されるこの時代、くだらない不寛容社会から、個性と自由ではみ出していく」をコンセプトとしています。

え?そんなグループになぜ?と思われるかもしれません。私自身、令和5(2023)年までは、彼女らのことを全く知りませんでしたが、歌番組の番宣などで名前だけ知っているという程度です。しかも、実家は最近紅白を見ませんで、大みそかは「年忘れ日本の歌」ばかり・・・なので、紅白の鮮烈な舞台も見ることはなかったのです。今年に入って、YouTuberのカコ鉄さんのメンバーシップの方から、年齢関係なく好まれていると教えていただき、彼女らのYouTubeを見て、嵌りました・・・なんと、クラシック音楽の伝統の上にいることか!

その衝撃を受けた曲が、今回ご紹介する、彼女らのもはや代表作となった、「オトナブルー」です。

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THE FIRST TAKEの動画はこちら。ダンスを見るなら、こちらを。とにかく、ダンスがキレッキレです!このほうがライヴにそっくりです。

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冒頭、ヴォーカルのSUZUKAの声が魅力的!どことなく大人の雰囲気。確かに、現在は大人なんですが、実は「オトナブルー」が発表されたのは2020年。この時、ヴォーカルのSUZUKAは18歳なんです。リーダーのMIZYUが22歳と、ようやく大人という感じの年齢の作品なんです。しかも、この下手すれば妖艶な曲の作詞は彼女ら自身なんです。リーダーMIZYU以外全員18歳という年齢でこの曲を書いているんです。そこにびっくりです。

昭和歌謡のようなイメージを持ちつつ、キレッキレのダンス、そしてヴォーカルSUZUKAの大人で太い声。他の3人の少女のような声とのコントラストが絶品!しかし、この曲はそれだけではないんです。

実は、JPOPや歌謡曲では定番ですが、転調が激しいのですが、その中で、SUZUKAが「私を見つけて―」と叫ぶ部分が、Bマイナーなんです。以下は「オトナブルー」を解析した動画です。

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和声は基本的にはクラシックというよりはブルーノートなど、ジャズやロックといったジャンルを模範とした、まさに現代のJPOPなんですが、私はSUZUKAの「私をみつけて~」という部分がBマイナーという点に、クラシック音楽の伝統を感じたのです。それは、バッハのミサ曲ロ短調

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バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏を例に出しましたが、その「キリエ」がロ短調。つまり、Bマイナー、です。ドイツ語ではB-mollですね。「ロ短調ミサ」の「主よ哀れみたまえ」の部分と、「オトナブルー」のSUZUKAが「私をみつけて~」と懇願し叫ぶ部分。どっちもB-moll。この共通するような繊細な歌詞を、しかも下手すればどぎつい歌詞を、18歳で書くなんて、もう「新しい学校のリーダーズ」は天才です。素晴らしい才能が出てきたと思います。特にSUZUKAはもう最高です!

半音の使い方、「ねえー何を期待してるの~」から「そのうちじゃなくて今すぐがいいの」と歌うところのコード進行。これは意外な進行ですが、それがとても印象的。

そうなると、この曲、いったいどっちが先なんだ?と思いますよね。作曲?それとも作詞?

普通は作曲が先で作詞があとというケースが多いのですが、私はズバリ、作詞が先だと思います。そう判断する理由が、ロ短調ミサの「キリエ」と同じロ短調が、「私を見つけて~」の部分と共通するという点です。明らかに、哀愁、あるいは苦しみという部分を強調するために使われていると判断できます。その作詞に会う調性、コードを当てはめる。JPOPなら別に不自然なことではありません。そんな例がクラシック音楽であるのかと言えば、実はいくらでもあるんです。特にベートーヴェンは第九においても、第1楽章はニ短調を使っていますし、第4楽章は転調の嵐。連帯を歌いあげるためにコロコロ転調します。そのうえ、交響曲なので合唱団にとっては音の跳躍が激しい・・・「田園」では禁則潜り込みまでやってます。「第九」などはまさに、歌詞が先にシラーによってつくられ、そこにベートーヴェンが作曲したものです。

その歴史や事実を鑑みれば、「オトナブルー」は明らかに歌詞に対して作曲されている、つまり歌詞が先にありそこに作曲されたと考えていいわけです。「いや、冒頭は明らかに音節がおかしい」というかもしれませんが、それを言えば、「第九」の第4楽章、二重フーガの後の730小節~745小節の「Ihr stuerzt nieder Millionen? Ahnest du den Schoeper Welt!」の部分も一緒です。あれは歌いにくい。しかし、SUZUKAは「オトナブルー」の冒頭部分、どんどんうまく歌っています。最初でもうまいのに、さらに上を目指すその姿勢は、脱帽です。「新しい学校のリーダーズ」は9年も売れない時代が続きましたから。その中で積み上げてきた努力の結果が開いていると言えるでしょう。ダンスも作詞も自分たちでやるなんて、ベートーヴェンが生きていたら、さぞかし嬉しそうに目を細めることでしょう。

こう見ると、「オトナブルー」はそれ以前の作品、もっとさかのぼればクラシック音楽に範をとって作曲されていると考えていいでしょう。いろんな作曲技法を使って、彼女たちの作詞を一つの世界に作り上げていく。その才能は作曲も作詞もダンスも、超一流と言っていいでしょう。彼女たちから、目が離せませんよ。

 


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