東京の図書館から、2回シリーズで取り上げております、小金井市立図書館のライブラリである、「リヒテルの芸術」、今回はその第2回です。
決して2枚組というわけではなく、リヒテルの芸術ということでまとめられただけなのですが、今回のアルバムはそもそもは12枚組のいわば「リヒテル全集」と言ってもいい、ブラームスとシューマンの作品の演奏をまとめたものから一枚にまとめられたもののようです。
ですが、面白いことに今回と前回とでは、構成が似通っています。今回のアルバムでは、ブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」、小品集、そしてシューマンの幻想曲、とならんでおり、実に前回取り上げたショパンとリストのものを収録したのと似通っています。
そのうえ、最後に収録されているシューマンの「幻想曲」は、実は前回取り上げたアルバムの最終曲である、リストのピアノ・ソナタと関係ある曲なのです。この辺り、いかにもリヒテルならやりそうなプログラム構成です。
また、今回のアルバムの第1曲目であるブラームスの「パガニーニの主題による変奏曲」。2つの巻からなることはあまり知られていないんじゃないでしょうか?特に我が国においては。
私も、聴いたときに「あれ?もう一つあったっけ?」って思ったものです。しかし調べてみれば2部構成であるわけで、堂々たる作品なんですね。
そして、小品も繊細な演奏が光ります。こう聴きますと、リヒテルの演奏はどんな曲に対しても手抜きがなく、どこか魂が揺さぶられるのです。特にこのアルバムではブラームスとシューマンという、ロマン派におけるピアニストでありシンフォニストの二人の作品であるだけに、余計ドラマティックな部分も感じられ、魂は揺さぶられます。
さらに、録音状態もいいのが印象的。前回も今回も、実にクリアな音が響いてきます。ハイレゾ相当で聴いているという点もありますが、そもそもハイレゾ相当にする技術とは、音の波形を修正するという程度です。もともとの録音がいいものでなければどんなに技術で頑張ってもよくならないものも存在する中で、実にリアルな音を再現できているのは、当時のレコーディングエンジニアの腕の確かさと、その確かな腕でもって当代随一とも言われたリヒテルの演奏を記録に残そうとした人々の意思によるものであるはずです。
ですので、リヒテルの魂と共に、レコーディングエンジニア、そしてレコーディング・ディレクターたちの魂も感じるのです。メディアで聴くというものは単に演奏者のメッセージだけではなく、記録を残そうとした人々の魂にも共感できるのかというのが聴きどころのように、私には思えるのです。
いずれにしましても、名演、そして名盤だと言えるでしょう。
聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
パガニーニの主題による変奏曲 作品35
6つのピアノ小品 作品118より第3番バラード
4つのピアノ小品 作品119より第4番ラプソディ
幻想曲集 作品116より第5番間奏曲
8つのピアノ小品 作品76より第8番カプリッチョ
ロベルト・シューマン作曲
幻想曲ハ長調作品17
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
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