かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン ピアノ・ソナタ全集8

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ハイドンのピアノ・ソナタ全集を取り上げていますが、その第8集を取り上げます。

第8集は、一応ホーボーケン番号順でランドン版の番号第29番、第31番、第7番、第57番、第58番の5曲が収録されています。ただ、成立年は実は異なり、第29番と第31番は様式的に似ているので1766年ごろとピティナは推定しています。

ウィキとピティナで異なるのが、第7番と第57番の取り扱いです。ウィキではともに「偽作」と断定しているにもかかわらず、ピティナはともにその偽作というのに疑いをかけているのです。

ja.wikipedia.org

enc.piano.or.jp

enc.piano.or.jp

第7番に関しては、ピティナでは偽作の疑いとしており、断定は避けています。そして第57番では明確にハイドンの作としているのです。これはどうしてか。

第7番に関しては、一人のみ断定しているだけだというのがその理由です。そして第57番に関しては、出版されているというのがその理由になっています。出版されたのは1788年。実はその年でまとめられたのが、第29番、第31番、第57番、第58番なのです。

作曲は前にしているんだけれども出版は後からというのは、結構ある話です。特にバロック期には・・・・・そういった事情が絡んでいると考えるほうが自然かもしれません。もちろん、出版社が他者の作品を紛れ込ませたという可能性もないわけではありません。ただ断定するには材料が不足しており、少なくともハイドンと出版社との間の確執などが確認できないと偽作とは断定できないというのがピティナのスタンスだと思います。

こういう点で、ウィキだけに頼るのはほんとうに危険なんですよね。まあそれはネットに限らず活字でも同じですけれどね。なので私はピアノ曲である場合、できうるだけウィキだけではなくピティナも上げるようにしているのです。むしろピアノ曲に関してはピティナだけでも構わないだろうと思います。それだけ、ピティナは記名式の説明でもあるだけに信ぴょう性も高いものになっています(もちろん、ピティナが間違っているという可能性もありますが)。

それを知っているかのように、オルベルツは全集に加えています。つまり、この第8集の編集方針は明らかに「1788年出版の作品群」だと言えます。それはちょうど、ハイドンが自分のクラヴィーアを持つ直前だといえます。

そのせいなのか、テンポを落とすと、ピアノ曲としてもそん色ない作品がずらりと並んでいるのもこの1788年出版群の特徴だともいえます。じっくり音を聴かせる作品もあるのが驚きなのです。もしかすると、第29番と第31番に関しては、ハイドンが出版に当たり手を加えている可能性も捨てきれないだろうと思います。実際、第57番と第58番は結構音は跳ねていますので・・・・・おそらく、チェンバロでの作曲だと想像できるわけなんです。

いずれにしても、時代の転換期であったということは、念頭に入れる必要があり、オルベルツはだからこそこの第8集でも、チェンバロ的に弾かずあえてどこまでもピアノ曲として取り組む姿勢は清々しいなあと思います。そんな清々しさは演奏からも十分伝わるのが魅力ですね~。もともとCDですから電気的に聴こえてしまうのは仕方ないにしても、その演奏の生命讃歌は十分伝わってくるのは、演奏者の精神の裏返しでしょう。こういった演奏をイデオロギーだけで排除するのは、人生の楽しみを1割しか享受できていないに等しいだろうと思います。

 


聴いている音源
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン作曲
ピアノ・ソナタ第29番変ホ長調Hob.XVI-45 作品54-2
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調Hob.XVI-46 作品54-3
ピアノ・ソナタ第7番ニ長調Hob.XVII-D1
ピアノ・ソナタ第57番ヘ長調Hob.XVI-47 作品55
ピアノ・ソナタ第58番ハ長調Hob.XVI-48 作品89
ヴァルター・オルベルツ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。