東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介します。シリーズで取り上げているドホナーニ指揮ウィーン・フィルによるメンデルスゾーンの交響曲全集、いよいよ最後の第3集です。
この第3集には、第3番「スコットランド」と第4番「イタリア」が収録されており、このシリーズに一つの編集方針が見えるのは私だけなのでしょうか。
まず一つには、番号順にこだわらないということ。それは番号は出版順であって作曲順ではないからです。二つ目はその延長線上として、この第3集では風景を題材にした曲を集めた、ということです。
正確には、この2曲とも風景を切り取るような作品ではなく、そこから得たインスピレーションを作品にまとめ上げたという性格のものです。そのために特に「スコットランド」では当地らしさがほとんど見受けれらません。
ではこの二つは何かと言えば、風景に触発されたメンデルスゾーン自身の心象風景と言えるでしょう。同様の意味でカップリングされているのが「フィンガルの洞窟」。これ、あくまでも通称であって、原題は改定後は「ヘブリディーズ諸島」です。
ですから、単にそこに風景があるという感じではなく、もっと感情などを楽譜から感じたのであれば、それを指揮者や演奏者が前面にだしてもいいわけなんですが、この演奏、残念ながらその点がすっぽり抜け落ちて居るような気がしてなりません。
もちろん、ドホナーニとウィーン・フィルですから演奏自体は悪かろうはずはないんですが、一方で物足りなさも感じるんです。私は第3番に関しては県立図書館でかりた全集のリッピングファイルで持っていますし、第4番に関してはテンシュテット指揮ベルリン・フィルで持っていますがそのほうがよほどいい演奏なんです。何がいいかと言えばその生命力です。
このウィーン・フィルの演奏にかけている物、それは全体的に生命力です。もっとリズムを際立たせることによりそれは可能なはずなんですが・・・・・
ウィーン・フィルだとできないのかと言えばそんなことはありません。ティーレマン指揮の第九ではしっかりと実現できていますし、カラヤン指揮のモツレクの「怒りの日」のまさに神の怒りのような激しさを見ても、ウィーン・フィルができないオケではないことは明白です。ドホナーニという指揮者がある意味なめられているような気すらします。この指揮者なら適当に抜いておこう・・・・・そんな感じです。
それを単にありがたがるのだと、こっちの主体性の無さを露呈するだけはないのかなあって思います。こういう演奏を聴いているからこそ、私は来日公演だからといって必ずしも聴きに行きたいとは思わなかったのです。レビューを見ても、音楽の三要素をわかっているようなものは皆無でしたし・・・・・それだと、私は折角高い金を払っても楽しめないかもなあ、と思ったのです。行かなくて正解だったなとすら・・・・・
最もその生命力が感じられるのが、第4番「イタリア」です。ウィーン・フィルのサウンドが持つ美しさと気品と、いいテンポが融合し、メンデルスゾーンの心象風景を自分たちなりに表現しているのが誠に清々しく、聴いていて本当に楽しい!こういった演奏こそ、生でホールで聴いてみたいものです。次回の来日があるかどうかは、関係者の交渉次第なのでわかりませんが(政府が余計なことをしましたので)、もし来日すれば、プログラム次第では聴きに行ってもいいかなって思います。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
交響曲第3番イ短調作品56「スコットランド」
序曲「フィンガルの洞窟」作品26
交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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