かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ブラームス 鍵盤楽器作品全集5

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ブラームス鍵盤楽器全集を取り上げていますが、今回はその第5集です。8つの小品作品76、2つのラプソディ作品79、7つの幻想曲作品116という3つの、ブラームスを代表するかのような小品集が並んでいます。

まず8つの小品作品76ですが、交響曲第1番を生み出した後に作曲されている点は注目だと思います。小品と言っても侮るなかれ。実に充実した作品たちです。

ブラームス :8つのピアノ小品 Op.76
Brahms, Johannes:8 Stücke Op.76
https://enc.piano.or.jp/musics/1547

ブラームスの作品を管弦楽作品だけにこだわらずに俯瞰すれば、その充実ぶりの理由を、交響曲第1番を完成させたゆえの自信だと理解することができます。ブラームスにとって音楽とはピアノと交響曲とで違うのではなく、同じなのです。それを聴き手が勝手に違うものとして判断してしまうんですよね。それはブラームスベートーヴェンという偉大なシンフォニストを意識していたというエピソードから来ると思いますが・・・・・

けれども、私はブラームスの作品を数多く聴いてきて、シンフォニスト・ベートーヴェンではなく、そもそも鍵盤楽器管弦楽もというマルチな才能に憧れて、だと思っています。つまりは、作曲家兼演奏家ベートーヴェンです。その偉大な存在のほうがより顕著だっただろうと思っています。そう考えないと、この小品の充実ぶりは理解不能です。

勿論、それ以前の作品がだめだと言いたいわけではなく、自分がベートーヴェンのような存在になるためにはどうすればよいのかを追求する時間だったと思います。ですから、作品にムラが出ていて当然です。それが安定する理由の一つとして、自信が挙げられます。その自信が、交響曲第1番だった・・・・・その意味で大きな作品だと思います、ブラ1は。

次の2つのラプソディ作品79はよく演奏される作品だと思います。叙情的なブラームスの雰囲気がふんだんで、精神性というよりもロマンチストと言ったほうがしっくり来る作品です。

ブラームス :2つのラプソディ Op.79
Brahms, Johannes:2 Rhapsodien Op.79
https://enc.piano.or.jp/musics/1548

最後の7つの幻想曲作品116。自由な形式の作品集といった意味合いが強い作品で、ブラームスのピアノ作品の一つの到達点です。

ブラームス :7つの幻想曲集 Op.116
Brahms, Johannes:7 Fantasien Op.116
https://enc.piano.or.jp/musics/1550

私などは、この第5集に収録された作品たちのほうがブラームス的で好きです。ロマンチストで、内省的で。精神性などと言ってしまうとどこか手に届かない感覚がありますけれど、ブラームスにはそういったものがなく、むしろどんなに荘重であってもどこか人間臭いところが私はたまりません。

演奏している3人も、そういった「内省的」な面にフォーカスしているように思います。まずは8つの小品を弾くヴァーシャーリ。自らより湧き上がる情熱がストレートにかつちょっとだけ「どこか遠目に」表現されています。続く2つのラプソディを弾くアルゲリッチ。ともすれば勢いだけになることもあるアルゲリッチですが、ここでは勢いがしっかりと内省的な点にあっており、作品が持つエネルギーがこちらに強く伝わってきます。最後の7つの幻想曲を弾くギレリスは、ブラームスの「人生の終わりの諦観」を、しなやかに演奏しているのがいいですね。

こういった優れた演奏は、ブラームスのピアノ作品の魅力を存分に伝えてくれます。かつて交響曲だけ聴いてブラームスを知った気になっていた自分が恥ずかしいです。でも、そういった演奏にめぐりあうことが、人生にとって必要なんだって思います。




聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
8つの小品作品76
2つのラプソディ作品79
7つの幻想曲作品116
タマーシュ・ヴァ―シャーリ(ピアノ)
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
エミール・ギレリス(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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