かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:マイスキーとティルソン・トーマス、ロンドン響によるショスタコーヴィチのチェロ協奏曲

東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲を収録したアルバムをご紹介します。チェロはミッシャ・マイスキーマイケル・ティルソン・トーマス指揮ロンドン交響楽団の演奏です。

ショスタコーヴィチは生涯で2曲チェロ協奏曲を作曲しています。その2曲すべてが収録されています。その意味では、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲全集だと言っていいでしょう。ちなみに、もう1曲チェロ協奏曲がありますがシューマンの作品の編曲です。

さて、この二つのチェロ協奏曲は、それぞれ個性的です。第1番は4楽章でありプロコフィエフの作品に影響されて作曲されたものです。第2番は第2楽章が緩徐楽章になっており、半ば自らの人生を達観したかのような作品です。共に戦後、特にスターリンの時代以降の作品です。

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これだけ癖のある作品になっているということは、ショスタコーヴィチの独創性、そして自由に作曲が出来るという意識を反映していると言えましょう。第2番は健康状態が良くない時期に作曲されて作品自体も暗い雰囲気が漂っていますが、むしろ自身の健康や生命に対する不安を素直に吐露したとも言えるわけで、まさにショスタコーヴィチが自由な表現を追求した作品だと言えます。

それだけの作品を弾くマイスキーというわけですが、彼の出自が、ショスタコーヴィチの人生とかぶる部分はあるのかもしれません。マイスキー自身も旧ソ連ラトビアの出身でかつユダヤ人と、抑圧される条件を持っていた上に、姉がイスラエルへ亡命。旧ソ連当局に逮捕という事態になり、その後マイスキー自身も渡米の上イスラエルへ移住という人生を歩んでいます。政府や社会から抑圧されたショスタコーヴィチに共感する部分はあったと思いますし、何よりも実際にショスタコーヴィチが生きている姿を見ているということもあり、よりショスタコーヴィチに対し親近感を持っていたとしても不思議はないでしょう。

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指揮者のマイケル・ティルソン・トーマスも同性愛者と言われており、社会から抑圧されている人々のひとりだと言えます。さらに言えば、ティルソン・トーマス自身がロシア系のアメリカ人でもあります。

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そういった二人が組んだこの演奏は、第1番での諧謔性もありますが全体的にはショスタコーヴィチが素直に暗い部分を吐露している部分をしっかりと表現しているのが印象的です。オーケストラのロンドン交響楽団もステディなサポート。プロならではの音の鋭さ、それが生む表現の豊かさを感じます。それはつまり、アマチュアがそれだけの演奏をしていると言うことは並大抵のことではないということをも意味するわけです。

こういった演奏を、図書館で借りて聴くことができることが、アマチュアのレベルの向上につながりますし、またアマチュアの演奏を聞く楽しみにもつながっていきます。そして、それはプロオケにも影響を及ぼすわけで、文化の豊かさにつながっていきます。その文化の豊かさは経済活動にも好影響を与えて、活力ある社会を生み出していきます。経済だけでなく、文化でも他のジャンルにも好影響を及ぼすわけです(例えば、「新しい学校のリーダーズ」など)。

ミッシャ・マイスキーマイケル・ティルソン・トーマス、そしてロンドン交響楽団が日本においてさほどの影響を与えていないと考えるのは、個人的には間違いだと思います。図書館という存在によって、意外なところに影響を与え、社会が豊かになっていると考えるべきです。抑圧された人たちが紡いだ演奏が、日本の社会の豊かさにつながることを願ってやみません。

 


聴いている音源
ドミトリー・ドミトリエヴィチ・ショスタコーヴィチ作曲
チェロ協奏曲第1番ホ長調作品107
チェロ協奏曲第2番ト長調作品126
ミッシャ・マイスキー(チェロ)
マイケル・ティルソン・トーマス指揮
ロンドン交響楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。