かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

音楽雑記帳:新型コロナウイルス感染症罹患記

音楽雑記帳、今回は私自身の新型コロナに罹患したことと関連付けてお話をしたいと思います。

8月15日のことです。私は夜勤に向かうべく、昼頃には目が覚めていました。しかし、その前日くらいからなかなか起きられずにいました。

眠いわけでもなく、しかし起きられない。ようやく起きたのですが、体はとても重く、このまま出勤準備ができるとは到底思えない状況に陥りました。

自分で額に手を当ててみても特に高熱が出ているようには思えず、しかしとにかく体が動かないため、おそらく出勤が不可能であることを現場に伝えました。しかしこの時、すでに私自身は38度以上の高熱に侵されていることに全く気が付かないでいました。

現場からはどう考えてもおかしいから119番通報せよ、との指示をもらい、悩んだ末にその通りにします。そして救急車が来るのですが、その際自分で体温を測ってびっくり!38度も出ていることにようやく気が付いたんですね。しかもその時自分でも気が付かなかったのですが、あとから考えると現場に電話した時も119番通報した時もともに呼吸困難で言葉がとぎれとぎれなんですね。そりゃあ誰だっておかしいって思いますよね。

救急車の車内でPCR検査と酸素飽和度の検査。PCR検査はすぐ陽性反応が出て、罹患したことはわかったのですが、酸素飽和度が90を切っており、緊急入院と相成りました。入院先は武蔵野赤十字病院。看護師さんたちには本当にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げるとともに、新型コロナ病棟の看護師の皆さんの健康をお祈りしております。

酸素飽和度がかなり下がっていますから当然搬送時そして入院しても酸素チューブを外すことはできず、折角減圧個室に入るも一時はICUへ移され、そのまま酸素吸入器へつながれるや、という事態に。しかしすぐ容体が安定しICUにおいて酸素吸入までは必要ない(もちろん、酸素は強制的に吸わされてはいます)状態にまで落ち着いたため、一度は入った減圧個室に再び戻りました。

ここまでは全く音楽など聴けていません。そもそも入院する4、5日前から起きられずに音楽など聴けていません。ですのでほぼ1週間くらい、音楽は聴けずじまいだったのですが、救急車を要請して乗る、といった時に一応スマホを使うのに必要な一式はもっていく、という決断をしていました。これはなぜかと言いますと、少なくとも当日現場へ連絡をしなければいけなかったこと、そしておそらくそのあと仮に入院となれば、どこかで音楽を聴くフェーズがやってくるはずだと判断したためです。とにかくスマホの一式をもっていっておけば、あとは何とかなるはずだ、と。

法律的に、新型コロナウイルスに感染して発症し入院となった場合、面会謝絶になります。家族ですら離れて暮らしていて接触がないと言っても謝絶なのです。ですが入院している間に必要な備品は病院内で買うことができます。そのお金の工面だけを家族には頼みました(これは自分の現金ですら取り上げられるからで、クオカードへと必要な分だけ強制的に替えさせられます。しかし当時私は保有現金は底をついており引き出さないといけない状況だったため、家族に無心しました)。後はとにかく、自分の状況をスマホで報告することだけを考えていました。

当日入院したことになったことを現場に報告して以来、スマホに触れるようになったのはICUから減圧個室に戻ってから、です。LINEやFBなどで状況を報告して、そのあとは多少動画は見ますけれど、基本的には何もできません。テレビは見れます。ですが行動範囲はベッドの上だけだと言っていいくらいの範囲しか動くことができません。なぜなら酸素飽和度が下がっているために酸素を吸わないといけない状況に陥っているため、動いても差し支えない範囲でしか行動が許されないためです。

個室なので実はトイレもシャワーも洗面も専用で付いています。しかし使うことはできません。私たちは知らないうちにトイレなどへ行く、そしてそこで行為をするときに大量の酸素を使っているのです。しかしその時の私にとって、そのために必要な酸素はつながれたチューブから吸わないといけなくなっており、とてもトイレまで行くことはかないません。ではどうするのか?本当に恥ずかしい話なのですが、まさかいい大人になってから「おまる」を使うことになるとは、想像もしていませんでした。

そう!「おまる」です。あの赤ちゃんが使うやつです。ですがそれを使わない限り、便通をいたすのは無理です。新型コロナウイルスに罹患し入院レベルまで行くとそうなってしまうんです。それが最もつらかったと言っていいのでは?と思います。シャワーも使えないどころか許可すらされないんです。当然いろんなところが痒くもなり・・・・・

