東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介します。シリーズで取り上げているドホナーニ指揮ウィーン・フィルによるメンデルスゾーンの交響曲全集、今回はその第2集を取り上げます。
第2集は、第2番「讃歌」。長いのでこれ1曲だけが収録されています。序曲とかほかの交響曲、あるいは室内交響曲などはなしです。
私が最初に県立図書館でかりたものに比べ、ドホナーニはどっしりとしたテンポでオケを存分に鳴らしていきます。ウィーン・フィルの豊潤なアンサンブル、移行和声の時のサウンドの美しさ・・・・・そのすべてが、作品が持つ宗教性を存分に歌い上げていきます。
そもそも「讃歌」は、冒頭にトロンボーンが鳴るのです。これはロマン派以降では当たり前のように思えますが、じつは明確な意味を持つのです。当時の人であれば、トロンボーンが最初に鳴るということで、この作品が通常の交響曲ではなく、宗教曲が強いということは明確に意識するんです。なぜなら、トロンボーンは教会音楽で使われる管楽器だからです。
おなじ趣旨で、ブルックナーはモテットで使っているのです。その伝統を知っている往時の人たちであれば、この「讃歌」という作品が歌詞を聴くまでもなく題材として聖書を扱っているということは明確に理解できるような仕掛になっているってわけなんです。
それを、まさに後期ロマン派の時代からの申し子であるウィーン・フィルが演奏する・・・・・実はとても面白い企画なんですね。本来ならこういった非常に意味を持つ作品や、現代音楽あるいは20世紀音楽などを、来日時で聴くことこそ、ウィーン・フィルというオケのアンサンブルやサウンドを楽しむなら味わいたいところなのですが・・・・・いかんせん、オケのコンサートも興行です。興行である以上、収支は黒字でないといけない。
となると、日本の聴衆が最も求める作品しか、プログラムには乗せないわけです。そうじゃないとホールが満員になりませんから・・・・・となると、ブルックナーやマーラーと言った作曲家にならざるを得ないわけです。
しかしながら、この「讃歌」のような作品こそ、本来はウィーン・フィルなどで聴くのは興味深いわけなんです。もちろん、私としてはその前にカラヤン指揮のモツレクで、ウィーン・フィルの宗教曲演奏は経験済みですので、驚きはしませんが、その和声の聴かせ方は絶品!
ただ、ドホナーニはそれほど遅いテンポで振る指揮者というわけではないんですが、ここまで共通してテンポはどっしり気味なんです。これはおそらく、ウィーン・フィルに合わせているのではないかという気がします。ウィーン・フィルは指揮者のタクトよりもコンサート・マスターのボウイングのほうが優先されるオケですから・・・・・
すでにリッピングしている県立図書館のものと比べると、その緊張感や喜びの爆発という点はどっしりとしたテンポゆえにマイナス気味なんですよねえ。けれどもそれを最後にはブラヴォウ!と言わせるだけの、地味ながらもしっかりとした表現力で納得されるんですから、さすがと言わざるを得ません。
ただ、もっとテンポアップした演奏を、ウィーン・フィルで聴いてみたいというのは、私の中にあります。そんなレヴューが、ネット上で今回の来日公演に関してあまりなかったのは、ちょっと残念だったなと思います。その点では、私はやはり行かない選択をしてよかったと思っています。なんでクラシックファンだったら聴きにいかないの?と思われる読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、私としてはアマオケでだって十分楽しめるんですから、プロオケだったらプロオケらしい満足というものが感じられないと、高い料金を払う気にはなれないんですよねえ・・・・・
少なくとも、この「讃歌」だったら、借金してでも聴きに行ったかもしれません。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン・バルトルディ作曲
交響曲第2番変ロ長調作品52「讃歌」
ソナ・ガザリアン(ソプラノ)
エディタ・グルベローヴァ(ソプラノ)
ヴェルナー・クレン(テノール)
ウィーン国立歌劇場合唱団(合唱指揮:ノルベルト・バラッチュ)
ヨーゼフ・ベック(オルガン)
クリストフ・フォン・ドホナーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
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