東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲集を取り上げます。クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ピアニストがシプリアン・カツァリスです。
え、すごい面子・・・・・と思ったあなたは、通ですねえ。はい、オーケストラがライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ですからね。実は、メンデルスゾーンはかつて、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスター(楽長)だったのですから。
そして、このアルバムに収録されている、ピアノ協奏曲第1番は、頻繁にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団で演奏されたプログラムなのです。
恐らく、第2番や、「ピアノと管弦楽のためのカプリッチョ・ブリリアント」も、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって演奏されたことでしょう。つまり、かつてライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって頻繁に演奏された曲を、このアルバムではそのオーケストラによって演奏されている、ということなのです。いうなれば、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団にとってメンデルスゾーンのピアノ協奏曲は「持ち歌」とも言うべき作品なのです。
その誇りある曲を、ピアニストにシプリアン・カツァリスを迎えて演奏するのは、相当ワクワクすることです。カツァリスは天才的なピアニスト。私自身はあまりにも天才的過ぎて今まで手を伸ばさなかったピアニストなのですが、いやあ、彼が評価されるの本当にわかります。相当速いテンポなのに、全く嫌みがないんです。
それは彼自身も作曲家だからなのかもしれません。作品が持つ構造と魂を楽譜から読み取るスコアリーディングのすばらしさと言ったら!テンポが速いことでむしろ魂が宿っているかのように聴こえるんです。もう脱帽しかありません。
そこに必死に食らいつき、生命力を躍動させるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。指揮するはこれも生命力ある演奏では定評ある、クルト・マズア。収録年がどう調べても分からないので断定はできませんが、おそらくマズアが音楽監督の時代の録音ではないかと思われます。
あまり知られない「ピアノと管弦楽のためのカプリッチョ・ブリリアント」も、何と気品があってかつ生命力にあふれる演奏でしょう!メンデルスゾーンの恋もうかがえる作品ですが、実に人間的で温かい演奏になっています。
メンデルスゾーンはわが国では評価が低い作曲家ですが、実に前期ロマン派らしい、人間味あふれる作品を書くと思います。その人間味を前面に押し出した演奏は、爽快で、かつ生きている!と自分自身が感じられます。メンデルスゾーン直系とも言えるオーケストラとの共演が、天才カツァリスにさらに内面性を歌うツールになったのかもしれません。素晴らしいコラボレーションと言えましょう。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
ピアノ協奏曲第1番ト短調作品25
ピアノと管弦楽のためのカプリッチョ・ブリリアント ヘ短調作品22
ピアノ協奏曲第2番ニ短調作品40
シプリアン・カツァリス(ピアノ)
クルト・マズア指揮
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
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