かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:PROJECT B 2024を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年3月30日に聴きに行きました、PROJECT B 2024のレビューです。

PROJECT Bとは、ベートーヴェンブラームス管弦楽作品をすべて演奏すると言う企画で、そのために結成されたオーケストラの演奏会です。昨年はベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」が演奏されています。

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昨年ようやく聴きに行けたのですが、実はもうほとんど演奏しつくしており、実は来年でこのプロジェクトは終了だそうです。

さて、今年は終了前年ということで、残っているブラームスの作品が演奏されました。ちなみに、ベートーヴェンは全て演奏し終わっているそうです。

今年のプログラムは以下の通り。

オール・ブラームス・プログラム
①ヴァイオリン協奏曲ニ長調
交響曲第2番

序曲とかは今回ありません。そういう作品もすべて演奏しつくしておりますし、実際、この2曲でも休憩をはさんでほぼ2時間です。まあ。2時間以上がザラであるオーケストラ・ダスビダーニャという団体もありますが・・・あれは例外中の例外だと言えます。普通はコンサートは2時間で終わるようにプログラムを組みます。聴衆の集中力などもありますが、そもそも使用料の問題もあります・・・いや、使用料が殆どの問題を占めると言っていいのではと思います・・・特に今回、ホールがミューザ川崎シンフォニーホールですし。

それにしても、アマチュアオーケストラでミューザ川崎を選ぶと言うのは、ある程度の技量があるオーケストラじゃないと、なかなかしんどいと思います。私もかわさき合唱祭りで舞台に立ちましたが、本当にここは自分の声が返ってこないので・・・もちろん、客席ではしっかりと響いています。

そのあたりはオーケストラであっても同じです。ということは、隣の音を相互に聴きあわないとアンサンブルが崩れることを意味します。

そのうえで、今回1プロは協奏曲。アマチュアではなかなか難しいジャンルです。しかも、今回のソリスト中村太地さん。現在世界で活躍中の若手です。その名手と合わせるということは、オーケストラにもそれなりの技量が求められるということになります。

指揮者の畑農さんはそもそもは会社員をしながら指揮の勉強をしてアマチュアオーケストラの指揮で活躍している方なのですが、オーケストラのリスペクトが半端ないことは、演奏が始まればすぐわかります。昨年同様の、やせた音などみじんもない、素晴らしいアンサンブルが響くのです!

特に、演奏に生命力があることもこのオーケストラの特徴です。アマチュアだからと言って侮るなかれ。そこにはプロオケと言ってもさしつかえないほどのレベルの演奏が存在します。ソリストの演奏と対等に渡り合い、作品の魂が自然と現出するその様子は、もうプロオケを聴きに行く必要などない!と思わせます。

私はその前日に、バッハ・コレギウム・ジャパンの「マタイ受難曲」を聴きに行っていますが、やっぱりバッハ・コレギウム・ジャパンのほうがいいなあと思った瞬間は一度もありません。どっちも聴きたい!です。それくらい、感情移入も素晴らしい熱演でした。

ソリストのアンコールはバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータから「サラバンド」でしたが、忘却の彼方へと行くかのようなさみしさがにじみ出るような素晴らしいヴァイオリンに対し、全くそん色ないオーケストラの表現力は、もうアマチュアのレベルを超えていると言っていいでしょう。

後半のブラームス交響曲第2番。第1番よりは明るい曲で、ブラームスがのびのびと作品を書いたような印象が強い曲です。それを本当にのびのびと、まるでそこにブラームスがいるかのように、共感の波が押し寄せます。私は今回、舞台を囲む位置に座りましたが、それでもppからffまでの表現が申し分なく、その強弱が作品の内面、あるいは精神、魂と言ったものを自然と浮かび上がらせます。昨年もサントリーホールで真横あたりで聴きましたが、それでも全くそん色ない演奏がアマチュアで出来るのも、幸せな時間です。もう一度繰り返しますが、プロではなくアマチュアです・・・

好きこそものの上手なれ、という言葉がありますが、まさにその言葉を体現しているオーケストラだと言っていいでしょう。徹頭徹尾作品の表情の表現が素晴らしく、ブラームスが言いたいことは何だろう?とすら考えるほどです。楽譜としっかり向き合っているなあと感じます。

アンコールはブラームスの子守歌ですが、これもやさしさにあふれる演奏。ブラームスという、ちょっとシャイな作曲家の、その魂を掬い取るかのような表現力は見事!ベートーヴェンブラームスを演奏したいがため結成されているということもあるとは思いますが、そもそも指揮者もアマチュアと言っていいほどなのに、その譜読みの確かさと指示の的確さが、オーケストラに支持されているのでしょう。まさに畑農氏の元にはせ参じた人たちによる演奏なのだと感じます。それもまた、聴いていて心地よい!

来年が最後だなんて、とてもさみしいですが、しかしだからこそ、来年もぜひとも足を運ばねば!と思った次第です。

 


聴いて来たコンサート
PROJECT B 2024
ヨハネス・ブラームス作曲
ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77
交響曲第2番ニ長調作品73
5つの歌作品49より「ブラームスの子守歌」(オーケストラ・アンコール)
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティ―タ第2番ニ短調BWV1004より「サラバンド」(ソリスト・アンコール)
中村太地(ヴァイオリン)
畑農俊哉指揮
PROJECT B オーケストラ

令和6(2024)年3月30日、神奈川、川崎、ミューザ川崎シンフォニーホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。