かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ジュリーニとウィーン・フィルによるブラームス交響曲全集1

東京の図書館から、今回から4回シリーズで、カルロ・マリア・ジュリーニ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるブラームス交響曲全集を取り上げます。

ジュリーニと言えば、私の中ではロマン派の作品に対する造形が深いという印象が強い指揮者です。そんなジュリーニウィーン・フィルを振ってブラームスかー、と思い借りてきたのがこの全集です。

小金井市立図書館は府中市立図書館に比べると全集ものは少ないんですが、そもそも貸し出すCDのライブラリが府中に比べ圧倒的に少ない中で、ブラームスの全集があるのはさすがだと言わざるを得ません。以前取り上げたマゼール指揮のマーラー交響曲全集も小金井ですし。

さて、第1回は第1集。交響曲第1番が収録。演奏時間は52分ほどとたっぷり時間をかけている演奏。それだけにロマンティシズムあふれる演奏になっていることは間違いありません。ただそれは、多くのほかの指揮者とあまり変わらないともいえますが・・・・・

ただ、快速の演奏も聴いた経験を持つ私としては、それでいいのかなあという印象は持っています。第1楽章の指示はウン・ポコ・ソステヌート~アレグロ。これは「やや荘重に。快速に」が日本語の意味なのです。ただほとんどの演奏が単にソステヌートになっているのが通例です。

この指示をどうとらえ、演奏に落とし込むのか・・・・・これが指揮者の仕事です。ジュリーニはその点において独創性はない、と言ってしまえば毒舌すぎるでしょうが、しかし一方でオケに思い切り歌わせているのはさすがジュリーニです。歌謡性のある演奏はウィーン・フィルが得意とするところだと私は思っています。

その意味で、ジュリーニに独創性を感じるのはむしろ第4楽章。指示はアダージョ~ピュ・アンダンテ~アレグロ・ノン・トロッポ、マ・コン・ブリオ。これは日本語訳だと「緩やかに。(その後)より歩くように。快速かつ速すぎないように。ただし活気をもって」という意味。なんだそりゃ?ってなりますがしかしこれが第4楽章に対してブラームスがつけた指示なんです。

最初の「緩やかに」は序奏部分。そのあとは第1主題以降最後までを意味します。しかしテンポとしてはジュリーニはあまり変えていません。ですがこの指示を細かい表情付けで実現させているんですね。

その意味では第1楽章も同じなんです。この細かい表情付けこそ、ジュリーニだなあって思います。一定のテンポの中で変化をつける・・・・・これもまた、一つの表現ですから。勿論あからさまに表情をつける方法もありますし私はその方が好きです。何しろロマン派という音楽運動は自己の内面を大っぴらに表現するという音楽運動なのですから。実情、妄想何でもあり、です。

そこをあえてジュリーニは抑え気味にしつつも、実は・・・・・というアプローチをしているのです。抑えようにも抑えきれないこの気持ち、って感じ。これもまた、ブラームス交響曲第1番という作品への優れたアプローチだと言えるでしょう。

なので、とーってもゆったり音楽は流れるんですが、しかし内に秘めた情熱というものは自然と湧き上がる演奏になっているのが魅力的。その意味では、当代一流のオケじゃないとジュリーニの意図することを明確に表現できるオーケストラは少ないかもしれません。ウィーン・フィルという選択は絶妙だなあと思います。

 


聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第1番ハ短調作品68
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

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