かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:中央大学音楽研究会混声合唱団第59回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年3月11日に聴きに行きました、中央大学混声合唱団第59回定期演奏会のレビューです。

中央大学混声合唱団は、「音楽研究会」の中の一団体で、主にクラシック音楽の合唱曲を演奏する団体です。え?クラシック以外は演奏しないんですかって?ほぼそうだと思います。実はもう一つ「こだま会」という団体も同じ音楽研究会の中に存在し、日本の合唱曲などはそちらが担当しています。

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以前は、「部活動」と「サークル」は分けられていたように思うのですが、現在は一つにまとめられたようです。混声合唱団が所属する音楽研究会は「文化連盟」。私が入っていた「史蹟研究会」は現在「学芸連盟」に所属しています。

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こう見ると、時代は変わったなあと思います。それは単に組織編制だけでなく、「人」にも感じます。

今回の演奏会のプログラムは以下の通りです。

ハイドン 神の聖ヨハネのためのミサ・ブレヴィス
②ケルビーニ レクイエム

え?ケルビーニのレクイエムって、3月11日を狙ったんですか?といわれるかもしれません。本人たちに尋ねたわけではないんですが、狙っていないと思います。実はこの演奏会は、そもそもは昨年12月28日に杉並公会堂で開催予定でした。なので東日本大震災の祈念日に合わせたわけではなく、延期した日程がたまたま3月11日だったということだと思います。ただ、延期するときに、3月11日にした可能性はあると思います(終演後、指揮者も含めてロビーにいらっしゃったので、訊けばよかったかなとは思いますが、私もアマチュア合唱団で経験者なので、終演後あまり引き留めるのもと思い、訊きませんでした。まあ、BCJのコンサートで会えるとは思いますが・・・)。

延期された理由は、団内で体調不良者が続出したこと。今回、コンサートに行って、なぜ延期になったのかわかりました。人数が11人(しかも、5名はOB・OGなので実際は6名)しかいない・・・そりゃあ、続出すれば延期になるなあと思いました。私も宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」で少ない人数の中貧乏合唱団として東奔西走しましたが、それよりも人数が少ないんですよね。それだと、演奏は厳しいよなあと思いました。そんな中、あきらめずに演奏会を開催したことを、称賛したいと思います。それこそ、3月11日という日付に相応しいと思います。

選曲を見て、ハイドンのミサ・ブレヴィスを選択したのはまさにと思いました。選曲委員会があるのかそれとも指揮者の飯坂先生の提案だったのかはわかりませんが、ハイドンのこの曲は、とても小さい曲です。以前、私もエントリを挙げております。

ykanchan.hatenablog.com

実は、この演奏会があるとFacebookで紹介したところ、合唱団時代の友人から、「この曲はとにかく歌詞を詰め込んでいて短い時間で演奏できる曲」と指摘があり、そういえば私も取り上げていたなと思い、見返したのでした。中央大学は図書館でCDを貸し出しているはずなので、そのあたりの結果でもあるのかなと思いました(なので、図書館の役割は決して図書だけではないんです。いわばメディア全体と言うべきで、大学図書館と言え、中央大学は図書館法に則った運用をしていると思います。さすが文学部に司書コースがある大学です)。

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実は今回、このウィキペディアにある編成通りで演奏は行われました。第1・第2ヴァイオリン、オルガン、そして低音としてのチェロ。弦楽器は亡き白石先生が設立された「アレクテ室内管弦楽団」のメンバー。中央大学混声合唱団ゆかりの団体が応援に駆け付けた格好です。最近、資金の関係かアカペラで演奏できる曲が多かった中央大学混声合唱団ですが、今回は伴奏もつけてきたという形です。

私が宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」のメンバーだったころ、音楽監督の守谷弘がモーツァルトを主に取り上げていたことから、ハイドンは全く歌っていません。「戴冠ミサ」も小編成の管弦楽で演奏しましたが、今回の中央大学混声合唱団よりも多かったです。その時、ハイドンという選択肢を知っていればなあと思います。その意味で、今回演奏した学生は幸せだと思います。本当に貧乏だったんですよ、団員が集まらなくて・・・演奏費用はほとんど指揮者の持ち出しでした。勿論、私達も負担はしましたが。今でも団員だったら、今回の学生をスカウトに走ってますね私。

