かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:アンサンブル・コンソルテ第39回演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年2月17日に聴きに行きました、アンサンブル・コンソルテの第39回演奏会のレビューです。

アンサンブル・コンソルテはアマチュアの室内オーケストラです。私は以前第30回を聴きに行っております。

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ほぼ5年ぶりということになりました。その後も何度か行こうとしたのですが、他の用事と重なったり、あるいはその後新型コロナウイルスの感染拡大があったりと、なかなか機会は訪れず、ようやく今回足を運べることと相成りました。

今回は、メインはベートーヴェン交響曲第2番。それに、ハイドン交響曲第22番「哲学者」、1プロはメンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」という、見た目にはベタなプログラムですが、飯森範親指揮日本センチュリー交響楽団の演奏を聴いてきている私としては、ハイドンは実に難しい音楽であると感じます。

まずは、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」。オペラなどの序曲ではなく、「演奏会用序曲」というカテゴリです。そもそもは、メンデルスゾーンイングランドを訪れてさらにスコットランドまで行ったことで着想を得て成立した作品です。正式名称は「ヘブリディーズ諸島」と言いますが、メンデルスゾーン自身が総譜に「フィンガルの洞窟」と記載があったためこの通称が使用されています。冒頭の主題がフィンガルの洞窟を描いたものであり、そこから「フィンガルの洞窟」と呼ばれるようになったようですが、実際にはヘブリディーズ諸島の風景からインスピレーションを得た作品です。

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演奏全体として、金管、特にホルンがちょっと不安定。まあ、pとかppでホルンを鳴らすのは難しいと言われますし、ベートーヴェン「第九」第3楽章でもプロオケでホルンがひっくり返るということはライヴでもありますので、決めるのは大変だと思いますが、決まれば本当に素晴らしい演奏だったと思います。それ以外は第九の時同様、弦楽器も木管楽器も打楽器も最高の出来で、洞窟内のどこか神秘的な風景が浮かぶようでした。

2曲目がハイドン交響曲第22番「哲学者」。演奏は全体的に本当に素晴らしく、ハイドンというイメージから想像されるような古めかしさはあまり感じられす、洗練された美しさがきわだつ演奏でした。あれ?クラリネット?と思うような楽器が使用されますがそれはコーラングレハイドンが作曲したのは1764年なので、まだオーケストラにはクラリネットは導入されていません。

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コーラングレの音色が印象的ですが、今回の演奏から哲学者という印象は正直あまり受けなかったです。ただ、この曲は実は教会ソナタ風の構成で、どこか端正な印象を受けます。そこを「哲学者」と名付けたのかもと思います。

この曲でもホルンは使われておりますが、演奏ではあまりホルンが調子悪いなあという印象は残っていません。

休憩をはさんでベートーヴェン交響曲第2番。むしろこの曲のほうがホルンは良かったかなという印象はありますが、やはり繊細な表現になるとちょっと調子が狂うのかなという感じです。ただ、冒頭のファンファーレは思いっきり吹ける音型なので、決まればやはりのびのびとしていて生命力があります。弦楽器も体全体を使っていかにも楽しそうですし、喜びを感じます。特に、アンサンブル・コンソルテさんは、クレッシェンドするときに低い音は弱く高い音は強くという古典派の法則通りに演奏するので、段々盛り上がっていく様子が感動的!その点でも、ホルンがもう少し調子が良ければなあという点は残念。

でも、全体的にアマチュアとしては物凄く高いレベルなんです。これはオーケストラの名誉のために言っておきますが、このオーケストラ以上のアマチュアオーケストラは東京でもほんの数えるほどしか存在しません。今回ホルンだけが目立っただけで、あとは本当に素晴らしいアンサンブルです。アンコールではベートーヴェンのロマンス第2番が演奏されましたが、ソリストであるコンサートミストレスはさすがにアマチュアらしい音が散見されましたが、それでもアマチュアらしいやせた音ではなく、力が足りてなくて響きが浅いという印象で、それでも演奏に表情がしっかりと付いており、作品がもつ甘いロマンティックな側面は存分に演奏で表現されています。その基礎があって、しっかりとアンサンブルが出来ていて相互で補完し合っているからこそ、全体ではアマチュアとは思えない演奏に仕上がっているのだと思います。

室内オーケストラのいい点は、他者に頼りきりにできないという点です。その利点が最大限活かされている演奏です。アマチュアで室内オーケストラなんてどこまでできるのか?と疑問に思うなら一度アンサンブル・コンソルテの演奏会に足を運ばれることをお勧めします。アマチュアでもここまでの演奏ができるのか!と驚かれるはずです。第九の時に私はこのオーケストラを評してこのように述べていますが、今でもその評価は変わりません。

「テンポと解釈の中に現代的な部分と19世紀的な部分とが散見され、それが見事にアウフヘーベンし、美しい演奏へと結実していたように思います。アマチュアの演奏でそんな高いレベルのものが聴けるなんて思いもよりませんでした。これも自分がクルレンツィスとムジカ・エテルナなど必要ないって思った理由でした。」

次回は8月にティアラこうとうでとのことです。是非とも、足を運べればと思います。ちなみに、今回のロケーションは渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール。ティアラこうとうと同じシューボックス型のいいホール。ホール選定もセンスがあっていいと思います。この点も、このオーケストラの優れた点だと思います。プロオケで不満を抱いているのなら、アマチュアオーケストラを聴きに行かれることを強くお勧めします。特に、首都圏に住んでいらっしゃるのであれば。その与えられた環境を使わないのは、人生つまらないですよ!

 


聴いて来たコンサート
アンサンブル・コンソルテ第39回演奏会
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
序曲「フィンガルの洞窟」作品26
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第22番変ホ長調Hob.Ⅰ-22
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第2番ニ長調作品36
大河内雅彦指揮
アンサンブル・コンソルテ

令和6(2024)年2月17日、東京渋谷、渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。