かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:フランスの美女とスウェーデンの野獣 フランスとスウェーデンのクラリネットとピアノのための作品集

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はフランスの美女とスウェーデンの野獣という題名の、クラリネットとピアノのための作品集をご紹介します。

果たして、このネーミングが適切なのかどうかは議論の余地があるなあって思います。サン=サーンスの作品は少しは女性的な部分もあると思いますが、それ以外って、イメージだけなんじゃないのかって思うからです。

フランスはドビュッシーサン=サーンスプーランクスウェーデンはリドホルム、ヒルボルイ、ペンティネン。スウェーデンの作曲家はあまり知られていない作曲家ばかり。しかも、フランスは19世紀〜20世紀にかけての作曲家で、スウェーデンは20世紀〜21世紀にかけての作曲家なのです。作品が受けている影響も時代によって異なるので、違った側面がでるのが当然だと言えるんです。

まあ、このネーミング、絞り出したんでしょうねえ。こうすればおしゃれじゃない?って。うーん、工夫は評価したいって思いますが、これで良かったのかなあという疑念はずっとつきまといます。聴けば聴くほどそれで良かったのかって思います。

ただ、このアルバムはとても画期的と言うか、意欲的だとは思います。フランスの三人にしても、あまり室内楽は聴かれない作曲家です。プーランクだとむしろ聴かれる方かもしれませんが、ドビュッシーはむしろピアノですし、サン=サーンスに至ってはむしろシンフォニストとしてのほうが我が国では有名ですしね。

その上で、フランスのこれら3人の作曲家は、19世紀〜20世紀にかけてフランスで興った、新古典主義音楽に関わる作曲家たちだと言えます。サン=サーンスは直接関わっていませんが、音楽が保守的であることと、その一方で新しい様式に寛容でむしろ育てていったという側面もあり、じつは重要な作曲家なのですね。だからこそこの三人が並ぶという事になったのだと思います。こういう選曲はとてもおもしろいと思います。

一方でスウェーデンですが、スウェーデンという国は20世紀に入って優れた作曲家たちを多く排出しています。このブログでもサンドストレムをご紹介しています。バッハの影響を受けたこの作曲家はおんがくとしては実に20世紀の様式に則っています。そういった優れた才能が20世紀に花開いたのがスウェーデンでした。

このコントラストは、選曲にも現れています。フランスの三人は様式的に保守的なものが並んでいます。ドビュッシーは狂詩曲。2つの楽器でというのは革新的ですが、ドビュッシーはピアノ部分を将来オーケストレーションしようとしていたという可能性もあります。サン=サーンスプーランクソナタクラリネットとピアノなら自然にそうなるかと思います。

一方のスウェーデン。どれも単ににクラリネットとピアノのために書かれた作品で、幻想的なものばかりが並び、様式に囚われていません。音楽は時として粗野に聴こえるかもしれませんが、それは不協和音が為せる技であって、とても洗練された作品がずらり。

だからこそ、私はネーミングはどうなんだろうなあって、首をかしげてしまうんです。それを言うならフランスはプーランクの音楽はどうよ?っていいたくなりますしね。もっとシンプルなネーミングでも良かったと思いますが、多分、このアルバムがいろんなものを詰め込んでいるので、如何に表現するかで迷いに迷ったんでしょうね。

でも、そのネーミングにつられて借りた人がここにいます。はい!私です!その意味ではとてもキャッチーなネーミングだとも言えますね、はい・・・・・しかしその御蔭で、面白いアルバムを存分に楽しむことができるのは幸いだと思います。

演奏はクラリネットがフレスト、ピアノが最終曲を作曲したペンティネン!なんと自作自演なんですねー。そもそも、ペンティネンはウィキではピアニストとして紹介されています。なので検索するとデイヴィッド・ジンマンとの共演とかがヒットします。

ローランド・ペンティネン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%8D%E3%83%B3

クラリネットはA管とB管2つ使っています。これを記載するアルバムを私は初めて見ました。むかし宮前フィルの団員たちからなんとなく聞いていた話ではあるんですが・・・・・

クラリネットのしくみ
クラリネットは管楽器一の個性派!?
クラリネットは2本セット A管とB♭管との関係
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/clarinet/mechanism/mechanism005.html

聴衆には必要ないってことだったんでしょうね。でも、このような記載があると、次クラリネットの作品を聴くとき「これはA管だろうかB管だろうか」とワクワクします。上記はヤマハのサイトで、動画で2つの違いを音階を吹くことで見せてくれているので、ぜひとも参照していただくといいかと思います。なかなか聴いているだけではわからないと思いますし、実際私も判別しにくいです。けれどもその2つを使い分けての自在な演奏は、クラリネットが持つ人間らしさを存分に表現できていると思います。

ピアノもそもそも作曲しているピアニストなので、作曲者との対話の上で咀嚼しているのか、実に明快爽快で、暖かい演奏!その二人のセッションは、作品の魂を存分に引き出すことに徹底しているように思います。特にスウェーデンの作曲家たちの作品には暖かい目が注がれ、不協和音をおどろおどろしく演奏するのではなくしっかりと人間の内面として捉えているのは清々しくもあります。こういった演奏を待ってました!という喜びに満ち溢れています。




聴いている音源
フランスの美女とスウェーデンの野獣
クロード・ドビュッシー作曲
狂詩曲第1番
カミーユ・サン=サーンス作曲
クラリネットソナタ変ホ長調作品167
フランシス・プーランク作曲
クラリネットソナタ変ロ長調
イングヴァル・リドホルム作曲
クラリネット独奏のための「友情」
アンデシュ・ヒルポルイ作曲
タンペレ・ロー
ローランド・ペンティネン作曲
マーキュリー・ドリーム
マルティン・フレスト(クラリネット A管、B管)
ローランド・ペンティネン(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村