東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介していますが、今回は久しぶりに大バッハの長男、フリーデマンの登場です。
ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F
何度か、偉大な父を超えようとして奇抜な様式に取り組んだものの、其れゆえに不遇の人生を歩んだ作曲家です。偉大な父とは勿論、ヨハン・セバスティアン・バッハです。
この音源を借りようと思ったのは、小金井にフリーデマンの作品があるのかと驚いたのと、以前瀬川玄氏の「音楽道場」やコンサートで取り上げられたことがあるからです。
音楽雑記帳:「フルート・デュオ・コンサート」を聴いての雑感
http://yaplog.jp/yk6974/archive/379
もう8年前かーと、感慨深いものがあります。このエントリを立てたころはまだブロガーとして駆け出しで、音楽評論の自分のスタイルを模索していた頃でした。でも、特にフリーデマンが作曲したあの二つの旋律で音価が異なるという、気が狂いそうな作品を覚えており、その時の葛西さんの演奏がいまだ記憶に鮮明だからこそ、この音源を選んだのです。
このフルート二重奏では、聴いている限りでは特段特別なことはやっていないように聴こえます。むしろ、時代的な様式美と共に、構造によるシンプルさが、作品を引き立てていると感じます。F59だけ4楽章制ですがあとは3楽章制とさほど冒険もしていませんが、和声はすでにバロックではなく多感様式だけに古典派に近く、その上でフーガも使われていて、各作品とも意外と隠れた特色があり、さすがフリーデマンだなあと思います。本当は才能豊かな人だったことが、このアルバムでは一目瞭然です。
それを演奏するのが、クイケン兄弟の末っ子、バルトルド・クイケンと、マルク・アンタイ。そもそもがリコーダー奏者なのですが、このアルバムではフラウト・トラヴェルソを演奏しています。つまり、正に古典派以降のフルートであるわけです。つまり、これらの作品がそもそもはフルート二重奏曲ではなく、トラヴェルソ二重奏曲だったことが分かります。
つまり、バロック時代の「フルート」は現代のリコーダーですから、フリーデマンが生きた時代の常識に従えば、手稿譜にフルートとあれば、リコーダ―で演奏する筈なのです。それがトラヴェルソだということは。トラヴェルソと書き込んである、ということです。
どのアルバムでも、殆どがリコーダーとトラヴェルソの違いを明確にしないでパッケージを作ることが多いのですが、もう少しすっきりさせた方がいいような気もします。まあ、古楽の楽しみではありますけれど・・・・・トラヴェルソだから、このアルバムはフルート・デュエットで正しいわけです。横笛のための二重奏なんですから。それをリコーダーで吹くと言うことは。基本的には編曲ということになるんですね。そのあたりは、一応明確にしたほうがいいように思います。
かなり隠れていろんなものが詰まっている作品たちなんですが、二人は奇をてらわず良いテンポで鳴らしていくことで、作品自身が持つ美しさや、感情と言ったものを明確にしていきます。だからこそ少なくとも私の心にはすっと入ってきて、いつの間にか、ああ、フリーデマンはやっぱり苦しんでいたんだなあと共感しているんですね。その表現力はさすがです。竪でも横でも自在に演奏するクイケンは素晴らしいです。名人芸をことさらに強調することなく、しっかりと作品の表現に使うことで作品の特徴を浮びあがらせるその技量に、感服するしかありません。
聴いている音源
ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ作曲
2本のフルートのためのデュエット ヘ長調F.57
2本のフルートのためのデュエット ト長調F.59
2本のフルートのためのデュエット 変ホ長調F.55
2本のフルートのためのデュエット ホ短調F.54
2本のフルートのためのデュエット 変ホ長調F.56
2本のフルートのためのデュエット ヘ短調F.58
バルトルド・クイケン(フラウト・トラヴェルソ)
マルク・アンタイ(フラウト・トラヴェルソ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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