かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:コラール、プレヴィンとロイヤル・フィルのサン=サーンス ピアノ協奏曲全集1

東京の図書館から、今回と次回の2回にわたりまして、サン=サーンスのピアの協奏曲全集を取り上げます。以前も「神奈川県立図書館所蔵CD」のコーナーでサン=サーンスのピアの協奏曲全集を取り上げていますが、今回は小金井市立図書館のライブラリであるサン=サーンスのピアノ協奏曲全集を取り上げます。ピアノはジャン=フィリップ・コラール、アンドレ・プレヴィン指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏になります。

ジャン=フィリップ・コラールはフランスのピアニストです。近代フランスのピアノ曲の演奏で有名な人ですが、ラフマニノフの解釈でも知られているピアニストです。

ja.wikipedia.org

そのコラールが、イギリスのプレヴィン、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共演したのがこの全集です。私は以前神奈川県立図書館でパスカル・ロジェのピアノのものを借りていますが、その時は指揮はデュトワ、オーケストラはフィルハーモニア管弦楽団ロンドン・フィルでオーケストラだけがイギリス、他はフランスという組み合わせ。今回はピアニスト以外がイギリスという組み合わせになります。それにしても、どちらもオーケストラがイギリスというのも何かの縁です。それに注目して借りたわけではないんですが・・・

今回は第1集。収録曲はピアノ協奏曲第1番と第2番、第4番です。番号順になっていないのは収録時間の都合でしょう。今回は純粋に演奏を楽しむということで借りてもいますので、あまり気にしていません。

第1曲目のピアノ協奏曲第1番は1858年に作曲され1860年サン=サーンス自身のピアノで初演された作品です。コラールのピアノは若々しさだけでなく、第2楽章においては静謐さも備えており、そのコントラストをサポートするロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団も実に堅実です。プレヴィンのタクトもさえています。そもそも、サン=サーンスオルガニストでもあり鍵盤楽器オーソリティとも言えるのですが、その若き情熱が詰まった作品を単に勢いだけでなく深みもあると表現するのはさすがだと思います。この辺りは指揮者とオーケストラにピアニストに対する尊敬のまなざしすら感じます。

2曲目のピアノ協奏曲第2番は1868年に作曲・初演された作品です。楽章ごとに個性がありますが、そのコントラストを楽しむ作品だと言っていいと思います。そのコントラストの表現が絶品!まさにそのコントラストをピアニストが楽しんでいます。同様に楽しんでいるオーケストラ。軽薄な曲と言うよりはむしろ主調はト短調ですから悲劇的な音楽なのに、どことなく楽しく感じるのは作品が持つ内面だけでなく、その内面を掬い取って表現する表現者が楽しんでいるからでしょう。

3曲目のピアノ協奏曲第4番は1875年に作曲・初演された作品です。2楽章しかないですが実際はさらに細かく分かれている作品ですが、その目まぐるしく変化する部分を楽しんでいるが印象的。循環形式でもあるので旋律が帰ってきたりする部分もすっかり楽しんでいます。サン=サーンス以降の作曲家が様式を変化させたことでサン=サーンスは保守的と言われますが、実はサン=サーンスローマ大賞を受賞できなかった革新的な作曲家でもあります。その革新性を存分に楽しんでいるんです。こういうさらりとした表現も素敵ですね~。

演奏の隅々に深みも随所に感じられます。繊細さと大胆さが同居していますし、とにかく味わい尽くしていますが、味わい尽くしているからこそ、聴き手には「楽しい」と感じられます。これだけおいしいんです!という演奏が楽しくないわけないです。私がTune Browserで192kHz/32bitにリサンプリング再生しているからなのかもしれませんが、そこにリアルに存在しているかのように聴こえます。それゆえに演奏家たちが楽しんでいるのが伝わって、こちらも楽しく感じられるという点はあるでしょう。まるでコンサートホールでその空気管と共に演奏を聴いているような。

でも、この録音はスタジオ録音なんです。EMIのアビーロード・スタジオでの収録です。でも、響きはホールそのもの。こういうところに、ヨーロッパの豊かさを感じます。日本だとスタジオ録音になると途端に響きがデッドになりますので、ほとんどがホールを貸し切っての収録、あるいはライヴ録音になってます。ところがヨーロッパだと収録専用のホールになっているスタジオとかあるんです。今後デジタル技術がさらに進歩すると、日本はかなりおいていかれるような気がしています。すでにベルリン・フィルはデジタルコンサートを始めています。いまだにYouTubeでの配信で止まっている日本は、果たしてどんな音楽シーンになっていくのでしょうか・・・こういうクラシック音楽のアルバムがあるからこそ、映像でもヨーロッパは先進的でもあるんですよね。せっかくコンテンツではいいものを日本も持っているのに、どこかもったいないなあと感じるのは私だけなのでしょうか。

 


聴いている音源
カミーユ・サン=サーンス作曲
ピアノ協奏曲第1番ニ長調作品17
ピアノ協奏曲第2番ト短調作品22
ピアノ協奏曲第4番ハ短調作品44
ジャン=フィリップ・コラール(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。