かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:メルカダンテ フルート協奏曲集

東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリをご紹介します。メルカダンテのフルート協奏曲集です。

メルカダンテという作曲かは、現在ではあまりメジャーではありません。19世紀に活躍した、主にオペラ作曲家ですが、器楽曲も多く作曲しています。

ja.wikipedia.org

まあ、ウィキの記述ですが、ネットでほかに載っているものと照合する限り、ほぼ内容的には使えるものみたいなので、参照してみました。ヴェルディの活躍には嫉妬深かったみたいで、そのせいか没後時代遅れとされて現在ではほとんど演奏されないようです。

その代わり、多く演奏されるのが器楽曲で、特にフルート協奏曲。しかしメルカダンテが作曲した5つのフルート協奏曲は、すべて1814~1820年という6年間に書かれています。つまりは、メルカダンテが学生時代あるいは卒業直後の間に書かれた、若いころの作品だということになります。

なので、このフルート協奏曲たちでもって、メルカダンテの音楽の特徴を語ることは大変危険なことだと思っています。ですが、ここに収録されている3曲はどれも、古典派~前期ロマン派へと至る時代の香りに包まれています。となると、ある程度メルカダンテのオペラの音楽的特徴も、推測だけはできるような気はしています。

確かに、ヴェルディの時代にこの延長線上だとしたら、時代遅れと言われるかもなあ、と思います。ですが、聴いていて私はとても清々しいものを感じます。最も有名でイージーリスニングにも編曲されているというホ短調協奏曲の第3楽章、ロシア風ロンドも実に洒脱で、音楽を楽しむ、という気風にあふれています。

確かに私はベートーヴェンの音楽が好きですが、こういった肩の凝らない音楽も大好きです。ただ、私としてはそれだけで満たされる、というほど清貧ではないと思っておりまして・・・・・しかし、疲れているときなどは本当に「あ、自分を追い詰めなくてもいいんだ」と、ほっとさせてくれるのがこのような音楽でもあります。

そういう意味では、とても霊的な音楽である、と言えるかと思います。そういうようにメルカダンテの音楽を評するものがいなかったために、晩年はヴェルディの音楽に嫉妬したのでしょう。これを専門用語で「自己憐憫」と呼びます。例えば、自己憐憫に浸る、とか臨床心理の現場では使うのですが、全く自己憐憫に浸る必要はなかったのになあ、と思います。自分らしくあればそれでいいはずなのですが・・・・・

自分らしく生きる、そのためにベートーヴェンは芸術に全身全霊を捧げたわけで、私としては、19世紀~現代までのベートーヴェン評というのはある意味間違っている、と思っています。かれは確かに共和主義者でしたが、だからと言って貴族を嫌ったわけでもなく、貴族も王様もベートーヴェンも、誰もが一己の人間である、と考えていた、霊的な人であったにすぎません。それを神聖視し、神格化してきたのがこれまでだったのではないでしょうか。

メルカダンテはその犠牲者だと私は思います。特に、このアルバムのホ短調を聴きますと、とても音楽が深く、決して軽薄ではないことに驚かされます。この若いころの情熱を持ち続けていたら、もうちょっと異なる晩年だったのではないかなあ、と思います。

そんなメルカダンテの3つのフルート協奏曲の魅力を最大限引き出しているのに貢献しているのが、ゴールウィのフルート。検索するとパトリック・ガロワの演奏がすぐヒットしますが、このゴールウェイも結構有名なフルーティスト。だからこそ珍しいけどゴールウェイか、と思って借りたのですから。しかし軽妙かつ洒脱で、優雅でそして雄弁なフルートが歌うこと歌うこと!オケも思いっきり八茶けている部分があるのもとても気持ちよく、指揮者、オケ、そしてソリスト三者がともに音楽を楽しみ、味わっていることにより、作品が持つ魂が伝わってきます。

本来は人間の生命を賛美する作曲家だったはずなのではないかと、十分に推測させてくれる演奏は、時にふさぎ気味になってしまう現状において、清涼剤の枠割を果たしてくれています。

 


聴いている音源
サヴェリオ・メルカダンテ作曲
フルート協奏曲ニ長調
フルート協奏曲ホ短調
フルート協奏曲ホ長調
ジェームズ・ゴールウェイ(フルート)
クラウディオ・シモーネ指揮
イ・ソリスティ・ヴェネッティ

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