かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:PROJECT Bオーケストラ PROJECT B 2023を聴いて

コンサート雑感、今回は令和5(2023)年4月8日に聴きに行きました、PROJECT BオーケストラPROJECT B 2023のレビューです。

PROJECT Bオーケストラは、ベートーヴェンブラームスの作品に挑戦するために結成されたアマチュア・オーケストラで、すでに9回の演奏会を重ねています。

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このオーケストラの存在は以前から知っていまして、聴きに行きたいという想いもあったのですが、仕事の関係などでなかなか他のコンサートとの調整がつかず、実現していなかったのですが、3年前の2020年にやっとチケットを取ったのでした。ですが新型コロナウイルス感染拡大により、延期の上最終的には中止となってしまったのでした・・・・・

実は今回の演奏会はその2020年に行う予定だったPROJECT B 2020を2023に改めたものでした。メインはベートーヴェンの第九・・・・・だからこそ、当時延期の上中止になってしまったのです。年末にはBCJが第九を演奏したのですが・・・・・アマチュアだと、なかなか難しかったのだと思います。当時社会的にも声出しはタブーでしたし。

今回のプログラムは、その第九の前にブラームスの「大学祝典序曲」だったのですが、2020年では同じブラームスの「悲劇的序曲」が予定されていました。どちらも私としては好きな曲なのですが、結果的には今回の第九にふさわしい1プロになったのでは?と思っています。ようやくスポーツなどでも声出し応援が戻ってきましたし、そんな祝賀ムードにはぴったりだったのでは?と思います。そして奇しくも、4月8日というのは各地で新学期や入学式などが行われる時期です。私も大学の入学式でオーケストラの演奏が確か「大学祝典序曲」だったと思います。

なので聴いていて、私が卒業した大学の入学式を思い出していました。指揮はこのオーケストラのまとめ役である、畑農敏哉氏。「アマチュアオーケストラに乾杯!」の著書でご存じの方も多いのでは?と思います。

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プログラムには勤務社名が入っていませんでしたので、恐らくもう退社されているのだと思います。オーケストラの団員が指揮者になってしまうという例はあまり見られないと思いますが、アマチュア合唱団で歌っていた私としては合唱団界隈ではよくある話なのでほほえましい感じです。ですがタクトがいいんですよ!基本的には二つ振りで、かなり指揮を研究されているなと思いました。

というのは今回、指定された席が舞台袖上。ロケーションはサントリーホール。ですので舞台をぐるりと席がめぐらされている、というわけなのですが、そのほぼ真横の席がアサインされたのでした。まあしょうがないなあと思っていましたら第1ヴァイオリンのほぼ真横なので、指揮がよく見えるんですよね~。見ていて指揮ぶりに感心してしまいました。いやあ、アマチュアでここまで振れる人は少ないと思います。オーケストラが演奏しにくいと感じることが少ないんです。特にそのすばらしさが出たのが第九だったと思います。アインザッツに乱れもないですし、金管が多少不安定かな?という感じ。ですがまあアマチュアですから・・・・・とはいえ、第3楽章でホルンが「ひっくり返る」ことはありませんでした。

なので演奏水準としては最高と言ってもいいくらいだと思います。弦では全く痩せた音は散見されませんでしたし、テンポもまるでスウィトナーのようで私好み。端正ながらも情熱的な演奏。それは3年越しの第九というものだったからかもしれませんが、演奏会自体は昨年にも行われており(私自身は病気により足を運べませんでしたが)、そのため全く演奏ができなかったからということではなかったと思います。ですが、第九は「流れてしまった」回だったのですね。その想いは全員からみなぎっていたように思います。プログラムを見てみると、東京音楽大学において聴講生として広上淳一氏などそうそうたる指揮者に師事されており、納得。

特段変態演奏(第4楽章vor Gott!の部分)というわけでもないんですが、本当に情熱的な演奏で、第3楽章などは多少速めのテンポ。ティンパニもぶったたいてくれますし、魂に響く演奏。そしてソリストだけではなく合唱団のすばらしさ!すぐわきにソプラノが陣取っていたということもありますが、力任せではないのに力強い合唱が聴こえてきたときには、思わず落涙してしまいました・・・・・3年間、歌いたかったろうなあと思いますと。

ホールをまさに楽器として使っている感じであり、これでアマチュアなのか?と思うくらいです。本当に畑農氏の理念に共感して集まっているんだなあと思いました。この「共感して」というのは演奏するうえでとても重要なファクターだと私は思っています。指揮者は絶対といわれますが、しかし現代社会において、特にアマチュアオーケストラという楽しみで音楽をしている人たちをまとめ上げて一つの作品を作り上げていく過程においては、一人一人がその理念や音楽に共感することが最も大切だと思っています。畑農氏にはその手腕アリ、と見ます。合唱団もその理念に共感する人たちでなければ高いレベルをだすことは難しいですし(私も大田区民第九で経験済み)、さらに言えばその合唱団を指導する合唱指揮者も理念に共感していないと難しいです。

つまり上下関係ではなく、水平関係、なんです。そのうえで指揮者にリスペクトできるか、なんです。それが指揮者の「惹きつける魅力」ともいえるかと思います。指揮者に惹きつける魅力無くして、水平関係で指揮者をリスペクトすることは不可能でしょう。それが象徴されていたのが、歌詞がすべて口語体だったこと。これはなかなかまだ広がっていないのですが、チャレンジされたのは本当に素晴らしかった!しかもそれでいて第九が持つリズムがまったく崩されていないんです。

畑農氏にはまさに「惹きつける魅力」があるように感じました。その下に集まりし各々の能力が最大限発揮された、素晴らしい演奏でした。これぞアマチュアの最高峰の演奏の一つと言っていいと思います。できれば、毎年聴きに行きたいオーケストラがまた一つ増えてしまいました・・・・・調整が大変になりそう。

え?その前に病気なんとかしろって?そりゃあもちろんそれが前提で、です。

 


聴いて来たコンサート
PROJECT B オーケストラ PROJECT B 2023
ヨハネス・ブラームス作曲
大学祝典序曲 作品80
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
砂田愛梨(ソプラノ)
藤井麻美(メゾ・ソプラノ)
宮里直樹(テノール
氷見健一郎(バス)
PROJECT Bコーラス(合唱世話役:廣瀬泰文)
畑農敏哉指揮
PROJECT Bオーケストラ

令和5(2023)年4月8日、サントリーホール 大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。