それだけ、実は非常に高いレベルの演奏を聴かせてくれたと思います。高音の伸びと力づよさ、クレッシェンドとディヌミエンドの自然さ。それが生み出す表現力。息の長さ。むしろ、白石先生時代よりもレベルが上がったと思います。そもそも、ハイドンのミサ曲を選択するアマチュア合唱団も少ないですしね。ホールはセシオン杉並と、とても小ぶりだったということもありますが、それでも、ホールを満たす演奏は、素晴らしいものでした。

この曲にはソプラノのソリストもいますが、今回は坂井美登里さん。やはり、プロの声は張りがありますね。でも、清潔な合唱が生きる声でした。オルガンのソロも素晴らしいです。今回、9日、10日、11日と連続でコンサートに行き、すべてでオルガン演奏を聴きましたが、オルガンの演奏でも日本人の演奏レベルは確実に上がっていると感じます。なお、オルガニストは矢野里奈さん。合唱団のピアニストだそうです。ピアノもオルガンも行けるという人は結構おり、宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」でも練習ピアニストの一人だった佐藤季里さん(現在、武蔵野合唱団他で活躍中)がオルガンを弾いたことがあり、素晴らしいものでした。

後半は、ケルビーニのレクイエム。本来は管弦楽が伴奏につく曲ですが、学生部員で6名しかいない状態でフルオーケストラは難しいでしょう。今回はピアノ伴奏でした。アマチュア合唱団だと結構この手を採用することがあり、私自身ブラームスの「ドイツ・レクイエム」をピアノ連弾伴奏で聴いたことがあります。

ykanchan.hatenablog.com

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私自身も、CDを2つ持っていますが、どちらも管弦楽伴奏です。ウィキの説明で注目なのは金管楽器に、トランペットが入っていないという点です。この曲がまさに宗教曲であることを明確に示しています。

なので、トロンボーンを入れても良かったのではという気はしますが、とはいえ、ピアノでも十分演奏できます。ピアノとはそのために発達してきたのですから。多くの作曲家がいろんな管弦楽作品をピアノ用にトランスクリプションしてきました。その歴史を踏まえれば、ケルビーニのレクイエムをピアノ伴奏で演奏しても差し支えないということになります。お金がないなら・・・

合唱団は、そんなハンデをものともせず、伸びやかで力強い演奏を披露しました。うまいなあ・・・聴いていてそれしか思い浮かびません。確かに、人数は少なくなり、もはや団としては存続ギリギリかもしれません。しかし、むしろやる気のある人間が残り、非常に高いレベルの演奏に到達したように私には聴こえました。今回OBやOGも入りましたし、オーケストラで行われているように、卒業生が学生の方に応援に行ったり、また学生が卒業生のほうに応援に行ったりする機会が増えれば、それは経験になりますし、演奏会の維持につながります。

その意味では、少子化で大変ではありますが、大学の部活動やサークルの在り方に変化が求められているのでは?と思います。コロナの前ですが、卒業サークルである史蹟研究会の発表を学祭で見ましたが、ちょっと表面的過ぎているのがとても気になったのですが、そうしないと人が集まらないと言っていました。それはそれで理解できるのですが、今回の混声合唱団の演奏を聴いて、史蹟研究会の方向が最適解なのか?と疑問を持たざるを得ないのです。

文化を掘り下げると言うことは、そんな表面的なことでいいのでしょうか?短い大切な学生生活において、何が本当に自分たちの喜びなのか、それは生涯を通じての物なのか?考え、実行することもまた必要なのではないか。試行錯誤こそ学生の特権であるように感じるのです。社会人になるとなかなか試行錯誤ってできないですから。

でも、今の日本には求められてもいます。今回の経験が、仮に合唱からはなれてしまったとしても、長い人生において必ず経験になるものです。私自身、正直大学のサークル活動と社会人になって合唱で経験したことは全て私自身の人生の経験になり、糧になっています。物事の考えかた、人間関係の構築の仕方など、枚挙にいとまありません。

皆様が次も素晴らしい演奏をされることを、そして社会人になっても合唱を続けたり、あるいは続けられなくてもその経験が活かせたりできることを、切に祈っております。できれば、次回の演奏会も足を運びたいと思います!

 


聴いて来たコンサート
中央大学音楽研究会混声合唱団第59回定期演奏会
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
神の聖ヨハネのミサ・ブレヴィス Hob.XXII:7
ルイジ・ケルビーニ作曲
レクイエム ハ短調
坂井美登里(ソプラノ)
矢野里奈(オルガン)
中村香里(ピアノ)
アレクテ室内管弦楽団弦楽アンサンブル
飯坂純指揮
中央大学音楽研究会混声合唱

令和6(2024)年3月11日、東京、杉並、セシオン杉並ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。