かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:サン=サーンス 6つの練習曲他

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、サン=サーンスが作曲した6つの練習曲二つを含んだアルバムをご紹介します。

サン=サーンスと言えば、我が国では管弦楽曲が有名だと思いますが、実はピアニストとしても優れた人でした。それゆえにピアノ曲も素晴らしいものを残していますし、管弦楽曲のカテゴリになるとはいえ、5つのピアノ協奏曲はおそらくサン=サーンスが残した楽曲の中では特に有名なものではないでしょうか。そもそも、交響曲でも最も有名なのが「オルガン付き」と、これもピアノ同様鍵盤楽器ですが。

そうみてくると、サン=サーンスピアノ曲を聴いてみたい!という願望はわたしの中でずっとあったのです。借りてきた理由としてはそんな願望があったのは間違いありません。

さて、練習曲、つまりはエチュードですが、これがサン=サーンスの時代だと、超絶技巧なども出ている時代なので、様々な要素がごった煮なって、ひとつの「おいしさ」を作り上げているという感じです。単なる練習曲を超えて、普通にコンサートピースとして扱っても差し支えないくらいのクオリティ。

enc.piano.or.jp

enc.piano.or.jp

特に晩年に作曲した作品111は圧巻。解説の方がかかれている「ファンの皆様の声にお応えして、ピアノ《協奏曲》第5番(エジプト風)の終楽章を一人で演奏できる、超絶技巧のコンサート用ピースとして編曲しました」という類のもの」というのも納得です。ピティナの解説の方はそれをサン=サーンスの成功の証としていますが、それだけではなく、ピアノという楽器が一つの頂点を極めた証でもあると私は思っています。

この作品が成立する70年ほど前、つまりベートーヴェンらの古典派の時代、まだフォルテピアノと呼ばれた楽器は貧弱で、それでもベートーヴェンは未来を見据えて作曲したのですが、サン=サーンスはむしろ未来のために現在と過去を見据えた、ということになります。それだけ、ピアノという楽器が成熟した証だからです。

それをさらに印象付けるのが、2つのエチュードの間に挟まる4つの小品たち。ロマン派的でありつつ、技巧的なものもあればそうでもないものあって様々ですが、いずれも魅力的な作品ばかり。そういう作品がどんな歴史を踏まえて出来上がっているのか・・・・・このアルバムを聞けば一目瞭然です。それは単に編集者が意図したことではなく、むしろサン=サーンスが意図したことだったと言えるでしょう。それに編集者が共感した、という感じかもしれません。

演奏しているデュシャーブルもそんな共感をしている一人ではないでしょうか。のびのびとしたピアニズムは、作品に宿る生命を引き出し、私たちに歌として呈示しています。まさに生き生きとという表現がぴったりで、聴いていてつい体をゆすってしまいます。私にとってはこういう生き生きとした演奏は「ノれる」演奏で、思わずノリノリ。それはピアニストもノッテいる証拠であると言えるでしょう。ではなぜノッテいるのかと言えば、それだけ作品に対してリスペクトしていたり、共感していないと難しいでしょう。

こういう演奏や作品に巡り合えることが、図書館で資料を借りる醍醐味なんですよね~

 


聴いている音源
カミーユ・サン=サーンス作曲
6つの練習曲 作品52
かわいいワルツ 作品104
愉快なワルツ 作品139
6つの練習曲 作品111
アレグロ・アパショナート 作品70
マズルカ第3番ロ短調 作品66
フランソワ・デュシャーブル(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。