東京の図書館から、今回は小金井市立図書館のライブラリである、ブラスバンドによる「展覧会の絵」ほかを収録したアルバムをご紹介します。
演奏するのは、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル。以前取り上げたことがあるブラスバンドですが、このアルバムではクラシックの作曲家たちが残した管楽のための作品が主に収録されているのですが、しかし最もヴォリュームがあるのはそうではなく、むしろブラスバンド用に編曲されたムソルグスキーの「展覧会の絵」なのです。
もちろん、もともとはピアノ曲であり、ラヴェルにより管弦楽作品へと編曲されたのが「展覧会の絵」です。それを今度はブラスバンド、つまり管楽用に編曲してしまおうというのですから、興味をそそられるというものです。
編曲したのは、団員でありまたソリスト、指揮者、作曲家でもあるエルガー・ハワーズ。CDにはハワーズとありましたが実際の英綴りを見ますと「ハワース」が正しいようです。
面白いのは、ラヴェル版では省略された、「リモージュの市場」の前にあるプロムナードも省略せず編曲している点です。これは管弦楽版を聴きなれていますとちょっと面喰いますが、しかしバンドはこれがそもそも何だと言うように普通に演奏してきますし、何度も聴いていますと不自然には聞こえてこなくなりますから面白いものです。
この編曲は優れているなあと感じます。管弦楽版と違和感がないうえに、原曲ピアの版のような打点の感じも出ているからです。むしろこの作品はブラスバンドのためにピアノで作曲されたのではないか?と思うくらいです。
それ以外の作品では、ベートーヴェンの珍しい管楽のための作品や、モーツァルトのディベルティメントが収録されていたりと、管楽器の魅力たっぷり。特にモーツァルトのディベルティメントは実は管楽器のためのものがあることは以前このブログでもご紹介していますが、それを収録するなんざあ、さすが歴史のあるバンドであると思います。古典派のトランぺッターだったアルテンブルクの作品も紹介しており、古典派の時代というのが如何にバロック的である一方現代に近いのかを感じさせられます。
珍しいと言えば、グリーグやフランクの作品も収録されている点です。フランクは編曲されていますがまるでもともと管楽のための作品だったのかと思うくらい。編曲者と演奏者共に高い実力を持つゆえの結果だと思います。長音でも単音でもしっかりと響くそのアンサンブルは一級品。ゆえにどの作品を演奏しても生命が宿っていますし、艶もあります。管楽器らしい「歌」も聞こえてきます。なーんだ、ブラスバンドか・・・・・そう思わずに、ぜひとも聴いてほしい一枚です。
聴いている音源
モデスト・ムソルグスキー作曲
組曲「展覧会の絵」(エルガー・ハワーズ編)
ヨハン・エルンスト・アルテンブルク作曲
7本のトランペットとティンパニのための協奏曲
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
トロンボーンのための3つのエクァル
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ディベルティメント 第5番ハ長調K.187
(2つのフルート、5つのトランペットとティンパニのための)
セザール・フランク作曲
英雄的小品(ビート・ファラー編)
エドアルド・グリーグ作曲
葬送行進曲
エルガー・ハワース指揮
ジョン・アイヴァン指揮
フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブル
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