コンサート雑感、今回は令和5(2023)年4月1日に聴きに行きました、アンサンブル・マイルストーンの第39回演奏会のレビューです。
アンサンブルと聞くと、とても小規模なものを想像すると思いますが、それは決して間違いではありません。ですがむしろ団員数からすれば、室内管弦楽団という規模が適切だと思います。ですが、この団体、その規模でアマチュア、なんです。
マイルストーンとは「里程標」。よく道路や鉄道などで「~から〇キロ」と出ているものを指し、日本では鉄道や高速道路などで「キロポスト」というやつです。英語だとそもそもがアメリカで生まれている単語なので「マイル」ということになります。毎回の演奏会を「マイルストーン」とするというのはとてもいいなあと思います。終点でない限り、その里程標はさらに続きますから。
そんなオーケストラ。さて演奏はどんなものでしょう?ということで聴きに行った・・・・・のではないんです。そうであればかっこいいんですが、実はホールが近場で値段も安いということのほうが強い理由です、現金なもので・・・・・しかし、どこかしらこのオケならいい演奏が聴けるのでは?という漠然たる予測がありました。ホールは三鷹市芸術文化センター風のホール。無料でした。
さて、当日のプログラムは以下の通りです。
モーツァルト:オペラ「皇帝ティートの慈悲」序曲
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」
2プロに分かれているというもので、アマチュアオーケストラでも最近よく見られる協奏曲をはさむというもの。しかしアマチュアオーケストラで協奏曲をはさむのは、かなり自信がないと決断できないプログラムではあります。なのでそのあたりでなんとなく期待していったところがあったのは事実です。
さて、まずは「皇帝ティートの慈悲」序曲ですが・・・・・なんというアンサンブルの素晴らしさなんだ!と感動しました。勿論アマチュアらしいやせた音も見受けられるんですがほんの少しだけ。後はセミプロなの?と思うようなサウンドが響いて来たんです。特にこの序曲においては冒頭でファンファーレが鳴るのですがそこでのアンサンブルが絶妙!これで無料でいいのか?カンパ要らなくね?献金したいって強く思ったほどです。
聞き惚れているうちに、団員さんたちが次の準備をして、始まるのはドヴォルザークのチェロ協奏曲。ソリストは櫃本瑠音さん。いやあ、いくつかアマオケでこの曲も聴いてきましたが、この櫃本さんのチェロも素晴らしい!饒舌に歌うんです。聴いているうちに涙している私・・・・・オケのサポートも素晴らしく、同じように饒舌。アンコールの「Julie-o」はジャズの曲らしいのですがピチカートも織り交ぜ生き生きとした作品。こういう曲をアンコールに持ってくるソリストがいる時代になったのだなあと思いつつ、饒舌なのがなぜなのか、その一端がわかるような作品と演奏でした。
そして休憩後のベートーヴェン。「運命」なんて聴きなれた曲ですが、かなり古楽的に速めのテンポ。しかしそれが全く気になりません。わたしとしてはもう少し最後の音を伸ばすほうが好きなのですが、気にならないんです。むしろ嵐のような感じが出ていて、指揮者のスコアリーディングの深さと団員の皆さんの共感度の高さを感じました。第3楽章から第4楽章へ移るあたりなどは、もう感動で涙が・・・・・
実は、この3曲、「チェロの響き」ということでまとめられているのですが、しかしそれよりも演奏レベルの高さに惚れ惚れです。アマチュアらしい選曲のこだわりと、レベルの高さ。ホールを楽器として使っているのも素晴らしいです。惜しむらくはもう少しだけppが抑えられればというところですが、まあ、それでもアマチュアとしてそん色ないレベルですし。全く気になるところではありません。
いやあ、これで無料で本当にいいんですかと、終わっても献金箱ないのか?と探すくらい素晴らしい演奏でした。こういうオーケストラは応援したいですね~。おそらく無料であれば借り賃が安いということが理由なのでしょうが、しかし本来なら入場料をいくばくか徴収してもいいくらいの演奏でした。私としてはちょうど新年度で仕事における資格を失うという時期にあたり、意気消沈するところなのですが、どこかエネルギーをもらったような気がします。感謝の念しかありません。
聴いて来たコンサート
アンサンブル・マイルストーン第39回演奏会
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
歌劇「皇帝ティートの慈悲」序曲
アントニン・ドヴォルザーク作曲
チェロ協奏曲ロ短調作品104
マーク・サマー作曲
Julie-o(ソリストアンコール)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
櫃本瑠音(チェロ)
今井治人指揮
アンサンブル・マイルストーン
令和5(2023)年4月1日、東京三鷹、三鷹市芸術文化センター 風のホール
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。