ひげも伸び放題で、どこぞの仙人か!という感じになります。小便は一時は尿瓶を使いましたが使いづらいため、おまるですることにさせてもらいました。もう羞恥心などありません。生き延びるためにはまだまだ酸素を吸っていないといけないフェーズでそんなことを考える余裕などありません。まずは生き延びる事。それが最優先課題です。

おかげさまで今現在までも味覚障害がないので、病院食もおいしくいただけたのは幸いだったと思います。多分食事をおいしくいただけていなかったら、「とにかく生き延びる!」と考えられたかは疑問です。これは本当にラッキーだったと思います。

ようやく安定してきてからは音楽を聴くことを考えます。幸い個室なので、スマホのスピーカーを使って音楽が聴けます。その機能を使って聴き始めるのですが、実は入院時私は食欲もなく、実際酸素飽和度を考えたときに食事ができる状態ではなかったため、2日間点滴となりました。栄養を摂る点滴と、肺炎治療のために流すステロイドの点滴と二つを必ず流していました。食事が摂れるようになってからはステロイドの点滴のみになりましたが、最初の1週間はそれを午前と午後の2回やるんです。これが強い薬でして、夜になっても寝れないんです。そうなるとそこまで音楽を聴き続けることになるんですが、スマホのスピーカーはインピーダンスの関係でかなり大きくしないと聞きづらく、いちど看護師さんに深夜に音が漏れているのでと注意を受けています。

それでも、音楽を聴いていないと本当に自分が苦しくて、気力を奮い立たせるためにも音楽、特にそのフェーズだとほとんどベートーヴェンの第九だけを聴いていました。しかしステロイド系の薬を使っているため、ところどころ音が飛んだりしているのに気が付くんですね。もっと言えば、その分聴けていないわけなんです、薬の影響で。それが落ち着くには最低点滴が1日1回にまで減らないと無理でした(それでも眠れないため、睡眠導入剤すら使っています)。その時点でようやく「音が飛んで聞こえる」状況は落ち着きました。

ようやく音楽をイヤホンをしてどんどん聴けるようになったのは、少なくとも酸素が据え付けの水素からチューブではなく、動くときだけ酸素ボンベにつないだチューブをつけるようになってから、です。つまりベッドの上では酸素チューブをつないでおく必要がなくなってから、です。こうなると洗面もできますしトイレも行けます。この状態になって初めてイヤホンを付けました。それまでは酸素チューブや姿勢(実は新型コロナウイルス感染症は重症であっても腹ばい姿勢を保てばかなり回復できることがわかってきています)を考えたとき、選択できなかったのですがようやくイヤホンを選択できることは私にとっては福音で、仮に深夜まで眠れなかったとしても音楽だけは聴くことができるためです。とはいえ朝方まで起きてしまうようなことがあったので、ナースセンターでモニタリングしている看護師さんの提案で、睡眠導入剤を使ってもいます。その時はすぱん!と音楽はそこで終わり!としています。寝る以上の回復方法をご存じの方がいらっしゃれば教えていただきたいくらいです。

そしてもっと一日中イヤホンをして聴けるようになったのは、パラドックスですが、大部屋へ移動になってから、です。大部屋へ移るということはウイルスが体の中からいなくなり、少なくとももう移動するときなどに酸素吸入が必要ないというフェーズであるからですが、勿論大部屋だと時間で消灯になりますけれども、そこまでは存分に聴けるわけです、音漏れさえなければ。音漏れだけを注意して存分に音楽を楽しんでいました。むしろ音楽を楽しめるようになったのは大部屋へ移動してからだったと思います。それでも一度2夜にわたって音楽を聴いても聴いても睡眠が浅く下手すれば起きていてしまう情況が続き、酸素飽和度が昼間89まで落ちてしまいます。そのためそこからは退院まで夜は睡眠導入剤の力を借りることにしました。当然ですが消灯以降音楽は聴けません。しかしそれでいいと思っていました。減圧個室の時同様、「生き延びる事」が最優先であるため、です。服用後30分くらいで記憶が無くなり、寝ている自分がいました。翌朝の酸素飽和度はしっかり90台を回復していました。やっぱりね、と。

