かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:合奏団ZERO第31回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和6(2024)年2月18日に聴きに行きました、合奏団ZERO第31回定期演奏会のレビューです。

さて、このブログでは初登場となる、合奏団ZERO。東京のアマチュアオーケストラです。

tokyo-met.com

合奏団ZEROさんの名を知ったのは、2017年の第19回のチラシを見たことでした。この時は1プロがモーツァルトのピアノ協奏曲第20番。私が好きなピアノ協奏曲の一つであったこと、会場が杉並公会堂であったこと、そしてピアニストが小林亜矢乃女史(指揮者小林研一郎氏の娘)であったことで興味を持ったのでした。結局仕事の関係で行けなかったのですが、実は小林女史はその職場に関係するピアニストでして、上司からチケットをもらっているけど行く?と提案されたのでしたが、結局要員の関係で出勤せざるを得ず、行けなかったのでした。

そして、月日は流れて一昨年の初夏に入るころ、facebookのグループ関係で集まる機会がありまして、そこでなんと!合奏団ZEROの団員の方と出会いました。意気投合して演奏会(第28回)行きます!と返答し取り置きにしていただいたのですが、何と当日台風・・・泣く泣くあきらめたのでした。

そういういきさつがあったため、今回はどうしても行きたかったのです。ホールは中野ZEROホール。以前オルフの「カトゥーリ・カルミナ」を聴きに行ったホールでもあります。それ以前も何度か行ったことがあるホールです。鉄道ファンとしてはそのお隣がJR東日本の中野電車区というのも実は魅力・・・

今回のプログラムは以下の通りです。

ハイドン 交響曲第103番「太鼓連打」
R・シュトラウス 交響詩英雄の生涯

ベタなと思うかもしれませんが、この二つをアマチュアオーケストラで演奏するというのは、正直大変なことで、実力を伴わないと難しい曲です。さて、その実力のほどは・・・

まず、1曲目「太鼓連打」。いきなりティンパニの連打から始まる曲ですが、実にティンパニがぶっ叩いてくれます!途中の連打も素晴らしい!単に強いだけではなく、そこに生命が宿っているんです。弦楽器にもやせた音が全くなく、さらにしなやか。特にppの部分の繊細さは絶品!ハイドン晩年の、2度目のイギリス公演の時に作曲された、いわゆる「ザロモン・セット」ですが、この時期はモーツァルトとの親交の結果が作品に結実している時期で、特に生命力がある作品が多いのですが、その魂をしっかり掬い取っている演奏は、私はプロオケを聴きに来ているのだろうかと錯覚させます。

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休憩の後の「英雄の生涯」。一説にはリヒャルト・シュトラウス自身を英雄視して人生を表現した作品とも言われますが、いやあ、歌う歌う!オーケストラが歌いまくります。豊潤かつ吠える金管、しなやかで力強くもある弦楽器、そして常に豊潤な木管楽器。美しいハープ、まるで心臓をリズムを刻むかのような打楽器と、どれを聴いてもアマチュアだとは思えません。前半以上に、ppの部分の繊細さが光ります。それが紡ぎ出す、作品が内包する精神や魂が、自然と浮かび上がるのです。「英雄の伴侶」の部分では伴侶の部分をコンサートマスターのヴァイオリンが務めますが、合奏団ZEROはコンサートミストレス。いやあ、適任ですね!芯が強いだけではなく、女性的なしなやかさややさしさもある演奏は、実に英雄の伴侶に相応しい演奏だと思います。男性だと、力強いだけで終わってしまうので・・・もちろん、下手ではないですが。

所々盛り上がっていく部分ではそのクレッシェンドがいかにも英雄の内面を表現しているようで、思わず感じ入ってしまいます。

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最後の部分は弦楽器が休みになって管楽器だけで奏されますが、それも本当に美しい・・・まるでわた(以下自己規制)

いや、その金管が本当に豊潤で素晴らしいのです。最近、ここまで美しい金管を聴くのは珍しいです。あのう、アマチュアオーケストラなんですが・・・もちろん、他にも上手なアマチュアオーケストラはありますが、とはいえ豊潤でホルンもほとんどひっくり返ることなく演奏できるアマチュアオーケストラは東京でも数えるほどしか存在しません。

指揮するのは、音楽監督でもある松岡究氏。いろんなアマチュアオーケストラで優れたタクトを振る方ですが、とはいえ、その指示をしっかり反映できるオーケストラは実力が伴います。それだけ、合奏団ZEROさんは実力が高いオーケストラであると言えます。これはベートーヴェンの第九をやってもいいよねと思って過去の演奏会を見てみれば、14年前の2010年に特別演奏会ですでに演奏済み。いやあ、聴きたかったなあ。是非とも再びやっていただきたいものです。

合奏団と名がついていますがほぼフルオーケストラです。室内オーケストラではないのですが、これだけ集まるのもその実力の高さ故なのかもしれません。私が以前奉職していた対人援助業界では、「引き付ける魅力」という言葉がありますが、まさに合奏団ZEROさんは演奏に「引き付ける魅力」を持つオーケストラだと言えます。これは今後も足を運び続けたいと思います。次回は8月に今回同様中野ZEROホールとのこと。中野ZEROホールも残響的にはいいホールのうちに入ります。中野ZEROホールと杉並公会堂だけでしか演奏していないのですが、その選択は実は素晴らしい選択なのではないかと思います。次回は2017年の時に聴けなかった協奏曲。このオーケストラなら、協奏曲は交響曲を聴くよりも楽しみです!

 


聴きに行ったコンサート
合奏団ZERO第31回定期演奏会
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
交響曲第103番変ホ長調「太鼓連打」Hob.Ⅰ:103
リヒャルト・シュトラウス作曲
交響詩英雄の生涯」作品40,TrV190
松岡究指揮
合奏団ZERO

令和6(2024)年2月18日、東京中野、中野ZERO大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。