さらに便通もなかなかなかったため、もう一度しっかりと腹ばい姿勢を午前、午後、夜の3つに分けて合計8時間ほど行いました。すると便通も催し、さらに痰などもどんどん出るようになって、自分が回復してきていることが実感できるのです。こうなると深夜まで音楽を聴いている必要はなく、むしろ夜はしっかり寝ることを心がけていました。そうすると朝目覚めてから聴く音楽がとても瑞々しく、楽しいのです。勿論腹ばい姿勢もとりながら、です。あの時程音楽が喜ばしい、楽しいと思ったことはなかったろうと思います。

よく、某SNSのグループ、たとえばFBの「クラシックを聴こう!」などで、罹患し入院したらどんな音楽を病院へ持っていきますか?という質問が時節柄取り上げられるのですが、今回の経験で言えることは、そんな余裕などない、ということです。現状軽症で入院などできるわけがなく、すくなくとも中等症以上で救急搬送時に酸素飽和度(パルオキシメーターで測った値)が80台でなければ入院の対象になりません。そんなときに何をもっていこうかなんて選択する余裕はありません。私の場合、とにかくスマホに入っている音楽が聴ければいい、後は入院となってから考える、でした。もしかしたら入院ではないかもしれなかったですし、それを考えたときにそんないろんな選択をするだけの時間的精神的な余裕など全くありませんでした。ですがスマホには128GのmicroSDカードが刺さっており、そこに何曲ものクラシック音楽が入っています。それが聴ければそれで十分だと思っていましたので、とにかくスマホが使えるようにしておきさえすればいいとだけ思い、ウェストポーチをひったくり、身支度だけ整えて救急車へと乗り込みました。其れ以外に自分に何ができただろうかと反芻しても、おそらく救急車へ乗った時以上のことはできなかったろう、と思います。結局、寝間着などは病院からレンタルになるんですから。その分の料金を支払えばいいだけです。というのは、自分が持っていく着替えなどはすべて取り上げられてしまうからです。

私自身も、着て行った服は脱がされ取り上げられ梱へと入れられてしまい、結局退院時まで着ることはありませんでした。着て行った下着までも取り上げられ、それはパンツにまで及びます。後はすべて病院からのレンタルを使うことを承諾させられるのです。そんな緊急事態において、音楽が聴きたいから何をもっていこうなんて考えている余裕などありません。

それを言うなら、CDを持っているのであればそのCDに優先順位をつけて、データ化して普段からスマホにデータを入れておくことをお勧めします。私の場合ソニーXperiaですから、CD音質もハイレゾ相当にして聴くことができます。大部屋へ移ってから、その機能でどれだけ助けられたことか。それを考えた場合、いわゆる携帯音楽プレーヤーに音楽を入れることをお勧めします。できればスマホ一つで済めばそれでいいと思いますが、そう行かない場合はスマホと携帯音楽プレーヤー(例えばソニーウォークマン)と二つ用意しておいて、普段からどんどん携帯音楽プレーヤーにデータを入れて楽しんでおくことを本当にお勧めします。そうすれば音楽が必要だと思えばスマホや携帯音楽プレーヤー、そしてその周辺ケーブルなどをカバンに入れて持っていけばいいわけです。それは取り上げられることなく病室で使うことができます。しかも、ソニーの最新のXperiaなら、スピーカーの性能もXZ3よりも格段に上がっているため、いい音で聴くことだってできます。まあそれは減圧個室でということになろうかと思いますが、少なくとも携帯音楽プレーヤーを持っていきさえすれば、病室内で音楽を楽しむことはできます。

そしてできれば、充電ケーブルなどはひとまとまりにしておいて、普段から携帯音楽プレーヤーと一緒に持ち歩くようにしておくことをお勧めします。私の場合、最近は夏ということもありスマホとその充電用ケーブルなどはひとまとまりにしてウェストポーチに入れてあります。今回入院するにあたり、そのウェストポーチだけをカバンとしてはひったくり、後は家に置いて行っています。それ以外の、たとえば仕事用もしくはプライベート用のバックパックを持っていったとしても不必要なものはすべて取り上げられるので(前掲ですが、現金や履いて行ったパンツすら取り上げられるんですから!)、今回その選択は間違っていなかったと思っています。

今回の入院はいろんな経験をしましたが、音楽をデータ化しておくことは非常時においても有効なことであるということを実感しました。是非とも読者の皆様にも、自分が罹患した時、音楽が聴きたいけれどどうしようと考えるきっかけにしていただき、普段の自分があるべき音楽の聴き方というものを考えていただけると幸いです。

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。